第10話 猫と詩人
「よくこの道通るじゃないか」
「ふん」
「同じ道をよく通るね」
「……」
「壁沿いぎりぎりをいつも通るよね」
「それが何か?」
「いや別に」
「ふん。信じられないね」
「まあ、別にいいけど」
ワニがドーナッツ!
「そこは君の道か?」
「そんなわけないよ」
「だったら何か」
「別に何も」
「ふん」
「よく通るなって……。それだけ」
「猫が好きな道を通ってわるいかね」
「いやわるくないです。何かすみません」
「君だって同じだよ」
「え? 知らないでしょ。僕のこと何も」
「ふん」
ワニがドーナッツ!!
「あと、あの店の前でよく止まるよね」
「……」
「店の前で止まって10秒くらい中を見てる」
「君だって同じだってんだよ」
「何がだよ」
「詩の形が同じだってんだよ」
「詩なんて書いてないわ」
「書いちゃってんだよ」
「書いてないわ」
「ワンパターンだってんだよ」
「書いてないって言ってんだろ」
「似たような風景を並べるんだろ」
!ワーニがドーナッツ!
「並べてもいいじゃないか」
「どうせ3つくらい並べるんだろ」
「並べて悪いかよ」
「暇に任せて並べてんだ」
「暇ってなんだよ」
「3つ並べた後も決まってんだ」
「何が」
「どうせ星の話かなんかして」
「……」
「イメージが広がったような気になって」
「はあ?」
「どうせ何かぽつんと言って終わるんだろ」
「終わるしかないだろ」
ワニがドーナッツ!!
「やっぱりな」
「何が?」
「詩人はみんなうそつきってんだよ」
「何か尖ってるね」
「そう。猫も詩人も似たようなもんさ」
「詩人じゃない」
「書いちゃってんだよ。ばれちゃってんだよ」
「まあいいけどな」
「ふん」
「君はあの店のことが気になるの?」
「見てたのか」
ワニがドーナッツ!!!
「見られてんだよ。君もばれちゃってんだよ」
「ふん」
「興味があるの?」
「それが何か?」
「やっぱりあるんだ」
「ふん」
「あるんだね」
「興味がなきゃ生きてらんねよ」
「だよね」
ワニがドーナッツ!!!
「ふん」
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