第12話 眠らない星
「割に合わない仕事があるんだけどね」
武田はそう言って切り出した。
逆に言うとやりがいがあるんだよ。
最初のノウハウ、フォルムみたいなものは、
全部本部の方でやってくれるから
お疲れさまです。
発注した品が決まった時間に入ってくる
梅だ、おかかだ、昆布だ、辛子明太子だ……
そうしている内にパンも入ってきた。
あんぱん、ジャムパン、クリームパン、
サンミー、ヨンミー、ミルクフランス……
陳列棚に順に並べていく
その間にレジにも人が並んでいる
いらっしゃいませ!
ダッシュしてレジへ向かう
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、
お弁当は温めますか
電気代お願いします
宅配便お願いします
ラークください。マルボロください
7番ですか。メンソールですか
お疲れさまです。
雑貨きた、総菜きた、アイスきた
ガリガリくんだ、しろくまだ、チョコモナカだ……
トイレ貸してください
はい、どうぞ!
両替してくださーい
「両替だけはちょっと。ごめんなさい」
はい。いらっしゃいませ
少々お待ちください
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、
割り箸は何本おつけしましょうか
お疲れさまです。
本がきた
ジャンプだ、サンデーだ、マガジンだ、
リボンだ、マーガレットだ、増刊号だ、
こち亀だ、ワニがドーナッツ!だ
店は24時間何があっても開けること
雨が降っても、槍が降っても、台風がきても、
大変な時ほど頼りにされる店ですから
いつでも街角にあって
目印のように輝いている
そこには店の主が必要になる
いらっしゃいませ!
ありがとうございます!
次から次へと人がやってくる
時には猫が間違って入ってくる
「金を出せー!」
時には道を踏み外した人も
狂気をみせて入り込んでくる
物騒な夜だってあるのです
お疲れさまです。
新しいおにぎりがまた入ってくる
梅干、かつお、昆布、高菜、
シーチキンマヨネーズ、鮭……
売れ残ったおにぎりは消費期限が近づいている
ああどうしたもんか
20円引きしようか、50円引きしようか、
もったいない
「半額にしようかな」
そう思ってもそれはできない
勝手なことはできないんだよ
時には箱いっぱいに
お弁当が捨てられることになる
その分は自腹で買い取らなくちゃならない
「いらっしゃいませ」
朝でも昼でも深夜でも
客は際限なくやってくる
眠くても眠らずに
主は店を守らなければ
この町と本部の間に独りになっても
走り出したら火の車
「どうだい? 勤まりそうかな。
答えは一週間後で。いい返事待ってます」
「もう答えは出たよ」
「やるのか?」
「ワニがドーナッツ!!」
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