第24-2話 海外留学(2)

 次の日、雀の囀りでひなたは目を覚ました。

 むくりと体を起こす。被っていた布団が上半身からずるりと落ちる。細い指先でカーテンを摘み開けると、朝の陽ざしが素肌に当たって気持ちよかった。

「いい朝です」

 光を受けた朝顔のように、むくむくと意識も覚醒してくる。

 昨晩は寝つきは悪かったのだが、いつもより多く寝れた気がする。

うーんと背伸びをして、目覚まし時計に視線をやる。そして、伸びきった身体をガチンと硬直させた。

「ち、遅刻ですーっ!?」

 そう叫ぶと、ひなたは下半身を覆っていた布団を蹴り飛ばして、慌てて身支度を整え出した。


 ◇


「ぎ、ぎりぎりセーフなのです」

 はあはあと息を切らせながらも、ホームルーム一分前にひなたは教室に着いた。

「おはよう、ひなたちゃんが珍しいんだよ」

「いつも、早く来てるのにね」

「起きるのが遅くなりまして……」

 いつも授業の始まる三十分前にはついているひなたにとって、ひやひやものの登校だった。そう息を吐いたところで、チャイムが鳴って担任の先生が入ってくる。

 鞄の中から筆記用具を取り出しノートを開いたところで、ふと思った。

 いつもは、お兄ちゃんが起こしに来てくれたはずなのに……。

「忘れただけですよね」

 ひなたは心の中でぽつりと呟いた。


 ◇


「うー、お腹がすきましたー」

 四時間目の理科の実験が終わり、ひなた達三人は別校舎にある理科実験室から教室へと戻っていた。

「今日は朝ごはんをゆっくり食べられなかったのでもうはらぺこです」

「ん? 食べてはいるのよね?」

 ひなたの発言に矛盾を感じながらも、千瀬はいつものことだとスルーした。ひなたの言うことをいちいち真に受けてはいけない。なぜなら言っている本人もよく分かっていないからだ。

「あうー……お腹ぺこぺこですー……わたしもう動けないですー……」

「巨乳、ひなたの気を引く話題を提供しなさい」

「無茶ぶりだよ!? そ、そうだね、ひなたちゃんは何かなかった?」

「本人に投げてどうするのよ」

「うー、そうですね……そういえば今朝急いでいたせいでマンホールにハマ……あ、あれはお兄ちゃん?」

「マンホールに!? ハマりかけただけよね!?」

「やっぱりお兄ちゃんです! わーい、お兄ちゃーんっ!」

 移動教室の途中、渡り廊下を歩いて食堂に向かう兄を見つけた。

 全力で手を振り上げるひなたに気付いた護は、彼女の方をちらりと見たが、そのまま無視して食堂へと消えていった。

「あ、あれ?」

 思いもよらぬ冷たい反応に、ひなたは呆然と立ち尽くす。

「もしかして……わたし、嫌われてます……?」

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