#083:国防かっ(あるいは、アゲ揚げ!少年マントラゴン)

 不毛の二文字をさらに意味なく無言で磨き上げる作業をしているかのような、休憩アンド作戦タイムはすこんと終わりを告げた。


 結局わっかんねー、という感覚を肌に残したまま、割とつつがなく「決勝第二戦」の場へと招集された我々。


 そこに鎮座していたのは、巨大な五角形の「舞台」であったのだけど。


 撞き固められたフィールドの上に、半径15mくらいの、お立ち台みたいなものが見上げる高さでどんと置かれている。相当な存在感、威圧感。いやそれにしても仕事速いな。


 高さ3mくらいのその「舞台」の上へと、黒服の先導に従って傍らに設置された簡易階段を上る。観客席の最下段と同じくらいの高さだ。それだけで視界が開けたような気になる。そして周りを巡る、嗚呼、としか表現できない九割おっさん方が占める観客の姿には辟易する。そして、


 私ら「対局者」10名は改めてその「正五角形」を形づくる場にて、一同に会するのであった……


 十人十色、という平凡に過ぎる感想が頭をよぎりかけた私だけれど、それも詮無いことと思われる。いろんなのがおるわー。例の全身黒タイツが今後も「対局服」として指定されているものの、休憩明けだからか、めいめい自分の服を着込んで登場してきていた。


 意味不明の軍服、意味不明のまわし姿、意味不明の平成元年ルックに端を発し、黒づくめのゴスだけどロリじゃない、薄らでかい無表情の幸薄げな女(チギラクサというらしい)、黒づくめのスーツに身を包んだこれといって特徴の無い女(クロトだそう)、黒いワンピースを身に着けた金髪のロングの少女然とした体躯の女(イブクロだって)、って黒多いな!


 <さて、みなさん。『第二戦』のご説明に移りたいと思います>


 私が心の中でつっこみの右掌を突きあげようとしたところで、司会実況のハツマのビジョンが、ふっとその「舞台」の中央に現出した。


 お色直しをしたのか、真っ白なミニのドレスに包まれた姿は、女の私から見ても輝きを発散しているようだけど、まあ周りの汚い歓声も相当に集めている。


 <決勝第二戦は……名付けて『60分一本勝負!バトルロイヤる狭間』ですっ!!>


 いや「ですっ!!」じゃないよね。ファーストインプレッションが謎のタイトルを名付ける意味はあるんだろーか。いや、これも突っ込んだら負けのパターンだ。落ち着け。


 私は今度は現実に繰り出そうとした右手を、またも左手で揉みほぐして自重の構えに入る。そんな私を置いて、ハツマの流れるような説明は続いていく。


 <みなさんの今いる『ペンタゴナス=フォーディメンショニック=フィールド』は、『10個の三角形』と、中央にひとつの『五角形』で形成されています>


 名称は相変わらずの謎さ加減だけど、足元を注視してみると、正五角形の頂点5つはそれぞれ線でつながっており、つまり五角形の中に五芒星が入っていると言えばわかるだろうか。


 五芒星の中心には、この舞台の二回りくらい小さい「五角形」が確かにあり、その周りを囲むようにして線分で区切られた「三角形」はこれまた確かに10個。


 奇しくも(なのか知らんけど)、我々対局者の人数と同数だ。ま、だから? とも思えなくもないが……しかし、


 いやな予感は本日何回目かは分からないけど、とにかく今の私ほどにもなると、毛穴のひとつひとつから不穏な空気を感じ取れるまでになってしまってるわけで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る