第114話 閉幕
突っ伏したサティに手をかけたレイナは首を横に振って、俺の言葉を否定した。
「……サティさんは殺しません。今ここにいるサティさんは、女神サティ・プルシャマナの仮の姿に過ぎませんから、殺しても意味が無いのです」
サティの
「……くそ、アンクの記憶を取り戻させたことが裏目に出たか。君が自分の弟を殺したことをアンクが知れば、魔法にもほころびが出る計画だったのに」
「甘かったですね。あなたがアンクさまに記憶を取り戻させようと
「追っていたつもりが、誘われていたってことか……詰めを誤ったな。まさか私の本体に届くほど、君たちが力を高めていたとは……」
「はい、発動できるかどうかは紙一重でしたが、私たちの勝ちです」
レイナは表情を変えずに言うと、サティの身体を引き寄せて、その唇に唐突にキスをした。
「…………!!??」
言葉が出ない。
「あー、もー、いきなり……」
「きゃー、だいたーん」
茶化すようなナツとパトレシアの声を気にすることもなく、レイナはサティとのキスを続行した。サティの顔を自分に押し付けるようにして、舌を絡ませて、猛烈なキスをしていた。
「……ん……」
濃厚な体液交換は、サティから貪るように魔力を吸い取っている。
媚薬の効果からか、サティの魔力炉からは物凄い量の魔力が溢れ出していた。白いの魔力がレイナの身体を包み、それがどんどんと黒く濁っていく。
「レ……イナ?」
俺の呼びかけを聞く様子もない。
彼女はただ一身に、サティの唇を
「……ぁ……ぅ」
蚊の鳴くような声で、サティは鳴いた。年相応の少女のように、彼女は甲高い声で声をあげていた。
「う……ゃ……」
抵抗しようと腕をあげようとしたサティだったが、それもやる気なく地面に向かって垂れる。操り人形の糸を切っていくかのように、サティの身体から力が失われていく。
対して、レイナの身体を包む魔力はますますどす黒く、闇に染まっていた。高い天井までに立ち上る魔力は、蒸気のようにゆらゆらと揺れていた。
「っ……そ……」
くちゅくちゅという唾液を絡ませる音はますます激しくなっていく。もっとも責めているのは一方的にレイナで、サティはもはや抵抗する気力も無いようだった。
「この地下祭壇には負の魔力が充満しているからね。サティちゃんとは相性最悪なんじゃないかな」
パトレシアはすでに仕事を終えたという感じで、2人の様子を見ていた。ナツもその横でペタンと座りながら、大きなため息をついた。
「本当に危なかった。アンクがいなかったら、私たちが覚醒する前にレイナちゃん死んでたし」
「危なかったねー、本当に」
呑気そうに2人は笑っていた。
決着はついたと2人は確信していた。戦闘体勢はすでに解いていて、さっきまで死闘を繰り広げていた人間とは思えなかった。
「ナツ……パトレシア……」
俺が呼びかけると、2人は俺の方を振り向いて首を傾げた。
「いつからだ?」
「いつから、って?」
「『
「やっぱ聞くよね、それ」
パトレシアは困ったように微笑んで言った。
「ずっとよ」
「ずっ……と?」
「そう、ずっと。私もナツちゃんも最初から、レイナちゃんに呼び出された協力者なの。
「待て……! それじゃあお前たちは…………?」
『
何かがおかしい。思考が追いつかない。
真実を探ろうとすると、壁にぶち当たってしまったように停止する。何かが思い出せなくて、何かを忘れている気がする。
俺はまだ全ての記憶を取り戻していない。
「本当はね」
ナツは寂しそうに言った。立ち上る魔力にふわふわと髪を揺らしながら言った。
「アンクに記憶を取り戻させる予定は無かったの。でも、サティちゃんが事態に気がついてしまった時から、徐々に
「だから、レイナちゃんと私で協力して、女神をやり込める計画を立てたのよ。また新たな魔法を使って、やり直す方法を見つけたの」
「レイナちゃんはこれしかないって言っていた。前に使ったよりも、完璧な魔法で世界を閉じ込めるの」
「
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