『大島サイクル営業中』 作・京丁椎

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884170119


 さて、長々と続くこの小説はバイク初心者な作者が自宅療養中に書いた作品で処女作だそうです。最初は『小説家になろう』へ登録していた作者が異世界・異世界転移物がメインのなろうからエッセイや現代ドラマもあるカクヨムに転載したものですね。若干ですがストーリーも読もうとカクヨムで違います。読もう版は主人公の子供が生まれた直後に物語は終わり。妻が独り立ちする娘を見送ってエンドとなっております。


 カクヨム版は妊娠後のドタバタや出産時の主人公の様子などが描かれております。


 小説としては粗削りな部分が多く、誤字や脱字の指摘をされても仕方がないのかなと。作者が迷いながら何度か書き直したのでしょう。消し忘れた文字が残っている部分があります。故に誤字脱字某と呼ばれるマウントを取る方を呼び寄せているのかもしれません。最近は体調が良いとの事で余裕のある対応をされていますが、余裕があるならば修正してはいかがだろうかと思いました。


 滋賀県の北西部にある架空の街『滋賀県高嶋市』が舞台のこの作品、普通なら琵琶湖の東を舞台とするはずですが、作者自身が住む町を舞台にしたのは郷土愛ではなく資料集めや取材をするのが面倒だったからと思われます。

※執筆開始時は自宅療養中で遠出できなかったそうです。


 高校生キャラが多く出る本作ですが、初期のメンバーは進級して登場が少なくなっています。なのに後輩が登場することなく、メインヒロインは三十歳過ぎのリツコ。これはライトノベルとして異色であり、青少年をターゲットにしていないことの表れでしょう。作者自身がタイプの女性との事で、年増好みかと思ったら三十歳でも歳下なんですね。やはり三十歳より上な昭和生まれをターゲットにしていると思われます。


 所々に埋め込まれたネタが十代に理解できません。新世紀エヴァンゲリオンや逮捕しちゃうぞ、ああっ女神さまっや機動警察パトレイバーや究極超人あ~るなどの懐かしい漫画やアニメのネタに頼った笑いは若者には理解できないでしょう。ただし、ツボに入る世代には受けるでしょう。


 夫婦の夜の営みを『合体』の一言で表現してしまうあたりはいかがなものか? 性的表現の規定があるとはいえ少々表現力が不足していると思います。この表現のおかげで某映画を思い出してしまいました。


 メカの描写などは少々怪しいところが見られます。もしかすると敢えて簡略化しているのかもしれませんが、整備士資格を持っていると公言するのだったらメカについてさらに深く追求するか素人にも解りやすく解説していただきたいところ。解らない所を調べながら読むのも悪くは無いですが疲れます。


 設定ですが、基本的に勧善懲悪です。高嶋市北部と南部が対立しています。昭和の香り漂う『安曇河町』は良いとして、悪役の『今都町』があまりにも世紀末過ぎて現実味が有りません。実在する都市と混同しないようにしたと作者は気を使っていますが、モデルとなった町に住む方は良い気がしないでしょう。初期は極悪だった今都町から普通な人物が出てきた辺りは作者の心変わりか、それとも更に今都町の悪さを際立たせるものなのかは不明です。恐らく前者でしょう。前者であってほしいです。


 主人公の顧客が通う『滋賀県立高嶋高校』はモデルとなった高校があります。全く違うそうですが、お近くに行かれた際は聖地巡礼してもよいでしょう。特に見る所も無い普通の高校ですが。


 厳しい意見ばかり申し上げましたが良い点も有ります。登場するオートバイが突拍子もない非現実的な走りをするのではなく、頑張っても時速六十キロ少々しかスピードが出ない設定はリアルです。バイク好き、特にレジャーバイクやスーパーカブ系の好きな方はトネコーケン先生の『スーパーカブ』シリーズが更新するのを待っている間の暇つぶしとして読んでみてはいかがでしょうか。


 ……とまぁ、自分の作品を批評してみました。年末の笑ってはいけないを見て思ったんですが、自分のやっている事を客観視してみるのも面白いかなと。遠藤が『ま~』をして邦正が『ホホホイ』をする。それをお互い見せる事で笑いが生まれるように、自分に作品を読み返すのも大事な事かなと思いました。


 それにしても、自分で書いたとは言え初期の文章は読みにくいったらありゃしない。そう思うって事は少しは成長したんですかね?

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