第5話 優しいリチャード

 ガブリエルは自分の部屋の鏡をじっと見つめる。確かにあの乙女ゲームの悪役令嬢ガブリエルだと再確認した。今日もストレートのロングの髪、メイクは目を強調して、派手な黄色のドレス、十三才の美少女だけど気がキツそうな顔。

 コンコン、ノックをしてメイドが入ってこう言った。

「ガブリエル様? リチャード様がお見えになられております」

 その名を聞いてガブリエルはこう思った。

(リチャード? あ、乙女ゲームのキャラクターの一人だ。でも、リチャードは同い年の私よりも姉のエルモを好きなはず……?)

 そしてガブリエルはこう答えた。

「リチャードはどこにいるの?」

「ゴメン、待ちきれずに来ちゃったよ?」笑顔のリチャードがひょこっと姿を現した。

 リチャードはガブリエルと同じ十三才。

 リチャードは美少年である。

 それからリチャードは優しい性格をしているためいろんな人に好かれやすい。

「なんの用なの? リチャード?」ガブリエルは冷たく言った。

「うーん? 理由はないけど、ガブリエルの顔が見たくなってね?」リチャードは相変わらず笑顔のままでガブリエルの部屋に入って来た。

(何よ? 冷やかしに来たの?)やんちゃ令嬢ガブリエルはそう思った。

「帰って?」ガブリエルはリチャードにそう言った。

「あはは、ガブリエルは相変わらずだよね。でも、ボクにはそんなの気にしない、いや、ガブリエルらしくていいと思うよ?」ニコニコしているリチャード。

 それを聞いたガブリエルは、

(あれ、これって遠回しに何が言いたいの? そもそも私は悪役令嬢ガブリエル、これは何かのフラグよね?)と考えて、

「いいから、帰って?」と言葉でリチャードを突き放した。つもりだった。

 しかし、

「ガブリエルのそういうところが好きなんだ……」とリチャードは言ってやんちゃ令嬢ガブリエルを抱きしめた。

 この突然の出来事に、ガブリエルは頭が混乱した。

(え、えっと、ええー!?)ガブリエルは顔が真っ赤になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る