ハラパンマンとゆかいな仲間たち~守れ!町の平和と魔法少女~
しいたけの使徒
第1話 プロローグ 魔女狩りとおやじ狩り
草木も眠る夜、一人の男が息を荒げながらくらい路地を走っていた。男はとある秘密結社の幹部の男。
麻薬密売、要人の暗殺など、法的にかなり危ないことを多数請け負っていた犯罪者集団だ。しかし、そんな秘密結社の幹部の彼は、今とても焦っていた。
任務を終えていつものように戻ってくると、仲間が全員地面に倒れていたのだ。その代わり事務所のボスの椅子に座っていたのは、怪しく目を光らせた白髪の男。
その怪しさと目の前の惨状を照らし合わせ、男は確信した。『この男はヤバい』。
すぐに踵を返し、現在に至るというわけだ。
しかし、先程から必死に走ってはいるが、男の足音や折ってくる気配はない。
少し様子を見ようと、男が立ち止まって前を振り返った瞬間、
「ヌウッ!?」
その男は既に自分の前に回り込んで立っていた。
その男はとても自然な笑みを浮かべて近づいてくる。
「何をそんなに驚いているんだい?前を気にせずしたばかり歩いていたのは君だろうに。」
「く、来るんじゃねえ!!」
「安心したまえ。私は君達に感謝しているんだ。君たちの悪行のおかげで私は今月分の家賃を払うことができた。今度は私が、君達にお礼をしてあげよう。」
そこまで聞いた時、男ははたと我に返り、気づいた。
白髪の男は、すでに自分の目前まで迫っていることに。
いつの間に?いつ、どうやってこちらへ来た?瞬間移動でもしたというのか?
疑問符が頭を飛び交う中、青年の拳が男の腹に炸裂する。
それはいわゆる『腹パン』。
「ぐおっ…!き……貴様……何者だ?」
「いいセリフだ。王道的だな。だが無意味だ。」
その一言と共に、二発目の拳が男の腹に突き刺さる。
それによって男の意識は瞬く間に刈り取られた。
ドサッ
「ふう……。」
一仕事終わったというふうに男は溜息をつく。
男を路地の端っこに蹴とばし、颯爽と立ち去ろうとしたその時、
「待ちなさい。」
後方から声がかけられる。
男は『油断した』と心の中で悪態をつく。本来なら自分が後ろを取られることなど絶対にないことなのだ。しかし明日は贔屓にしているお菓子屋『照慶堂(でけいどう)』が十周年記念ということで、感謝の気持ちも込めて一番乗りで買いに行こうという思いがあり、少し焦っていたのだ。
渋々後ろを振り向くと、そこに立っていたのは黒いマントのようなものを羽織った少女。戦うにしてはあまりにも幼すぎる。彼は警戒を強める。
「あなたがここの対立組織の構成員ね。」
しかし、かけられた言葉はあまりにも予想外なうえに拍子抜けで少し肩を落とす。
どうやら彼女はこの秘密結社の対立組織を壊滅させているらしく、おとり捜査をしていたようだ。
しかし、自分はそんなことは絶対にないと男は頭を振る。
それと同時に、彼は目の前の少女の正体になんとなく目星をつけていた。
この街にはいくつかの『都市伝説』が存在し、そのほとんどが事実である。
かくいう自分のその中の一つであることから、この少女もその中の一つであろうと考え、一つの結論に辿り着く。
「争う気はない。お互い噂になっている身、話題になるのはあまりうれしくないんじゃないかな、魔法少女さん?」
「あ、貴方……なぜそれを……!!」
鎌をかけたがうまくいった。と彼は内心でほくそ笑む。
今の反応は自己紹介をするようなものだ。
正体も知れて動揺も誘えたことだし、これでおさらばとばかりに彼は懐からあるものを取り出す。
それはズバリ、防犯ブザー。
勢いよく引き抜かれたそれからは、けたたましい音量の警報音とそれに混じった悲痛な叫びが響く。
「この音につられて何人かここへ様子を見にやってくるだろう。君も長居は出来ないね。それでは。」
そこまで言うと、男は足で土煙を巻き上げ、次の瞬間には瞬く間に夜の闇に消え去った。
―――
この世界には、いくつかの都市伝説が存在する。
街に迫る怪物、魔女。
それを守る魔法少女。
様々なものがあったが、その中で突出して怪奇な伝説があった。
それこそが……『ハラパンマン』
彼を中心に、今、物語が動き出す。
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