第6話 身体計測


今は木曜日の夜の9時、俺は自分の部屋で頭を抱えていた。


「はぁっ……今週の日曜日に何を着てこうか……」


そう、俺は雫とお出掛けの用の服選びをしていた。


俺はベットに俺の今持っている服を何着か並べて、着てみたりしていた。

俺の服はほとんど無く着れる服は数える程度しかない。高校生になりやっと外への外出が自由になり、服を自由に買うことが出来るようになったけど、まず男の服はほとんど作られておらず買うことが出来ないし、服屋さんの場所知らないし、それ以前に俺はあまり服に関心が無かった。

なので、最終手段をとることにした。それは、オーダメイドでかすみさんに作ってもらうことだ。かすみさんは家の家事をしつつ短い時間で服を何着か仕立ててくれた。


でも自分には服を選ぶセンスはこれっぽっちも無いようでどれも納得がいかなく、困り果てていた。


うーん。かすみさんに選んでもらってもいいのだけど、かすみさんには1度頼っているし、日頃の家事も全てしてもらっているのでこれ以上負担はかけれないと思うので無しだ。


お母さんに頼んでもいいのだけど、最近お母さんは仕事で家を留守にする事が多く、家に帰ってきても深夜ですぐに寝てしまっている。お母さんは何の仕事をしているのかは聞いても適当に誤魔化して教えてくれないけど、相当忙しいのだろう。なので却下だ。


……消去法で残るのは妹である茉優しかいない。

でも、このごろ喋ってもいないし家が広く俺はすぐに自分の部屋に行くので会ってすらいない。


でもお兄ちゃんとして茉優とはまた沢山話をしたいし、なにより寂しい。家族なんだから仲良くしないとな。


あ、そうだ!思ったけど、これって茉優と久しぶりに話すいいきっかけだと思った。


「もう夜だし……茉優も帰ってきているだろうけど、多分疲れて寝たんじゃないかな?茉優に話しかけるのはまた今度にしよう。さて、俺ももう寝るか……」


俺はベットにある服を片付けてからベット入った。

最近疲れているのか、俺は案外早く眠りにつく事が出来た。


☆☆☆



俺はいつものように起き、いつものように朝ご飯を食べて家を出た。


「……おはよう優馬。」

「おはよう雫。今日はいい朝だね。」

「……そう?別に普通だと思うけど。」


何気ない会話から話は始まり、世間話や常識の話をしたり学校の話をしたりして、もう学校は見えるぐらいまで歩いて来た。


「あ、そうだ。雫とはコトダマで友達になってなかったんじゃないかな?友達になっとけば日曜日の待ち合わせも連絡がとりあえて便利だからさ。コトダマで友達にならない?」


俺はスマホを片手に持ちコトダマのアプリを起動させながら言った。


「……そうね。わかったわ。」


こうして俺と雫はコトダマ友達になった。

よしッ!と、俺は心の中で喜んだ。


「ところで今日って何かあったけ?」


また今日も日程表を見てこなかった俺。

単純にアホである。


「……たしか今日は身体計測があったはずよ。」

「あ、そうなんだ。」


身体計測か……あれ?俺ってどのくらい身長って伸びたかな?前までは身長、体重は測ったりしていたけど最近は面倒くさくて測ってないな。

160センチ後半ぐらいまで伸びてると嬉しいな。


俺は身長が男としては昔からあまり高くない方だ。

女の子と比べると高い方なのだけど、俺にとっては若干のコンプレックスだった。

なので、1センチでも1ミリでも身長が伸びていてくれれば嬉しいのである。


「……そうだ!頑張ってね。優馬。」

「え?何を?頑張るの?」

「……ほら、立ち止まってないで行くわよ。」

「え、あ、……うん。わかった。」


結局何を頑張るのかは、雫には聞けずじまいで、学校に到着してしまった。

一体……何だったんだろう……すごく気になるんだけど……?


雫の一言で今日1日が不安になってしまう俺だった。


☆☆☆


「はい、皆さんおはようございます。今日は身体計測がある日ですね。では、早速体育館に体育着で集合して下さいね。」

「「「「「はい。」」」」」


クラスの子達が返事をすると──突然。服を脱ぎ始めた。


「え?」


俺は驚きで変な声を出してしまった。


……うん。1回この場の情報を整理しよう。奈緒先生の掛け声でクラスの皆は男の俺がいるのにも関わらず制服を脱ぎ始めた。


……ん……!?それって……相当やばい状況じゃないのか?


「ちょちょ待って皆。まだ俺がいるから、見るつもりはないんだ。ごめん。急いで出て行くから!」


俺は手で目を隠しながら急いで教室を出た。目をつぶっていたため、机やイスなどの物が相当当たっていたので体が痛い。


俺は溜息をつきながら深く座り込む。


一瞬だけ女の子のブラジャーやパンツが視界に入った。クソ……忘れたいのに……頭が本能で脳内メモリに保存してしまう。はぁ……なんとも情けないものだ。


「はぁ、それにしても、男の俺が目の前にいるのに脱ぎ出すとは予想もしなかったな。もしかしてこれが普通なのかな?」


俺は誰もいない廊下で独り言を呟いた。


「あ、優馬君。君も身体計測をするけど、女の子達と一緒は勿論ダメですので直接保健室に行って下さいね。後は保健先生の指示に従って下さい。」


教室から出てきた奈緒先生がそう言って俺の体育着を手渡してくれた。


「あ……はい……分かりました。ありがとうございます。」


俺は奈緒先生にお辞儀をし、保健室に向かって歩き出した。

………あれ。俺って保健室の場所知らないんだけど!?

