第23話 はたから見れば
「あの、魔法を使って姿を消すとか、生徒に変装して学校に潜り込んだりはできないんですか?」
三浦の質問にセレスが力なく首を横に振る。
そうだよな。そんな器用な真似ができるなら、
俺が学校にいる間、セレスは事実上何もできないって考えた方がいいか……。
内心で落胆していると、玄関のチャイムが鳴る音が聞こえてくる。
何か宅配便でも送られてきたのかと思っていると、母さんが俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「
RAINに特に書き込みもされてないし、何の用だろう。
「じゃあ、ちょっと下に降りてくる」
階段を下りて玄関に行くと、
「おう
「ああ、さっきやったカードゲームのことなんだけどな、お前が帰った後に改めてカードを確認したら、結構ダブってるのを見つけたんでお前にやろうと思ったんだよ。カードの種類が多いと、それだけ色々なデッキを作れて楽しいからな」
そう言いながら
「それでわざわざ持ってきてくれたのか。悪いな」
「いいってことよ。ところで、見覚えのない靴があるけど他に誰か来てるのか?」
「ああ、それならクラスメイトの三浦さんとウチにホームステイに来た娘がいるのよ」
「へ? 三浦がどうしてここに? それにホームステイって?」
どこか楽しそうな母さんとは対照的に、
「母さん、
「セレス?」
セレスの単語を聞いた
「セレスって、さっきお前が話してた女神のことだよな。どうして家にいるんだ?」
「それが、俺の能力で起きる騒動を抑えるためにこっちの世界に来たけど、元の世界から離れたせいで、力が弱まって帰れなくなったんだ。それで母さんにセレスが俺を生き返らせたのと、決まった家が無いのを説明して、家に置いてもらうことにしたんだよ。恩もあるわけだし」
「事情は分かったけど、肝心の能力は何とかなったのか?」
「いや……それが全然。それと、能力の話はまだ母さんにしてないんだ。……やらかしの規模がでかすぎるから言うに言えなくて」
俺を生き返らせたセレスに、母さんが凄く感謝していた手前、その俺が首都上空で大爆発を起こして世界中を騒がせた。と言う度胸は俺には無かった。
「どうしたの? 2人でコソコソと」
「いやー、
母さんの問いに
「それならセレスちゃんに挨拶していったらどう? 当分ウチに住むから、これから会うこともあると思うし」
「そっすか、じゃあ挨拶していきまーす」
成り行きで
× × ×
「しかしセレスがお前を生き返らせたって話をおばさんが信じたのもそうだけど、よく家に住ませる許可なんてもらえたな」
「母さんが腰痛だったから、実際に回復魔法を掛けてもらったんだよ。それと、俺が車にはねられて死んで、その後に生き返ったのも母さんは知ってたからな。だから思ったよりも話はスムーズに進んだ」
「そうだったのか。……ところで三浦がいるのは何でなんだ?」
「……セレスがウチに来て実際に回復魔法を掛けたって話をしたら、こっちに来るって聞かなくてな」
「そりゃ、厨二病でオカルト好きな三浦にそんな話をしたらそうなるだろうよ」
セレスと三浦がいるので一応ノックしてからドアを開けた。
「マサヤ、そちらの方は?」
「俺の友達で名前は
てっきり
どうしたのかと思い
「お、おい女神ってどんなものかと思ってたけど、セレスさんすっげえ美人じゃねえか……」
「あ、ああ。そうだな……」
俺に顔を近づけて話しかけてくる
というか、セレスに対する呼び方が、さん付けにいきなり変わってるぞ。
そういえば、俺も初めてセレスを見た時は凄いドキドキしてたな。
その後のポンコツぶりやら、余計な能力を渡されたせいで、そんな感情はどこかにいってしまったが。
「……おばさんがホームステイって言ってたけど、つまりお前とセレスさんがこの家で一緒に暮らすってことだよなあ?」
「そ、そりゃ、そうなるけど……」
「俺はな、お前が能力のせいで散々苦労していて、ゲームもロクにできない悲惨な状態だと思ったから、わざわざカードを持ってきたんだ。それなのに、あんな美人と1つ屋根の下で生活できるなんて、悲惨どころかリア充そのものじゃねえか……」
「い、言いたいことは分かるけど、落ち着けって、な?」
怒るのも仕方がないかもしれないが、だからって首を絞めようとするのはやめてくれ。
「あ、あの、カズキさん?」
セレスが戸惑った声を上げると、
「あ、始めまして!! 俺、
セレスを前にした
それにしても、セレスに協力するとか軽はずみに言っちまって本当にいいのか。
「あ、はい。ありがとうございます。ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、こちらこそよろしくお願いしますね」
「はい!!」
セレスがそう答えて微笑むと、
きっと
それは間違いじゃないが、もの凄いポンコツだぞ。その女神は。
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