第10話 討伐遠征7日目
一夜明けて冒険者の皆さんがテントを片付けて野営の後片付けをしている頃、わたしは今日のお昼に食べるサンドイッチを作っていました。
『会長!緊急連絡!ワイバーンが一体上空を旋回中!こちらを発見した模様です!』
『何!40番!絶対防御魔法展開!64番!65番!狙撃準備!』
『絶対防御魔法展開!』
『こちら64番配置につきました』
『同じく65番配置につきました』
そんな時でした、急にわたしの周りに光り輝く障壁が展開されたのです。
「皆さん!何かが近づいています!注意して下さい!」
わたしの周りの光は確か何でも跳ね返す障壁だったと記憶しています。
ということは何か危険が迫っているということなのでしょう。
「歌姫様!一体何が?」
「おいっ!あれを!」
冒険者さんが指す方を見ると巨大な影が近づいてくるのが見えました。
「ワイバーンかっ!歌姫様を守れ!他のものは迎撃しろ!」
ナスカさんが大剣を構えて走り出します。
「わたしも……」
「歌姫様は危険ですので隠れていて下さい!」
「でも……」
わたしには心強い友人達が一緒です。わたしが行った方がいいのではないでしょうか。
「たまには俺たちにもいい格好させて下さいよ」
冒険者のおじさんはそう言ってニコッと笑いました。
『ほぉ、中々に見所のある連中ではないですか』
『いかが致しますか?会長』
『64番65番は配置についたまま待機。6番はあの剣士の援護』
『『待機します』』
『会長、いいんですかい?』
『漢気を見せてくれた礼はするべきです』
『そうかい、なら仕方ねぇな』
そうしている間にもワイバーンはぐんぐんと近づいてきます。
「弓を射て!翼を狙うんだ!」
「魔法使いは牽制でもいい!ただし炎は使うなよ!」
グルアァァァァァ!!!
冒険者さんたちのすぐ上にワイバーンが迫り威嚇の咆哮を放ちました。
「くそっ!降りてきやがれっ!」
ナスカさんが大剣を振り回します。
「へ?」
すると振り回した大剣から斬撃が飛び出してワイバーンに向かっていきました。
「あれは……」
あれは確かわたしもよく使わせて頂いている空飛ぶ斬撃です。
流石Aランクの冒険者さんです。
「これは……歌姫様の空飛ぶ斬撃?」
ナスカさんが何かを呟いてわたしの方を振り返ったのでよくわかりませんが頷いておきました。
「歌姫様が俺に力を……」
「おい!あんた今のは?」
「歌姫様が俺に力を貸してくれたんだ!みんな俺が撃ち落とす!」
ナスカさんは大剣から斬撃を無数にワイバーンに向けて飛ばします。
グルアァァァァァァァァ!
翼を切り裂かれたワイバーンは堪らず地面に降りてきました。
『中々やりおるな』
『そうですね、特にあの剣士は見所があります』
「うおりゃあっ!」
「せやぁ!」
「頑張れ!もう一息だ!」
地面での戦いではワイバーンも満足に動けないようでやがて冒険者さんたちの前にその巨体を横たえることとなりました。
「はぁはぁ、やったか?」
「一応トドメを……はぁはぁ」
ナスカさんがトドメをさして無事にワイバーンの討伐をしたみたいです。
冒険者さん達は大歓声を上げ剣を掲げて喜んでいます。斬撃もまだまだ飛んでます。
「皆さん!すごいです!やっぱり冒険者さんはすごいんですね!」
わたしが皆さんにそう声を掛けると何故だか皆さん微妙なの顔をしました。
どうなされたのでしょうか?
「ま、まぁな、ちょっと本気を出せばあれくらい……なあ?」
「え?お、おう、ら、楽勝だぜ……だよな?」
「ん?あ、あ、当たり前じゃないかーあははー」
皆さんの目が泳いでいるのはわたしの気のせいでしょう。
「しかし、この辺りまでワイバーンが飛んでいるとなると警戒しないとな」
「ああ、そうだな。いきなり上から襲われたらたまったもんじゃないからな」
この一件もあり、わたしたちは辺りを警戒しながら山を登って行きました。
「なあ?」
「どうした?また何か気になったのか?」
「お前は気にならなかったのか?」
「何がだよ?」
「……何でこんな山ん中に御食事処があるんだよ」
「……さぁ?新規開拓かな?」
山を登っている最中に道の脇に御食事処がありましたので皆さんと一緒にお昼ご飯を頂きました。
すごいですね。最近の食べ物屋さんはこんな山の中にまでお店を出しているんですか。
『54番、55番。昼食の提供ご苦労だった!17番は48番から50番を連れて建物の解体を急げ!』
『礼には及びませんよ。私達はプロですからね』
『おうし!野郎ども!さっさとバラして次行くぞ!』
『『『へい!親方!!』』』
『17番は次の予定地点を22番に確認しておくように』
『了解でっさぁ!』
「なあ?ちょっといいか?」
「何だよ?また何かあったのか?」
「いや……温泉てさ……こんなにあちこちにあるものなのか?」
「そうなんじゃないか?毎日入ってるしな」
「そっか……いい湯だな」
「ああ、ここは肌にいいらしいぞ」
「お前なんでそんなこと知ってんだ?」
「立て札に書いてあったからな」
「……立て札まであるのかよ……」
「おっ!流れ星!」
討伐?はまだまだ続く。
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