5話.サバイバル生活、食事事情
死んだように眠っていたクロムが目を覚ますと、まず最初に自分の体調の確認を行った。
硬い岩盤の上で寝ていたためであろう、全身が激しく痛い。
だが、寝る前に感じていた深い気怠さなどはなくなっており、体力自体はかなり回復することができたと実感するのであった。
「おはよう、ナビ」
『おはよう、やっと起きたわね』
「あぁ、でももう気怠さも抜けて体力は回復できたみたいだ。
だけど……
はらへったぁぁ……」
『丁度この世界のお昼ごろだし、元気になったのなら暗くなる前に食料でも探したら??』
空腹に苦しむクロムは、ナビの助言に従い食料を調達しにいくことを決めた。
前回の教訓を生かして、今回は油断せずに…… と外まで食料を探しにいくのである。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
住居(仮)から警戒しながら外にでると、先ほどの状況とはガラっと変わっており魔物の気配を感じることができなかった。
襲われるリスクが下がっているのはありがたいことであったが、食料探しとしてはありがたくない状況である。
仕方なく少し遠くまで探索にでることにしたクロムであったが、森は先ほどの狼のこともあって少し怖かったため、反対側に位置する湖を覗いてみることにした。
その湖には大小さまざまな魚?? が存在しており、なんだか楽しくなってそれらを観察していたところ……
「なんか色々いっぱいいるね~♪
って、あぶね!!!」
湖の中からピラニアっぽい魚の群れが一斉に飛び出してきたのである。
クロムは反射的に魚たちの突撃を回避し、空中に浮遊することとなった魚たちに向けて右腕を突き出した。
すると、10匹ほどいた魚たちは大きな氷の塊となって地上に落下することとなった。
「うし、食料確保♪」
『ツッコミどころ満載だけど…… ツッコんだら負けな気がするわ』
「ツッコミどころなんてないだろ?
大事な食料なんだ、保存も兼ねて冷凍するのは理に適っているじゃん」
『……そういうことにしておくよ』
呆れてるナビを放置してクロムは住居(仮)の中に魚氷を運び入れ、料理の準備を始めことにした。
しかし住居(仮)と言っても
調理道具はおろか机すらないのであった。
「なければ作るまでさ♪」
クロムは様々なものをイメージし、ドンドンとそれらを具現化していった。
岩を板状にしたまな板。
岩をくりぬいて鍋状にしたもの。
土を固めて作った机や椅子。
土を練り固めたような形状の
住居(仮)の出入り口として使っていた巨大な鍋蓋を変形させて、住居っぽい壁と扉に。
そして最後に……
「これだけは拘って作らないとね♪」
クロムは地面で寝たことにより全身が痛くなったことを教訓として、ベットだけは特別に
「一度こういうので寝てみたかったんだよね♪♪」
クロムは、硬めのゼリーみたいなデッカイ塊を生成し、それをベット状に成型した。
元の世界にあるもので言えば、ウォーターベットが一番近いであろうか。
「おぉ!! この感触クセになりそう♪」
さっそくベットに横になったクロムがご満悦そうにしていると、呆れ声でナビがボソっとつぶやいた。
『ナンカタノシソウダネ……
すっかり食料のこと忘れてそうだけどね……』
「わ、忘れてなんかないもん!!!
い、今から始めるもん!!!」
『はいはい』
クロムは、分かりやすく動揺しつつも、先ほど氷漬けにしたピラニアもどきたちの調理を始めた。
「こいつらって生で食えるの?」
『食べれるとは思うけど、お腹を壊すかもね?』
「……
それって食べちゃダメってことじゃね?」
『そうともいうかもね』
「…… ち、ちなみに、このピラニアっぽい魚って名前なんていうんだ??」
『そのまま、ピラニアよ』
「へぇ……」
なんか面白くないなぁと思いつつも、クロムは凍ったままのピラニアを鍋の中に入れて竃にかけた。
竃の火は空中を飛び交う照明代わりの火の玉くんたちを使うことにして、そのまま煮こむことにした。
「調味料なしって美味いのかね……」
『この世界の常識の一つに体内に貯め込む魔力量が多いほど美味しい素材だと言われてるわよ。
だから、魔物は基本的に美味しいということが常識になっているね』
「ふ~ん、でもこのピラニアって魔物なのか?」
『下級の魔物に属しているわよ、素材のままでも食べれなくはない程度には美味しいはずだよ』
「ま、食べてみればわかるか♪」
クロムは、すっかり煮えているピラニアを一口食べてみることにした。
弾力はあまりないが、さっぱりとした白身のお魚って感じである。
「可もなく不可もなく…… ってところだなぁ~」
そうぼやきつつ、クロムは煮汁を少し飲んでみることにした。
「!!!!!!!
なんだこれ!!!
美味い!!!!!!!」
ピラニアの出汁がたっぷりと出た煮汁はびっくりするほどの美味さであった。
「ピラニアは汁物用の出汁を取る魚に決定♪」
出汁の美味しさにすっかり上機嫌のクロム。
いつのまにか全てを飲み干してしまったクロムは、疲れていることもありそのまま眠りにつくのであった。
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