そう言えば、ここの教室とモニタールームにしかまだこの学校では行っていないため、それ以外の場所が一切分からない。

でも、目的地は保健室だ。そのため多分1階にあるんじゃないかなと予想は出来た。


ここは3階なので俺は階段を2回降りて保健室を探した。


困った時は人に聞けばいいのだけど、人に聞こうと思って探してはいるがぜんぜん見つから無い。この学校大きすぎるんじゃないの?少々俺は焦り始めた。

このまま保健室の場所がわからなかったら次の時間に間に合わないと思ったからだ。


あ……そろそろ時間も無いな。

俺は時計を見ると、身体測定開始時間になりかけていた。遅れて保健室の先生に迷惑をかける訳にも行かないし、少し走るか……


そして、軽くでも素早く俺は走り走り出した。


そんな俺がちょうど曲がり角を曲がるその時だった。何も考えることなく俺は勢いよく右折した。


そして──


「──うわっ!!」

「──きゃぁぁっ!!」


曲がり角からいきなり誰か出てきて俺と正面衝突した。


俺もそのぶつかった人も、どちらも尻もちを着き転んだ。


「っぅ……痛たた。って大丈夫?怪我してない?」


俺はすぐに立ち上がって手を差し出す。


「はわわわ。すいませんすいません!!ぶっかってしまって。何でもするので許してください!!」


その女の子は俺の手には気づかず、何故かすぐに土下座をしてきた。その女の子は体育着を着ていて今から身体計測をしに行くのかな?


「いいから。土下座はやめよう。ね。」

「いえ。本当ににすいません。こんな私はクズですよね。こんな道に迷って時間が無いから急いでたら人にぶつかってしまうなんて。もうこんな私……大嫌いです。」


そんな女の子はブツブツと自己否定をする。

大丈夫か……と一瞬、体よりも頭の方を心配してしまうが取り敢えず、俺は両手で女の子の腕を掴み無理やり立たせた。


女の子は緑色の髪が少し伸びていて顔が少し隠れていて見えにくいがそれでも分かるような整った顔立ちの美人でスタイルも良い。それに……その……胸が思ったよりも大きい、と思った。


体育着を着ているから余計体のラインとかも見えてしまった。一言で言うとこの子はエロいッ。


「本当に大丈夫?」


俺は聞いてもなんの反応も無く、まるでフリーズしてしまったかの様に固まってしまった。


「え?え……本当に大丈夫か?」


俺は普通に心配になってその子の体を揺すぶったりして意識を確かめる。


「はわわわ!!すいませんすいません!!お、お、お、男の人だったんですね?本当に私はなんてことを……私はもう終わりです。」


その女の子はそう言い、急に崩れ落ちそうになったので俺が支えた。一体何なのこの子?ちょっとなんだろう……個性的な子だな。

って、え?


「気絶してる。え、え、なんで……?」


そこから女の子に声をかけてみたり体を揺すってみたりしたが全く起きない。完全に気絶しているみたいだった。


このまま廊下に放置するのも気が引けるしな。それに俺は保健室に行く予定だ。ついでにこの子を運んで先生に見てもらう事にするか……


「ちょっとごめんね。」


一応断って、俺は女の子をおんぶして保健室に向かった。

女の子はまぁまぁ軽く、とにかくいい匂いがした。それに胸が俺の背中に強く当たっていて若干興奮してきた。まぁ、でも我慢だ。


気絶してる女の子を襲うなんてそんな最低なクズ野郎にはなりたくなんてないしね。俺は純愛の青春を送りたい訳だし。


俺はそこから数分女の子をおぶりながら歩き、やっと保健室と書かれた部屋を見つけた。


女の子の他に体育着も持っていたので歩きづらくてかなり疲れたけどついて良かった。


俺は保健室のドアを数回ノックして中に入った。


「すいませーん。誰かいませんかー?」

「はいはい。身体計測かしら?」


何かの書類を書いていた保健室の先生が立ち上がって俺に近づいてきた。保健室の先生は丸っこいメガネをかけていて、少しぽっちゃりとした優しそうな人だった。保健室の先生は白い白衣を着ていて、その右側の胸の部分に菊池という名札がついていた。

保健室の先生は菊地先生と言うらしい。


「はい。そうですけど、その前にこの子の事をお願いします。」

「まぁ。どうしたの?この子は?」


俺は女の子を近くにあったソファの上におろし菊地先生に事情を説明した。

菊地先生は分かってくれたようで女の子をベットに移動させた。ひとまず起きるまで寝かせて置くそうだ。


「あなたもさっさと着替えて身体計測しますよ。あなたは遅かったので、さっき大地君も終わって帰ってしまいましたよ。」

「あ、そうなんですか………」


大地先輩も身体計測をしていたのか一緒に行けばよかった。初めから、大地先輩と行っていればよかったのか……と言っても大地先輩の教室がどこにあるのかわからないんだけどね。


俺は体育着に、着替えて身体計測をした。

菊地先生は俺の体を見てはぁはぁと荒い呼吸をしていたが無視して身体計測をした。


俺の身長は164センチ、体重が52キロで前よりも身長が数センチ伸びていて体重も数キロ増えている。なんとも嬉しい結果だった。

でも、1つ疑問に残る事だけど、何故か菊池先生は俺のスリーサイズを測った。それだけは謎だった。

こんな情報使うんだっけか?


「ありがとうございました。菊池先生。」

「こちらこそありがとうね。いいもの見れたわ。保健室にはいつでも来てね。先生待ってるからね。」

「そ、そうですか。それはよかったです。それとあの女の子の事、よろしくお願いします。」


最後に女の子のことを菊地先生に頼み、俺は保健室を出て教室に向かった。



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