第82話【力こそパワーであり強さこそストロングっっだ……!?】


 鬼のテンザはステージに上がると『お前達、邪魔だ。失せろ雑魚め!!』と、多数の参加者を場外へと弾き出した。


 投げられた参加者が山積みになり、逃れた者でも蜘蛛の子を散らすようにステージ上から走り去る。


 MCまかいちゃん『お~っと、鬼のテンザ選手!!「フッ……。ここでは、俺が主人公だ!!」とでも言いたげな、その威厳と迫力は今大会でも健在だぁぁあっ!!』


 スタッフの計らいによりテンザだけをステージ上に残し、透明な超極厚防音設備が現れる。


 大規模な設備に動じることなくテンザは、死亡定しなさだめをする――――前々回の大会では、力が強すぎて握りつぶしてしまいとなったからだ。


 通常の魔人ならば刑測鬼は、手のひらに収まるサイズである。

 だが――――テンザの大柄な手では、刑測鬼全体を包み込む程だ。


 目標を補足したテンザは大きく両手を広げ『受けてみよ、我が全身全霊の力を!!』と言って、刑測鬼を握る。


『ギヤァッ!』と断末魔の叫びが響く事なく、血管 がはち切れんばかりに握りしめるテンザ。


 この闘いは意地プライド×意地プライドのぶつかり合い……泣かすか、泣かされるかの勝負でもある。


 鬼のテンザと呼ばれるその由縁――――その形相もさる事ながら、まるで〝憤怒の鬼〟のような、地響きを起こすその呻き声にある。


け!!け!!け!!けえぇぇぇいぃぃっ!!』


 人々が防音設備越しにテンザの絶叫に耳を塞ぐ事、数秒後――――全力で握られた拳が刑測鬼の鳴圧なきあつにより勢い良く弾かれた。


 弾かれた拍子で偶然にも出口へと避難したテンザは、腕を組んで自らの刑測鬼を満足そうに見ている。


 箱の中では『ぎゆゅあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙っ!!いでぇぇえよぉぉお!!』と痛みでもがいている刑測鬼。


 他の刑測鬼達も、仲間の絶叫により白目を剥いて泡を吹く者、必死に体を動かして助けを求める者が現れている。


 その後は瞬きの間もなく、連鎖的にひび割れが起こっていく。


 MCまかいちゃん「スタッフの皆さん!!です!!今すぐ追加の防音準備を!!」




【絶対に無理だ。あんな化け物に、こんなか弱い妃様が勝てる筈がない――――あのテンザって奴……もしかしたら死天王クラスじゃないのか?……】

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