第20話 商業区の幽霊 正体は


 結局おやすみの日は冒険者さん達と商業区を見て回り遊んで帰ってきました。

 幽霊さんを探しに行ったはずだったのですが……



『結局、幽霊のこと有耶無耶になってません?』

『幽霊とミィスちゃんのゴスロリ。どっちが大事かね?』

『『『ゴスロリです!!!』』』

『だろう?まぁ幽霊の件はこっちでカタをつけてもいいんだが……』

『あれ?何か乗り気じゃないですね?』

『どうせなら幽霊をミィスちゃんの家に連れて来たいのだよ』

『は?』

『さて……何か名案はないか……』



 わたし達が商業区に行ってからもしばらくは幽霊の話は聞こえてきていましたが、やがてそれも次第になくなりました。

 冒険者さんの話では、ある日急に幽霊が出なくなったそうです。

 噂では成仏したとか王国の偉い神官さんが除霊したとか色々あるみたいです。


「幽霊さんには会ってみたかったんですけどね」

「ははは、ミィスちゃんが行くほどでもなかったってことだよ」

「そうそう」

「俺たちとしては一緒に遊びに行けたから充分だよな」

「ミィスちゃんのゴスロリも見れたしな!」

「「「うん、うん」」」

「もう!皆さんたらっ」


 酒場は今日もいつもの冒険者さん達で賑やかです。



 深夜まで冒険者さん達の相手をしてわたしは真っ暗な道を小屋に向かって歩いていました。


「あれ?なんでしょうか?」


 ふと見るとわたしの少し前に白いフワフワしたものが漂っていました。


「もしかして……幽霊さんですか?」


 その白いフワフワしたものは、わたしの問いに答えるようにわたしのほうに漂ってきました。


「魔力がなくても幽霊さんは見えるんですね」


 フワフワはわたしの目の前に浮かんだまま何かをするでもなくじっとしています。

 そんなフワフワにわたしは恐る恐る手を伸ばしてみました。


「……触れる?」


 フワフワは見た目の通りフワフワで綿のようです。



『あれが幽霊の正体ですよ』

『あれって、フワフワした白いのですよね?』

『まぁ見てなさい』



 わたしはそぉっとフワフワを撫でてみます。

 ふふっ、フワフワで気持ちいいです。


 すると突然フワフワは地面にポトリと落ちてしまいました。


「えっ⁈大丈夫ですか?」


 わたしは慌ててしゃがんでフワフワを抱き上げました。

 すると……


「…………?」


 フワフワの中から掌に乗るくらいの小さな女の子が出てきたのです。



『会長、あれってもしかして』

『そう、家妖精だな。俗に言うブラウニーだ』

『どうしてブラウニーが?』

『話せば長くなるが……』

『じゃあいいです』



「えっと?あなたは?」


 小さな女の子は、キョトンとした顔で小首を傾げてわたしを見ています。


「あなたが幽霊さん?」


 コクコクと頷く小さな女の子。

 わたしが笑いかけると女の子も笑ってくれてちょこちょことわたしの腕をよじ登り頭の上に寝転がりました。


「ふふふっ可愛いですね〜幽霊さん」


 女の子は特に何かをするわけでもなくわたしの頭の上にいます。


「わたしのお家に来ますか?」


 頭の上は見えませんが、何故だか女の子はわたしのお家に来るって言ってるように思いました。



 こうしてわたしのお家に新しいお友達が増えました。

 冒険者さんに聞いたところ、女の子は家妖精だそうで古い家屋に住み着く妖精だそうです。

 何かの事情で住んでいた家を失くして彷徨っていたみたいです。


「小さい小屋ですけどよろしくね」


 窓際の植木鉢に腰掛けた女の子にわたしは改めて挨拶をします。

 女の子は小さな手を出してわたしと握手をしました。


「あなたのお名前はなんて言うのかしら?」


 女の子はよくわからないといった顔で首を振りました。



『家妖精に名前ってあるんですか?』

『ないんじゃないか?そもそも、そんなホイホイと出くわすもんじゃないしな』

『それもそうですね』

『説明すれば長くなるが……』

『会長、結構です』


『…………』



 お名前がないとかわいそうなので、わたしは女の子に「クルル」と名付けました。


「ヨロシクね、クルル」









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