第60話 地獄で保護されます!

「こちら赤鬼、こちら赤鬼。どうぞ」

「こちら青鬼、聞こえている。どうぞ。」

「だ、大王様に幼女がしがみ付いて号泣している・・・。どうぞ。」

「・・・・生物兵器は?どうぞ。」

「泣きじゃくる幼女と、オロオロする子猫が2匹、以上だ。どうぞ。」

「・・・・・。」


「うわああああああん!」

ピクピクする大王様と幼女を取り囲む地獄軍の精鋭たち。


「だ、大王様?」

「ぐぇっ・・・チビ・・・。」

苦しそうな大王様が、優しく幼女をナデナデする。

「うええええええ、デカエンマああああああああん!うわあああああああん!」

閻魔大王にギュッとしがみついて、ギャン泣きの幼女。

困り顔で地獄軍の精鋭たちを見回す子猫が二匹。


「ひっぐ・・・えっぐ・・・・・・・・。」

「おお、よちよち。」

ポテ腹に受けた衝撃から立ち直った閻魔大王がエマの背をポンポンする。

大王様の意外なパパぶりを眺める地獄軍の精鋭たち。

「ひっく・・・すん。」

「落ち着いたか?」

「デカエンマ・・・。」

泣きはらした目で閻魔大王を見上げるエマ。

「そんなに泣いて・・・、ここに転移してくるとは、よほどのことがあったのだろう?儂はチビを保護するつもりだが、そのためには何があったのか知らねばならぬ。話してみぬか?」

ん?と優しく語りかける閻魔大王。


「でかえんまあ・・・」

じゅわあ・・と再び涙が溢れる。

ぽん、ぽん、ぽん。

「ひっく・・・エンマ・・お昼寝してて・・・なんか・・生あたたかくて・・・濡れてて・・・目が覚めて・・・ダモが・・・・・・あもが・・・エンマのおかお・・・えろえろ・・・・うええええええん。」

「え!エロエロだと!!!???」

閻魔大王の顔が憤怒に染まる。

「大王様、泣きじゃくって発音できないだけで、ペロペロって言いたいんじゃないか?」

赤鬼から冷静な突っ込みが入る。

「ぬ、ぬうう・・・。」

閻魔大王が恥ずかしそうに目を反らす。


「お嬢さん、つまりお顔を爆舐めされて嫌だったので家出してきたのかな?」

「ひっぐ・・・爆舐め・・・嫌らった・・・。じいじに、言ったのに・・・じいじ・・・ダモを庇ってばっかり・・・・ひっぐ・・えんまのきもち・・・えっぐ・・・ぜんじぇん・・・わかってないいいいいいいいいいい!」

話しながら涙が溢れ、再び閻魔大王にしがみ付き号泣するエマ。


「俺たち、エマの使い魔だから公平に見れないかもしれないけど、あんまりなんだぜえ。」

「エマちゃんの悔しい気持ち、閻魔大王さんなら分かってくれる?」

悲しそうな顔の二匹の子猫が閻魔大王に訴える。

「それは魔王殿が全面的に悪いですね。私は君たちの味方ですよ。」

猫なで声で話しかけながら二匹を抱き寄せたのは青鬼だった。


「大王様、お嬢さんを地獄で保護しましょうぜ。その間、子猫たちは俺が保護するんで!」


「青鬼・・・てめえ・・・・・・。」

赤鬼が青鬼を冷たい目で見る。

青鬼が無類の猫好きであることを赤鬼は良く知っていた。

なんでもいいから子猫たちを抱っこしたかった青鬼の心のうちはバレバレだった。

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