第53話
あれから葵と体を重ねて、初めてエッチをした時よりも随分と激しく盛り上がってしまった。葵は快楽に従うように淫らになって、こんなにエッチだったかと驚いたけどそんなこと気にしていられないくらい興奮した。私もなんだかんだ葵と一緒だ。見事に煽られてそれに乗ってしまった。
終わってからベッドで横になっていたら葵はこちらを向いて嬉しそうに私の手を握ってきた。
「由季、大好き」
少し疲れた様子だけどそんなこと気にしないように笑う葵が可愛くて頬を撫でる。
「私も好きだよ。体痛くない?」
「うん、平気」
「良かった。じゃあ、満足していただけましたか?」
少し笑って問いかけると葵は恥ずかしそうに頷いた。
「うん、……ま、満足しました」
「なら、良かったです」
「…由季も、満足した?」
控えめな葵に笑って答える。そんなの決まっている。
「当たり前。葵が可愛くて可愛くて、大変満足しました」
「そっ、そっか。良かった」
葵も笑うけど照れているようだ。さっきまでエッチしていたのに葵は本当に照れ屋だ。こうやってよく照れていて本当に愛しい。目元を優しく撫でていると恥ずかしそうに抱きついてきた葵。それに背中に手を回して応える。葵の体が、素肌の感触が心地良かった。
「由季、好きだよ。本当に大好き。私、由季が好き過ぎて死んじゃいそう…」
「んん?なんでよ?大袈裟だよ」
葵の愛は昔から変わらない。私の返答に葵は目を見つめて答えた。その目には本当に私しか写っていないようだった。
「大袈裟じゃないよ、本当に。毎日由季のことしか考えてないもん。私だけの由季が好きで好きでたまらないの。由季への気持ちと、由季の私への好きな気持ちがあるから、本当に満たされるよ。私、私……私だけ愛してくれる由季が好き。私だけ触ってくれる由季が好き。私だけ見てくれる由季を本当に、本当に愛してる。由季の体も顔も目も、指先まで全部好きなの。全部好きで好きで、独り占めできて、本当に胸がいっぱいに満たされて、幸せすぎて由季しか考えられない。由季に満たされて、溺れちゃいそう……。ねぇ、由季?由季は、私のことどう思ってる?」
葵の言葉に私はただ緊張した。葵の愛は私を離さないように、ただひたむきに私に向かって全身を捉えるかのように絡まる。葵の目は私への愛しかない。この子は本当に私しか見ていない。私はそんな一途な葵の愛に愛しさを、喜びを感じると共に目の奥の真剣な想いに動けなくて、目が離せない。私は葵の愛に侵食されていくようだった。でも、何を言えば正解になるのか分からない。葵の愛は何よりも大きくて重くて繊細だ。私は目を逸らさずに葵への気持ちを話した。
「…私は葵が好きだよ。私を思いやって何かしたり、しようとしてくれる葵が好き。優しくて照れ屋で恥ずかしがりだけど、一生懸命で真面目で、そこが可愛くていつも好きだなって思う。葵の気持ちが本当に嬉しいよ。あんまり上手く言えないけど本当に、本当に好きだよ」
とりあえず今の気持ちを緊張しながら伝えた。葵みたいには伝えられないけど、伝わっただろうか。少し不安に思いながら目を見つめ続ける。葵は、一瞬固まったような表情をしてから本当に幸せそうに笑った。
「……嬉しい。それは、私だけだよね?」
笑顔で葵は私の顔に片手を添えて優しく指で撫でてきた。嬉しいのに、それにまた緊張した。
「……うん。葵だけだよ」
「私だけ、愛してる?」
「葵しか愛してないよ」
「本当に?本当に嘘じゃない?」
何度も確かめる葵の笑った顔がなんだか儚くて切なくて、私は思わずキスをした。葵はそれに私の頭を抱き締めるように応じてくれる。何回か角度を変えながら啄むようなキスをする。私は葵しか愛していない。そう伝わるように。
「…好きだよ。好き。信じてくれる?」
「うん。信じる」
私の愛をやっと信じてくれた葵は幸せに溢れているみたいだった。良かった。ホッとして私達は顔を見合わせて微笑む。
「愛してるよ」
「うん、私も。由季だけ。由季しか愛せないよ」
そのままギュッと抱きついてくる葵を強く抱き締める。好きな気持ちが溢れて、触れてるだけで満たされる。葵は体を離すと私を愛しそうに見つめる。
「……由季?」
「なぁに?」
「……キスマーク……つけて?」
「キスマーク?」
可愛いことを言う葵は静かに頷く。そんなことしなくても、葵は私に独占されていることを感じたいのか?愛しそうな眼差しは変わらずに私を捉えて離さない。
「こないだも、つけてくれなかったから。今日はつけてほしい」
そんなことを気にしていたのか。確かにつけてないけどわざわざ確認したのか?それが可愛らしいけど少し困った。葵はモデルなのだ。
「だめだよ。仕事があるでしょ?仕事に支障が出ちゃうからだめ」
私は正論を言ったのに葵は引き下がらない。
「でも、してほしい。由季の……印、ほしい」
「だめ。私にはつけても良いけど葵はだめ」
仕事に支障がモロに出てしまうのに、して良いとは到底思えない。それでも葵は駄々をこねるようにねだった。
