背徳愛

ドーナツパンダ

第一話「残酷な事実」彼目線:博征(ひろゆき)

突然だった。

彼女から告白された「あいつとの結婚式」


こんなにも彼女のことを愛してるのに、なぜあいつと結婚することになったのか。


激怒になるより、俺は逆に彼女に今までにないくらい情熱なキスをした。


彼女なら、断るはずはない。

だから、「最後のキス」をした。


だけど、そのせいで彼女に対する「愛慕」が一気に膨らんだ。


「んんっんあっあっんんん」

感じてる声に仕草。彼女は、俺の女だった。

そして、今になって、他の男の妻になろうとしてる。


だから、しよう。

彼女のことを愛してるのは、この俺だけだ。

グイッと彼女の顎を上げて、熱く切なくキスをした。二度と戻らない関係になったとしても…。


だけど、そのせいで彼女に対する「愛慕」が更に上昇した。

(悪いのは…君だ。だから、君の旦那から君を奪おうではないか…)

決して、持ってはいけない感情を持ってしまった。


「博征…?」

「俺は…俺はまだ君を愛している。今でも変わらないよ」

「博征?どうしたの?」

「猫被るなよ?俺は君の初めての男だ。もし…これがばれたら、どうする?」

彼女に俺のスマホの画面を見せた。

「え?」

その画像は、婚約指輪をはめてる彼女とキスをしている時の写真だ。


「だ…だめ!」

「んんっんあっ」

ハアッと息を吐く。

「俺の女になれ。必ず、君を幸せにするから」

ここから、俺と彼女の関係をが一層深まっていった。


「ねえ…私、明日から違う男の妻になるよ?」

「うん、知ってる」

「だから…」

「杏奈…」

「え?」

また、彼女に熱いキスをした。

また、彼女のことを深く傷つけてしまった。

「いいのか?こんな時間に…?」

「平気よ。まだ彼と結婚してませんから」


優しく微笑む彼女の幸せな顔を壊したくない。

だけど…。


俺は、君のことが好きなんだ。

愛してる。誰よりも。


「ねえ?ちょっと!?どこ行くの?」

「いいから、ついて来い」

あるホテルに着いた。

「博征?」

「杏奈…」

まただ。この眼差し。

この眼差しを見ると、俺は理性を失う。

「君は本当にそれでいいのか?」

「え?」

「戸田のやつ…いや、明日から君の夫になるから、悠真さんと結婚してもいいんだな?」

「お…親の言いなりだから、仕方ないじゃない」

「そうか…」

「杏奈、最後の支度をしろ」

「へ?最後の支度?」

杏奈は俺の言葉の意味が分からなかった。そりゃそうだよな。

「先にシャワーして来い。俺はどこにも行かずに、ここで待ってるから」

「う…うん」

半信半疑しながら、彼女は風呂場へと向かった。

(これでいいんだ。俺は間違ってない)

「杏奈…ごめんな」

(少しの間だけ、俺の女でいてくれ。

せめて、君が俺の傍から離れしまう前に、もう一度、最後の恋がしたいんだ)

杏奈は風呂場から出てきた。

「最初で最後の…愛をくれ」

今までの幸せが壊れていく。

消えていく。離れていく。

そう心痛く思いながら、杏奈を後ろから抱きしめた。

「杏奈…明日からもよろしくな?」

(俺は一体何を言ってるんだ?)

「博征?何言ってるの?」

「おかしいよな?俺もそう思ってるよ」

「君の幸せを奪いたいくらい、俺は君に恋してるんだ」

「ごめんね」

「君と両想いになれた時は嬉しかったよ。君と一つになれた時は安心したんだ。これから先も君と残りの人生を歩みたいと思ってるのに、君が他の男の妻になろうとしてる事だけは許せないんだ」

「だから、例え、君が人妻になっても、俺は君を愛するよ」

「たった一人の幸せより、二人の幸せの方がいいだろう?」

「ううっごめんね…ごめんね」

「泣くな。泣かないでくれ」

「杏奈。君と長くいた時間を大切にしている。だから、君を幸せにしたかった。杏奈。君は俺が一目惚れした女性だ。そして、君を幸せにされてやれなかったのが、唯一の心残りだ。君が辛くなればなるほど、俺は君に寂しい思いをさせてきた。君が俺との長年の交際で、奪われた物がたくさんあったとしても、いつも笑顔でいてくれた。だから、俺が『別れよう』と言ってきた時、涙を流しながら、笑顔で『うん』と言ってくれた時、安心したんだ」

「君を愛せる幸せがまだあるとしたら、それは不倫だ。それしか手段はない」

「博征。ありがとう」

「もう遅いけど、俺との関係は今日で終わりだ。明日から不倫相手になるからな」

「本当、変な人だね」

気がつくと、俺の腕時計は深夜二時を回っていた。

「家まで送るよ」

「お願いします」

明日から君は他の男の妻になる。

せめて、そうなる前に、君と幸せになりたかった。

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