43話.竜人の試練④-2

「仕切り直しは私からいかせてもらいますよ!」


 カルロは剣を振り上げつつ、槍で突きを放つように突撃を開始した。

が、甲高い音と共にその突進は急停止することになった。

何が起きているのかを理解できずにいるカルロに次なる異変が舞い降りることになる。

左右から土の壁が迫ってきたのである。

カルロは咄嗟の反応で後方にジャンプして回避したのだが、着地点はクロムによって泥沼化されていた。


 クロムの狙い通りに泥沼にハマったカルロ。

その眼前には両手に小型の雷雲を一つづつ浮かべているクロムが立っていた。

そして、クロムの両手の雷雲から無数の小型の雷がカルロに向けて発射される。

着地時に泥沼に深くハマってしまっているカルロには回避のすべはなかった。

カルロは両手の武器を避雷針がわりとして落雷からの回避を試みる。

だが、雷の数が多すぎるため、次第に落雷が被弾し始める。

しばらくして落雷が収まるとカルロは全身に火傷を負い、痺れによって麻痺していた。

クロムはカルロの元まで歩く。

そして、風魔術で生成した風の刀をカルロの眉間に突き付けた。


「チェックメイト

 喋ることはできるだろうから降参してくれない?」


「……

 やっぱり勝てねーか……

 俺の負けだよ」


「それがお前さんの本来の口調なわけね?

 突然変わりすぎで戸惑うけど…… 

 口調が変わったってことは試練突破ってことでいいのか?」


「ああ、俺の敗北をもってクロムさんの試練は終了だよ。

 …… 悪いけど、少し治療してもらえないかな……

 これからの話をするのに、このボロボロのままは情けない……」


 カルロが苦笑いしながら訴えると、クロムは大笑いしながらカルロに治療魔術を施した。

治療魔術により麻痺と火傷から回復したカルロはクロムにお礼をし、竜人族のみんなを集めるために席を外した。

1時間後に再度ここに集合ということになり、クロムはアキナを連れて一旦昨日泊めてもらった家まで戻り休憩をとることにした。


「ふぅ、さすがに疲れたな……」


「クロム、お疲れ様。

 やっぱりクロムは強いね…… 

 私なんかが相棒って釣り合ってないよね……」


「何言ってるんだ? 俺はアキナだから信じれるし、一緒にいて欲しいんだよ。

 それに今のアキナは十分に強いからな? 

 さすがにあの4人には勝てないかもだけど、門番の人にはアキナなら勝てるぞ?」


「え……

 ありがとね、足手まといにならないように頑張るよ」


「…… 

 この世界にきて右も左もわからない俺はアキナに相当助けてもらってるよ。

 こんな不審者のことを信用してくれて、親身になってくれて……

 俺はこれからもアキナといるために強くなりたいって思ったし、強いチームを作りたいって思ったんだよ」


「ありがと……」


 クロムは普段から感じてるアキナへの感謝を伝え、穏やかな時間が流れる空間でゆっくりと休息をとるのであった。

しばらくして迎えにきたソルトに連れられて先ほどの武舞台に向かう二人は、そこで初めて竜人族の総勢を目の当たりまのあたりにすることになった。

おおよそ50人前後の集団とその前に試練の相手となった4人が並んでいた。


「思ったより少ないんだな」


「掟によって種族としての人数の上限も決まっているからな」


「そんな掟まであったのか…… マジで呪いじゃねーか……」


「呪い…… か、まぁ間違ってはいないな。

 だが、それも終わった」


 カルロが合図すると竜人族の全員が急に片膝をついて頭を下げ、カルロが改まって話し始めた。


「クロム殿、試練の突破おめでとうございます。

 我ら竜人族56人は今よりあなた様を主と仰ぐ者となります。

 これをお納めください」


 カルロはそう言うと拳ぐらいの大きさのツヤツヤした丸い石を差し出してきた。


「これは??」


「竜人石と言われる…… 石…… かな?

 それを持つ者が竜人族の主であり、主が現れるまでは族長が代々引き継いできたものだよ。

 その竜人石に魔力を込めてもらえないか?」


「これに??」


 カルロの願いの真意がわからないまま、クロムは竜人石に自分の魔力を込め始めた。

竜人石は魔力を貯め込む性質の物質であったようで、どんどんとクロムの魔力を吸い込んでゆく。

魔力を吸い込む勢いが落ち始めた頃、竜人石は青白い光を放ち始め、周囲に冷気を放ち始めた。


 そして、発光が収まった竜人石は別の姿をしていた、その姿はまるでサファイアのようであった。


「言い伝えは本当だったんだな……」


「説明してもらっていいか? 

 さすがに意味がわからなさすぎるぞ……」


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