第7話

都内で殺された男は韓国国籍のぺウォンドン50歳だった。

占い師殺人事件が起きる5日前に来日し、高級ホテルに泊まり、毎日出かけていたという。

職業は韓国からの情報によれば機械メーカーの個人ブローカーで、日本にも得意先があり、商談のための来日だったということは分かっている。

日本での足取りは事件当日とその翌日の動きは分かっていない。

殺されたのは占い師事件が起きてから10日後のことだった。


所轄による捜査では、韓国人の部屋に出入りする人物はホテルの従業員のほかはふたりだけだった。

ひとりは高級売春婦らしきロシア人の女。そしてもうひとりは帽子を深く被った女性らしき人物だった。

複数の防犯カメラにその人物は捕らえられているが、顔が分かる映像はなかった。

ただ、その男の経歴から被疑者である建設会社社長夫人と同時期にアメリカに留学していたこと、そして同じ大学だったこと。

さらに、兵役経験があり、特殊部隊に所属していたことなどが分かった。


小山田たちは、ある女に面会するために都内のオフィスビルにいた。

社長夫人と同じ時期に留学し、同じ大学で親しくしていたという女性だ。その女性は横屋真佐江という商社の役員をしている。

年齢は50歳を超えていると思われるが、肌艶がよく、華やかな感じのする女性だった。応接室に案内され、その女性と対峙した。


「お聞きしたいのは、ずばり香苗さんの男友達のことです」


「人の過去をバラすようなことは心外なのですけど」


「殺人事件の捜査なんです。ご理解のうえご協力ください」


「仕方ありません。これは私の口からということは彼女には伏せてくださいますか」


「出来るだけご迷惑はかけません」


「彼女は韓流ドラマの大ファンでした。自分の部屋でいつも借りてきたビデオを見てました。同じ大学で、食堂で知り合ったようなんですけど、韓国からの留学生と親しくしているということは知っています。私と三人で大学から離れた街まで行って映画を見たり食事をしたりしていました」


「それは男と女の関係だったということですね」「そういうことになりますね」


決定打だった。これで実行犯と社長夫人との線が繋がった。捜査会議でそのことを報告すると、刑事課長から社長夫人のさらなる身辺調査と、実行犯の疑いのある韓国人の捜査を人員を増やして実行するように指示がなされた。



韓国の警察に頼んで、ぺウォンドンの家の家宅捜査が行なわれた。

そこでは、社長夫人からのものと思われる手紙が何通か発見された。

そして、ぺが最近たびたび来日していること、その足取りから社長夫人との密会の目撃者探しが始まっていた。


数日後、さらに決定的な事実が出てきた。

ぺウォンドンの足取りを探るうち、来日したおりに必ず寄る韓国料理店があり、そこの店員による証言が得られた。それによると、数が月前に社長夫人とぺウォンドンが会っていたことが確認された。


その証言が取れたその日、社長夫人に対し任意での事情聴取を実行されることが発令された。




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