第16話【魔王より強い裏ボス】

 小さな体は、壁に深く突き刺さる魔王影武者の胸ぐらを掴むと一本背負いの勢いで高級絨毯へ叩きつける。


 天井を見上げる僕の視界には、可愛らしい体が見え、その中には、【狂暴性】と【暴力性】そして【支配性】が織り混ざったような恍惚な顔をしていた。


「ほんの冗談ではないか……たまには、我のジョークも新鮮だろ?」


 虫の息の魔王影武者を見て、婦人裏ボスは、鼻で笑うととんでも無いことをいい放つ。


「あなた私との記念日よりも、戦うことを選んだわよね?あんたなんか大好きな勇者と一緒にいればいいわ!!」


 仰向けの僕に婦人は、馬乗りになると執拗に顔を攻めてくるのだ。


「いや……奥様……それには、魔界海峡よりも深い訳が……ゴフッ」


「今さら、許しをこうても遅いわ!!」


 怯える家来と日常茶飯事なのかフレデシカ魔王の娘の笑い声と嫁の打撃音が複雑かつ優雅に織り混ざっていた。


 顔が腫れてもはや、魔王様どころか影武者でもない容姿に成り果て、生まれてはじめて女性に触ら殴られた感触を肌で思い出しながら失神した。


【母上へ、泥棒猫ゆうしゃ許さない】

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