第188話 回復期のダイちゃん

「ぐすぐす……。」

―― ぐずるダイちゃんは可愛いのう。


「すうすう……。」

―― 背中ポンポンで眠ってしまったようじゃな、可愛いのじゃあ〜。



その後カールによる、つきっきりで献身的な介護によりダイアナの熱が平熱近くまで下がった。

しかし、まだ完全な回復ではないためダイアナの姿は子供のままだ。


「カール、きょうのご飯はみんなといっしょに食べたいわ。」

「うん、では暖かくして行くのじゃあ。」



「ダイちゃん!起きて大丈夫ですか?」

「おばあさま、具合はいかがですか?」

カールにエスコートされた小さなダイアナが食堂に現れると、エマとデイモンから質問責めだ。

ジジ&マリーも足元で心配そうにダイアナを見上げている。


「もう、ほとんどへいねつにちかいの。きっと明日のあさには大人にもどっているわ。」

「そうですか、それは良かったです。」

「モンたんは、カールの分までおしごとをがんばってくれて、ありがとう。」

「いえいえ、おじいさまも一安心ですね。」

「うむ。」

嬉しそうに尻尾を振るカール。


「エマちゃん、おみまいのフルーツをありがとう。とっても美味しかったわ。」

「ダイちゃん、とっても可愛いです!」

自分よりも小さくなったダイアナを見て、エマが大興奮だ。

「そうじゃろ、そうじゃろ。いつものダイちゃんも可愛いけど、ダイちゃんは小さくなっても可愛いのじゃあ。」

カールの尻尾が高速で振られる。


カールとエマがハートを撒き散らし、ちびダイちゃんに熱視線を送りながら夕飯が終わった。


「ごちそうさま、美味しかったわ唄子さん。わたしのために別メニューをよういしてくれてありがとう。」

「そんなの当然さね、もうだいぶ具合が良いようで良かったよ。でも念のために早めに休んでね。」

「ええ、そうさせていただくわ。」

カールにエスコートされ、ダイアナが退出した。


「小さいけど、話してみると中身はおばあさまでしたね。」

「可愛いです〜!病気じゃ無ければ一緒に遊べるのに…。」

エマは残念そうだ。

「エンマより小さくなっていますけど、中身はおばあさまですよ?」

「いいのです!」

相変わらずエマは同じ年頃のお友達に飢えているようだ。



―― 翌朝、ダイアナは大人に戻っていた。


「カール、私が病気の間ありがとう。もうスッキリしているわ。」

「元気になって良かったのじゃあ。」

カールの尻尾が揺れる。

元気になって嬉しいが、ちびダイちゃんではなくなってしまったのは残念だ。でも元気になって嬉しい。


「わし、今日は普通に仕事に行くね。ダイちゃんはまだ無理しちゃダメじゃぞ。」

「ええ、ありがとう。」

笑顔のダイアナに見送られて仕事に向かった。



「え!?アルコンとイブリースが病欠!?

……まさか……。」




―― その、まさかだった。


「けほん!…ロージー、ごめんね。おさんぽには行けなさそうだよ。ご飯はかんたんでいい?」

小さくなったアルコンが高熱で火照る頭を押さえながら、愛ケルベロスの世話を焼こうとするがふらふらだ。

『アル!…どうちよう…アルが小さくなっちゃった!』



「ベル、ごはんがレトルトでごめん。今日だけはお散歩をがまんして…。」

『イブ!ちっかりちてえ!』


一人暮らしのアルコンとイブリースが、高熱にうなされながらよちよちと愛ケルベロスの世話を焼こうとして失敗し、愛ケルベロスたちがオロオロしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る