第14話 隠しキャラ第一王子登場
翌日、授業を終えたレナンジェスは昼食を摂りに食堂へ向かう。すると建物の裏から怪訝な声が聞こえた。
「平民の分際で何時までこの学院にいる気かしら?」
「娼婦の娘なんて汚らわしいですわ」
どうやら恒例のイジメイベントだ。
(全く…俺様王子は何をやっているのだか…)
レナンジェスはそう考えると声のする方へ向かった。
建物の陰では侯爵家、伯爵家の令嬢が2人の少女を取り囲んで魔法を放とうとしている。
(これは完全にアウト)
レナンジェスは素早くモブ令嬢達の前に立ちふさがる。
『何おつもりですの?』
「魔法を使ったら流石にまずいですよ。御家取り潰しだけで済めば良いのですが…」
その言葉にハッとした顔をするモブ嬢。もしも魔法を放っていたら彼女等の家は取り潰された挙句、最悪は極刑も有り得るのだ。
何故ならば悪役令嬢の腹違いの妹ルーアは公爵家の人間扱いだからだ。更に聖女に手を出せば教会を敵に回しかねない。
「お嬢様方、皆さまは大変美しい。故に自らの品位を下げる事は嘆かわしく思います」
レナンジェスは令嬢達に跪いて微笑む。
「余計な事を…」
不意にモブ令嬢達の後ろから俺様王子が現れる。
「これは殿下」
レナンジェスは跪いたまま俺様第二王子に挨拶した。
「だが未遂とはいえ魔法を使ったのだ。お前等は覚悟が出来ているな?」
そう言いながらモブ嬢を睨みつける俺様王子。
(このままではまずいな。例え彼女等に非があってもこの数の家を取り潰せば貴族からの批判は出る。それは王族の権威を傷つけるだけだ)
そう考えたレナンジェスは俺様王子だけに見えるように口を動かす。
「何だと…こ、今回は未遂だ。故に無かったことにしよう。しかし2度目は無いぞ?再びこのような事があれば…親子ほどの年の離れた家に強制嫁入りの刑だ!」
俺様王子はそう言うと令嬢達を解放する。
(恐ろしい…相手はきっと豚侯爵や鬼畜伯爵だろう。薄い本が何冊出来上がる展開になるんだ…)
レナンジェスは想像しただけでゾッとする内容にしばし無言になる。
「それからレナンジェス。彼女等を処罰したらアーンを無くすとはどういうことだ?」
「この様な事で家を取り潰せば王家の権威を失いかねませんので」
「アーンを禁止にすると言われてあのような処置を取ったら俺様の権威も失われかねないぞ?」
「それはありません。殿下は罪を悟らせ寛容な処置をされただけです」
「解った。それからアーンを無くしたらお前の後ろの口も中古品になる覚悟はしておけよ」
そう言いながら2人を伴って去って行く俺様王子。
(恐ろしい事を…)
レナンジェスは貞操の危機を改めて感じるのであった。
「なかなかやるな。あの我儘な弟を大人しくさせるとは。それどころか弟は其方の影響で分別が付くような人間に変わった」
不意に声を掛けてくる者が居る。
(貴方様は…隠しキャラの第一王子カイザル様!)
第二王妃の息子で王位継承権2位のカイザル=オリンポスだ。
「朕は其方と話してみたい」
第一王子はそう言うと生徒会室へレナンジェスを連れて行った。
「それで相談だが…ミーア嬢をどうすれば我が妻に迎えられる?」
「突然、何を言いだすのですか。ミーア嬢はチャールズ殿下と良い雰囲気ではありませんか」
「そうだ。それは其方があってからこそだ。朕は彼女を愛おしく思う。しかし弟の元婚約者と結ばれる為には障害が多いのだ」
それはそうだろう。何しろ弟の元婚約者と婚約するとなれば周りの反対は容易に想像できる。それ以上に他の公爵家が黙っては居ないだろう。
「何故、殿下が婚約なさらなかったのですか?」
「親が決めた事だ。朕をセロ公爵家に養子入りさせて乗っ取る腹だったのだからな。しかしミーア嬢は聡明で美しい。朕はミーア嬢の婿として支え続けたい」
(…あんたのルートは2年生後半にセロ家に商人見習いとして潜り込むところからなんだよねぇ。その間に様々なフラグを立てないとだし…今更無理でしょ)
内心でそう考えるレナンジェス。
「もし協力するなら…コンドーサンを使ってやるぞ」
「勘弁してください。私の純潔を奪わないでください」
「口では奉仕するのにか?」
「あ、あれは…」
「済まぬ。戯れが過ぎたな。だが朕はどうしてもミーア嬢が欲しい。彼女に愛を捧げられるのは朕しかいないと自負している」
(それはあんたルートではそうでしょうよ。でも、チャールズルートに入ると彼がミーア嬢をサポートしてイージーモードになるんだよ。だから無理)
「無理は承知の上だ」
「では、明日の昼に食堂に来てください。そこで紹介しましょう」
レナンジェスがそう言うと第一王子は明るい表情を浮かべた。
翌日の昼食時、レナンジェスは第一王子と食堂に現れる。それを見たモブたちはざわついている。何しろゲームの中で1番の美形キャラだ。
「レナンジェスよぉ、昨日来なかったから心配したぜぇ。それでその御仁はぁ?」
チャールズはカイザルの気品あふれる姿に高位の者だと判断したのだろう。流石は帝国皇太子だ。
「お初にお目に掛かる。朕は王国第一王子のカイザルである。名高い帝国の皇太子殿とお会いできて光栄である」
「そ、そうかぁ…それで何で第一王子殿がレナンジェスと?」
「フム、ミーア嬢を紹介してもらいたくてな」
その言葉にミーアは顔を紅潮させる。彼が言っているのはレナンジェスを通してミーアと恋人になりたいと言うものなのだから。
「どういうことだぁ?」
チャールズはレナンジェスを睨みつける。
「どうと言われましても…殿下、一緒に食事をするまではお膳立てすると申し上げたはずですが?」
「解っておる。今のは朕が先走り過ぎた。非礼を詫びよう。名高いミーア嬢との交流を持ちたいと思ったのだ」
カイザルはそう言いながらミーアに微笑みながら優し気な眼差しを向ける。
(出たー!無敵のスマイル!!)
カイザルの必殺技“無敵のスマイル”。これにはどのような女性でもトキメイてしまう。それはミーアでも例外ではなかった。
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