エセ業者、恐ろしい……。

 その名をセコという。

 カッパに似ている。いぎたなし。

 2019年5月4日土曜日09時57分。

 リビングのテーブルにつき、母がお茶を淹れる。

 絶対なごやかにとはいくまい。危険な顔つきをしている。

 牛乳を飲みつつ、それを眺める。

 不備のある請求書で、ケンツクやっても仕方がないじゃないかと思うのだがどうだろう。

 総額200万円以上か……。

「なにをもって、名誉毀損というの?」

 両親が訊ねる。

「値切られたのが、私の職人としてのプライドをですね……」

 と変に穏やかに言うからうさんくさい。

「名誉毀損にはあたりません!」

 わたくし思わず口を挟んでしまう。

「やる気をなくさせるのは、パワハラでしょう?」

 セコ、したり顔。

 母も唖然としている。そんな法はない。

「声を荒げないで話したかったので……本来なら弁護士に立ち会って貰うのです」

 と不気味な落ち着きを見せる、セコ。

 声を荒げてしまうような話を持ってきたのだな。

 母は昨日の時点で116万5000円支払っているのに、さらに90万以上乗せてきた。

 しかも、聞けばソフトが壊れたとかで請求書が、3枚~4枚と増え続けている。

 どうして?

 わからない。

 こんな不良とつきあうからよ! 父の馬鹿!

 しばらくキッチンで暇を潰し、トイレへ行って考える。

 仕方ないよ。わたくしの両親だもの……。

 水を流してトイレを出た。

 もう、できることはない。

 両親に任せて、ひっこもう。

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