34話 バラバラの三人衆 ~四角い箱~

「おい⋯⋯起きろ」



 私はその低い声と、自分の体が揺れている事に気づき目が覚めた。



「ん? どこ⋯⋯ここ?」



 なんでかわかんないけど、私とプリンは何かでどこかに運ばれているようだった。

 四角い小さな部屋みたいな空間に、窓はなく外は見えない。でもその部屋は私達を揺らして動いている。



「なにっ? どうなってんの? 私達、洞穴にいたよね?」

「俺にもわかんねぇ。目が覚めたらここにいた。どこに向かってるのかもわかんねぇ」



 え? それまずくない? そもそも私達、連れ去られるのに気付かなかったわけ?



「っていうか、この部屋、出口とかないわけ?」



 よく見れば扉のようなものは見当たらない。どうやって出るのかも、どうやって入ったのかもわからない。




 しばらくすると私達を揺らしていた箱は、急に止まりドンッと地面に下ろされる感覚になった。



「え? なに? 止まったよ!」

「静かにしろ」



 プリンのいう通り私が黙ると、扉のない箱の外から声が聞こえてきた。

 どうやら壁はそんなに厚くないようだ。



「おい、テメェ何をする気だ?」

「ニンゲン キライ デモ イジメ ヨクナイ」

「ねぇ本当にこの方法で合っているの? 殺すことにならなぁい?」



 どうやら聞こえる声だけでも3人はいるみたいだ。

 一人は多分ミュートン。それっぽい喋り方だし。あとは掠れた声の男と妙に色っぽい声の女。

 外が見えない私達には、それくらいの情報しか得る事ができなかった。




「でもどうやって血を取るのぉ?」



 色っぽい声の女がそう言った。


 血を取るって? 私達の血を取るってこと? 意味わかんないんだけど。なんのために血を取るのよ。




「でももう起きてるかもしれないわよぉ? どぉするの?」

「そりゃ大丈夫だ。殴って血を取る」



 なんか会話が怖くなってきたんですけど。

 でも私はもっと聞こえるようにと、聞き耳を立て壁にピッタリくっついた。



「おい、あんまり行くな」



 プリンのその声と同じに、私が体重をかけたほうに箱は傾き、私達はバランスを崩した。



「あぁっ!」



 思わず声が出てしまったと思い、自分の口に手を当てたが遅かったようだ。




「あん? あいつら起きたのか?」

「ニンゲン イジメ ヤメル」

「っるせぇよ、キャップやったんだから、黙って従え! くそミュートンめが」



 私達がいる箱に足音が近付いてくるのがわかる。

 私は咄嗟にプリンの腕を掴んだ。




「ふん、こんなアイテムはこんなことぐれぇにしか使えねんだ。二人もゲットできたんだ、使い道があったってもんよ」



 掠れた声の男は箱の前で止まると、ブイン――と音を立てて箱は綺麗さっぱり消え去り、私達は連れ去った3人と対面した。




「うわっ! な、なに?」



 そこにいたのは、やっぱりミュートンと顔がただれた男、それに髪の毛がなくなった女だった。


 これどういう組み合わせよ? っていうかこの人達どっかで⋯⋯?



「こいつらは⋯⋯」



 プリンがそいつらを見て驚いている。どうやらプリンも見覚えがあるようだ。



「おい、なにやってんだ。早く縛れ!」



 ただれた男がミュートンにそう言った。ミュートンは嫌そうに、私達を縄で縛った。



「痛っ!」



 ちょ、きつすぎ! 私達、どこに連れて行かれるんだろう。

 でもやっぱりこの人たち、あれだよね。


 ゲームのNPCだよね?


 絶対そう。でもなんでNPCがこんな事? やっぱり自我を持ったから、性格まで変わったってこと?

 もうよくわかんないや。


 ただれた男は、私達を縛った縄を持ち無理矢理立たせ、歩き始めた。



「行くぞ」



 どこに行くかもわからず、縛られている私達は、そいつらに付いていくしかできなかった。

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