第11話 Wデート?~1

休日の朝、レナンジェスは珍しくコーヒーを啜りながら王都の店をリストアップした一覧表を見ている。


「朝は公園でも散歩して昼食後にヴィンドウショッピングしたりクレープ食べたりするか」


そう呟くとコーヒーを一気に飲み干す。


「それにしても…平民服も豪華になったものだ」


鏡越しに写る平民服姿の自分を見て苦笑いを浮べる。服は相変わらず安くはないが庶民が買えない程でもない。それは各領が繊維産業に力を入れたからである。


『準備出来ました』


ヒューイとドゥーイも普通の恰好をして現れる。


「今日は私の事をお兄ちゃんと呼ぶように」


『はい、お兄ちゃん』


(ウッ、可愛い…。お姉ちゃんと呼ばせたいのは前世の性だろうか?)


そんな事を考えながら校門へ向かうレナンジェスであった。




「遅いぞぉ」


「我は今来たところだ」


「お待たせしました。それよりも集合時間まであと30分ありますが…」


「解っているだろぉ?ミーア嬢とデートだから遅れるわけにはいかないんだよぉ」


チャールズはソワソワしながら言う。


「我もダブルデートが楽しみで…」


(ダブルデートじゃないから!親交を深める為の交流だから!それに私の従者も居るんだからね!)


そう思いながら苦笑いを浮べるレナンジェス。ライディースはレナンジェスとデートと言う認識なのだろう。


それから30分後、主役の悪役令嬢ミーアが現れる。


「平民服でも綺麗だなぁ、ミーア嬢」


「お上手ね」


チャールズの言葉に優雅な仕草で返すミーア。


『お姉さま綺麗』


ヒューイとドゥーイがハニカンで言うとミーアは頬を赤らめる。それを見たチャールズはヒューイとドゥーイにムッとした視線を向ける。


「そ、それでは行きましょうか」


レナンジェスは慌てふためきながらそう言うと6人を王都の公園まで連れて行った。




「風が気持ち良いわね」


髪をなびかせ風を心地よさそうにするミーア。それにはチャールズが見惚れている。


『お兄ちゃん、アイス食べよ』


不意に言うヒューイとドゥーイ。今日は暖かいし少し冷たいものが欲しい気分だ。それを察したのだろう。そして2人は近くのアイスの屋台でカップに入ったアイスを6個買ってくる。


(出来る…この2人の男子力は私より上だ…)


そう思いながらヒューイからカップに入ったアイスと木のスプーンを受け取るレナンジェス達。そして近くのベンチに腰を下ろす。


『お姉さま、これも美味しいですよ。はい、アーン』


2人の小悪魔は異なるアイスをミーアに食べさせる。


「こういうのも良いわね」


ミーアはニコリと2人の小悪魔に微笑んだ。


「負けられねぇえなぁ。ミーア嬢、アーン」


チャールズが小悪魔に対抗心むき出しにする。


「チャールズさん、それは子供だから許される行為ですよ」


レナンジェスは慌ててチャールズの暴走を止める。


「我も…レナンジェスにアーンを所望したい…」


ボソリと呟くライディース。レナンジェスは聞こえないふりをしてチャールズの耳元で囁く。


「レディーの口をハンカチで拭ってあげた方が良いですよ」


そう言って密かに渡す白いハンカチ。


「ミーア嬢、口元についているぜぇ」


チャールズは全てを察して優しくミーアの口元を拭う。それには悪役令嬢も顔を紅潮させた。


「レナンジェス…我の口元も…」


「はい、これで綺麗になりましたよ」


レナンジェスは作り笑いでライディースの口元をハンカチで拭った。それに赤面するライディース。


「君達もほら」


続けざまにヒューイとドゥーイの口元を拭うと2人は嬉しそうな顔をした。




それから皆で公園の花壇を見ながら散歩する。温かい陽気の中で花の香りを楽しむのも悪くはない。


(それにしてもチャールズはやるな)


何しろ段差や水溜りがある度にミーアに手を差し伸べるのだ。これぞ紳士の対応であろう。


(それに比べてこの人は…本当にギャップ萌えファンに謝って欲しいね!)


ライディースは逆にミーアと同じ扱いをレナンジェスに求めるのだ。レナンジェスは仕方なく手を毎回差し伸べている。しかし本音は美少女にそれをするかイケメンに姫様扱いされたいである。


(女性扱いされて嬉しいのは前世が女だったからだからね!ゲイ術愛好家と勘違いしないでよね!!)


心の中で声を大にして叫んでいた。


「それにしても今日は良い天気ね」


ミーアが髪をかき上げながら口にする。


(トキメイていますな。チャールズは絶対にミーア嬢の色気にトキメイていますな!顔が赤いし鼻の下が伸びているぞ!まあ…私もドキッとしたけど)


こう見ると彼女が悪役令嬢の意味が無いように思えた。むしろ彼女を袖にした俺様王子は女を見る目が無いのだと改めて感じるのであった。

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