「水着とか下着の撮影とかは、しばらくないから。……だから、下着に隠れるとこで良いから、して?由季の物って、感じたいの」
エッチでちゃんとそれは感じられると思うけど見える独占欲が葵は欲しいみたいだった。葵にせがまれて私は非常に困った。ここまでしつこいと葵が折れるのは難しいしやっぱり仕事がちらつく。大丈夫とは言うけどモデルの仕事は体を見られる。私は賛同できなかった。
「そんなにこだわらなくても、ちゃんと好きだって言ってるし、エッチもしてるでしょ?それじゃだめなの?」
「そうだけど、由季は、独占とかあんまりしないから……してほしい。私を由季の物って、見えるようにしたい。お願い由季」
独占しているつもりだけど葵に比べたら私の独占何かないような物なんだろう。私は元々束縛したり干渉したりしないタイプだし葵には色々言われているけど私は葵に何も言わない。葵のことは信用しているし仕事が仕事だからする気もない。でも葵はそれを気にしていたのかもしれない。
そう考えると、葵の可愛いおねだりを私は仕方なくいつもみたいに聞いてしまった。
「……じゃあ、一個だけだからね?」
「…うん!」
「仰向けになって?」
葵はすぐに仰向けになると目で私を急かしてくる。私は、毛布をかけたまま葵の上に移動して手をついて、のし掛かるようにする。
葵の肌は本当に白くていつ見ても綺麗だ。華奢な体の割りに大きな胸は綺麗で見ているだけで少しエッチな気分になりそうだ。そんな葵にキスマークをつけるなんて悪いことをする感覚になる。
「由季?まだ?」
私が躊躇っていたら葵は不思議そうに首に手を回してくる。待ちきれない葵に私は笑いかけてから胸に唇を押し付けて少し噛みつきながら強く吸い付いた。跡がしっかりと残るように。
「んっ、…由季。可愛い……」
優しく抱き締めてくる葵の温もりを感じながらしつこく吸い付いてから唇を離すと白い肌にくっきりと赤く印がついた。この位置ならギリギリ隠れるだろう。私はそれを見て安心する。でも、私はやっぱりこういうのは自分でする気にはならない。だけど、これで葵も満足だろう。
「ついたよ葵」
「うん。ありがとう由季。本当に嬉しい」
「ただのキスマークだよ?」
「私には本当に嬉しいことなの。由季の印、由季の気持ちが体に残ったみたいで、由季を感じられて胸がいっぱい」
葵はとても嬉しそうに笑った。
仕事が大丈夫か心配だけど葵は本当に嬉しそうに微笑むから、そんなことどうでもよくなってしまった。こんなことで喜ぶ葵が愛しくて可愛らしくて、軽く口づける。私も葵の気持ちを感じられて嬉しくなってしまったみたいだ。だけど顔を離すと、葵は私を逃がさないように抱き締める力を強めた。
「……キス、もっとして?足りない…」
「…いいよ。葵、口開けて?」
切なそうな声に仕方ないから葵が満足できるように言うと、葵は控えめに口を開けて私を熱の籠った目で見てきた。そそられる。そう思いながら私は優しくキスをしながら次第に激しく舌を絡めたり吸ったり、這わせたりして口の中を犯す。葵とのキスは、気持ちが良くて、葵の気持ち良さそうな声を近くで聞けるから癖になりそうだ。
「はぁ、っ……んはぁ、んっ、ちゅ……あぁ……んっ!はぁ……んんっ」
「はぁ……ん、あおい……好き……だよ」
「はぁ…んんっん!…はぁ、あっ、……ん……わたしも……好き……っん、はぁ…」
時折唇を離してキスをしながら愛を囁いてからやっと離れると唾液で葵の口の回りが汚れていた。胸で大きく息を吸いながら葵は私に微笑んで指で私の口の回りを拭いてくれるけど、そんな淫靡な姿に目も心も惹き付けられる。
「……汚してごめんね?」
「そんなの、どうでもいいよ」
私は葵の無防備な興奮を煽るような姿に落ち着きながら葵の指を掴んで口づけると葵の口の回りを今度は私が拭いてあげる。
「由季、私はいいよ……そんなことしなくても…」
「あんまり誘わないで葵」
「え?」
私は分かっていない葵に、優しく触れるだけのキスをする。この子は無意識に私を誘惑する。
「さっきの顔、すごいエッチだったよ?」
「…な、なに?いきなり……」
「いきなりじゃないよ。興奮しちゃうから、エッチの時だけにして?」
見境なくなってしまはないように、照れて目を逸らす葵に優しく告げると葵は小さく呟いた。
「…そんなの、分からないよ……由季だって、エッチなキス……するくせに」
「ふふ、私は良いの。でも、葵は魅力的なんだから、あんまり無防備にしないで?」
葵に誘惑されると制御できなくなる自分がいる。だから私は葵には悪いけど自分は棚に上げてしまう。でも、少し悪い気持ちもあるから頬を撫でてやると葵は不満そうだけど頷いてくれた。
「……ずるいけど、由季が言うなら…分かった」
「うん。ありがと」
私も葵に本当に惚れ込んでいる。それをよく自覚してしまった。だって、こんなに心が動かされるんだから。
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