第22話 俺様王子はご立腹

「レナンジェス、放課後に俺様の部屋に来い」


食堂で不機嫌そうに言う第二王子。


「おい、今度は何をしたんだぁ?」


チャールズは茶化すようにレナンジェスに問い掛ける。


「私は何も…」


「朕は弟が嫉妬している様に見えるな」


第一王子カイザルはそう言いながら悪戯な笑みを浮かべる。


「殿下、ご冗談を」


レナンジェスはそう言いながら額の汗を拭う。


『意外とミーア様と復縁したいと言う相談かもしれませんよ?』


不意に小悪魔従者が口にする。


「それは無いでしょう」


悪役令嬢ミーアは寂しげに言う。


『そうでしょうか?毎日、ご馳走では飽きますが適度に粗食をしていればご馳走は魅力的だと思いますよ』


小悪魔従者の言葉にW王子は焦った表情を浮かべる。


『レナンジェス…』


「何でしょう?」


『復縁は断固阻止しろ!』


W王子は笑顔で言うが目が笑っていない。


「御意に…」


レナンジェスはそう言うと席を立った。




放課後、レナンジェスは俺様王子の部屋を訪れる。


「よく来た」


部屋には俺様王子と聖女ミュージー、悪役令嬢の腹違いの妹ルーアも居る。


「ご用件は?」


レナンジェスは跪いて俺様王子に尋ねる。


「最近、休みの日に楽しそうにしているではないか」


少し怒りの表情を覗かせる俺様王子。


「私は護衛と世話係で同行させて頂いているだけです」


「それだけか?お前は兄上の派閥に属したという噂が聞くぞ?」


「蝙蝠男とも呼ばれていますね」


「そうだな。しかし兄上や帝国皇太子殿と一緒に居すぎる。俺様と関わるのはそんなに嫌か?」


そう言いながらレナンジェスを睨みつける俺様王子。


「ヤキモチですか?」


「何だと?」


「いえ、仲間外れにされて拗ねているのかと思いました」


「無礼者!其方の貞操を今奪っても良いのだぞ?」


不意に俺様王子は立ち上がると怒鳴り声をあげる。


「恋人の前ですよ?」


「そうだな」


その言葉に黙る俺様王子。


「殿下、ミーア様が御一緒なのです。殿下が同席するのは如何なものでしょう?」


「問題はお前がミーアと毎日行動する事だ。俺様だって王都でデートを楽しみたいのだ!」


思わず本音を口にする俺様王子。聖女と悪役令嬢の妹は俯いている。


「それでは護衛を連れてお忍びで行かれれば良いかと」


「ミーアにはこの国屈指の剣士とお前の従者、この国で五指に入る剣豪のお前が要るから許される行動なのだぞ。俺様にはそんな護衛がおらぬ」


「しかし…隣国皇太子殿下と第一王子殿下は毎週のデートを楽しみにしておられますし…」


「そこを隔週にさせよ」


「つまり殿下のデートに付き添えと?」


「そうだ」


レナンジェスは考え込む。W王子はそれを良しとしないだろう。


「それには説得が必要ですが…」


「お前が何とかしろ」


「そう言われましても…」


「俺様の命令が聞けないのか?」


「いえ、帝国皇太子殿下と第一王子殿下に警護が薄いと言われかねません」


「ではどうすれば説得できる?」


「腕利きの護衛を雇うか貴族を同行させるかですね」


「ならばジュドーとライディースを同行させれば良いだろう」


俺様王子はそう言いながらニヤリと笑う。


「ジュドー様は毎週、王都で伯爵家令嬢2人を連れて遊び歩いておりますが…」


「何だと?ウラヤマけしからん!!」


「それはジュドー様のプライベートですので」


「ならば集団デートだ!ジュドー、リムル、ライディースとお前でな」


俺様王子はドヤ顔で言う。


「それでしたら近衛兵5人程、少し離れた場所から護衛させるべきですね」


「そうだな。では兄上とチャールズ殿を説得して来い」


ニヤリと笑いながら俺様王子は命令した。




「実は…」


ミーアの部屋に入ると皆に俺様王子の要求を説明するレナンジェス。


「おいおい、次期国王だったら近衛兵に守らせれば良いだけだろぅ?俺達のデートを隔週にさせるのは横暴じゃないかぁ?」


チャールズは怪訝な表情を浮かべながら言う。


「解せぬ…」


第一王子は渋い表情を浮かべた。


「我は…レナンジェスが一緒なら…」


ライディースは頬を赤く染めて言う。


「とりあえず1回要望に応えては?そうすれば皆さまは一目置かれるのではなくて?」


『デートはどうなるんだぁ?』


「…部屋でお茶会をしながら親交を深める事も重要かと…」


レナンジェスがそう言うとW王子はあっさり了承した。

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