第172話 エマのいない教室

「おはよう、皆さん。」

「おはよう、麗華れいかさん。」


登校したばかりの麗華れいかも、少し前に登校して麗華れいかを迎えた千寿ちず佳寿かずも、泣き過ぎて目が腫れていた。


麗華れいかさん、人相が変わっているわ。」

千寿ちずさんと佳寿かずさんこそ。目元が凶悪よ。」

「……。」


「エマさん、無事にお母様に会えると良いわね。」

ひかる様もエマさんも不思議と運に恵まれるタイプですもの、きっと心配するだけ無駄よ。」


まるっきり異国の顔立ちで避けられがちだったエマが、お互いの家の従業員や街の商人、近所の子供や大人相手に遠慮なくグイグイいって、あっという間に馴染んだ様子を思い出した。


「そうね、エマさんは大丈夫ね。」

「そうね。」

「私もそう思うわ。」


「……エマさんは異国で、さらに馴染むでしょうけれど…ひかる様は苦労なさるのではないかしら…。」

麗華れいかは心配でならない。


「それは…大丈夫だと思うわ。」

「どうしてそう思うの?ひかる様は、とても美しいけれど、どこから見ても日本人でしょう。」

「父もそこを心配したそうなのですが。」

「でも肝心のひかる様が…。」


『僕は大丈夫! ほら、僕は細かいことを気にしないから!』


「とっても良い笑顔で仰るので父も、『そうですか』しか言えなかったそうよ。」


ひかるの楽天的な様子が目に浮かんだ。

無事に家族が再開し、幸せな生活を取り戻す未来しか浮かばなかった。

エマ達が幸せなら、きっといつか再開できるだろう。そう信じたいと思った。

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