超短編集

@samedrugs

渋滞

大学の先輩からシルバーのekワゴンを譲り受けた俺は今年のGWに車で実家まで帰ることに決めた。

これがそもそもの間違いで、今は30km以上の渋滞に嵌まり2時間が経過したところだ。先はまだまだ長い。また事故が起こったようで、パトカーと救急車が大きなサイレンを流して通り過ぎていった。俺はうんざりしながらカーオーディオでラジオを付け、馴染みのない地域の馴染みのないFMを選局した。The Beatles「Eight Days a Week」が流れている。小さく鼻歌を唄いながら、ハンドルに置いた指先でリズムを取る。あれ、最後のコーラスはこんなに繰り返されるんだったっけかな?渋滞のせいか異様に曲が長く感じる。

スルスルと渋滞列の車が流れ始めた。走行車線に留まった事故車が取り除かれたようだ。よかった、なんとか日付が変わる前には実家に着きそうだ。安堵した俺は、路肩でぺちゃんこになったシルバーのekワゴンの横を通り過ぎた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る