47話.氷狼王②

 氷狼王の討伐を決めたクロムたちは以前スタンピードと対峙した場所まで来ていた。


「ダンの話ではこの先の小高い丘に居を構えている…… だったか?」


「そう言ってたわね」


「ということは、あそこに見える丘がそれっぽいな」


 目の前に見える丘を指さしてクロムが言うと、アキナはそれに頷いた。

そして、クロムたちは事前に決めておいた作戦を実行することにした。

カルロたち4人がクロムたちの前方に位置取りをし、ビネガが巨大な火球を丘の中央に向けて放つ。

狼たちに先制攻撃をしつつ、狼たちをおびき出すためである。


 ビネガが火球を放つと丘の上から爆音と叫び声が響き、その後地鳴りのような足音とともに狼の群れがカルロたちに迫ってきた。

迫りくる狼の大半は氷狼などのような上位の狼ではないため、カルロたちは掃討に向けて動き始める。


 一方そのころ、クロムとアキナはカルロたちとは異なる方向から丘に迫っていた。

カルロたちが丘の狼たちを引きつけ、その間に氷狼王に接近するつもりである。

丘の上に辿り着いたクロムたちはすぐに氷狼王を発見することになる。

その巨体故にすぐに発見することができたのであった。


「さてと、アキナ。

 これから手当たり次第に狼どもを従属しつつ、氷狼王のところまで行く」


「私は!??」


「俺についてきてくれ!

 向かってくる狼たちは殺さない程度に攻撃してくれていいよ。

 このほうが早く従属に応じてくれそうだしね」


 クロムはアキナに微笑むと狼の群れに向けて走り出した。

それからのクロムとアキナは圧巻であった。

迫りくる各種狼たちをアキナが瞬時に斬り飛ばす。

その直後、狼たちにクロムの従属眼の光が照らされる。

クロムは徐々に配下の狼たちを増やしながら、ついに氷狼王の前に辿り着いた。


「お前は何者だ」


「へぇ、氷狼王って人の言葉を話せるんだ」


『上位の魔物の一部は人以上の知能を持ち、人の言葉も操るわよ。

 竜族などがその典型ね』


「…… してお前は何者で、我に何用だ」


「俺の名前はクロムで、用事は2つ。

 この先の地に用事があるから俺たち人間の邪魔をしないでくれ が一つ目。

 そして俺は君たちが気にいった 故に俺に従属し配下となってくれ が二つ目だ」


「突然襲ってきた上に、なんとも勇ましいな。

 しかしこの様子を見る限り、それに相応しい武勇はもっていそうだ。

 ……だが!!

 我を配下にしたいのであれば、その力を我に示すが良い!!!」


 そういうと氷狼王は凍てつく吹雪のブレスをクロムに向けて放った。

クロムはそれを氷の壁を作って防ぎ、その後突風にて氷のブレスを氷狼王へとはじき返した。


 当然ながら自分の氷のブレスで氷漬くような氷狼王ではなかったが、クロムは追加で自身の魔力を注ぎ込むことにより氷狼王の頭部以外を氷つかせることに成功した。


「…… ま、まさか我を氷漬かせることができるような人間がいるとはな……

 よかろう…… 我はこれよりお主に従属することにする」


 氷狼王が負けを認めたことによりクロムは従属することに成功し、氷漬けを解除させた。

そして氷狼王に今生き残っている配下たちに攻撃をやめさせ、自分の配下になるように命じさせた。

これによりクロムは各種狼たちを約2000匹と氷狼王を従属し、配下とすることに成功したのであった。


「これから俺の能力によって異空間にお前たちの住処を作る。

 俺からの指示があるまではその中で待機していてくれ。

 ただし、お前たちが生活できるように出口の一つを迷いの森に作っておくから、生態系を破壊しない程度なら好きにしてくれて構わない」


 そして、クロムは狼たちの住処をルーム内に生成し、その中に狼たちを移動させた。


「たぶんしばらくの間、俺の意識が飛ぶと思うからその間よろしくなアキナ」


「え???」


「氷狼王よ、お前には名前を与える。

 これより<ギン>と名乗るが良い」


「ありがとうございます我が主、これよりギンと名乗らせて頂きます」


 クロムが氷狼王に名付けると、クロムから氷狼王に膨大な魔力が流れ込み始めた。

そしてクロムは、氷狼王の言葉を失いつつある意識の中で聞くのであった。

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