第二章
第15話 聖也の決意
「なあ、昨日のでかい光が出現したってニュース知ってるか?」
「知ってる、知ってる。高さ数十メートルもある光の柱がいきなり現れたやつだろ。自然現象とは明らかに違っていたし、人工物にしても光が強すぎる奇妙な現象だったって聞いたぜ。ほんと最近はおかしな事件が続くよな」
登校している途中で、俺が放った必殺技について男子同士が話してるのが聞こえてくる。
昨日の出来事は案の定ニュースに取り上げられていた。
突然巨大な光の柱が発生したのを目撃して発生源にたどり着いたら、円形の焼け跡だけが残されていたために、宇宙人がやって来た
化け物を倒すためとはいえ、また世間を騒がせたわけだが、大きな被害は出ていないし、世間を不安には
何か俺、感覚がマヒしてきてないか? 気のせいだよな、気のせいだと信じたい。
「おはよう吉村君」
名前を呼ばれて振り返ると、三浦が小走りをして俺の横にやって来た。
「ああ、おはよう……どうかした?」
俺が挨拶を返していると、三浦が不安そうな表情で俺を見てくる。
「ねえ、体調は大丈夫? どこか具合の悪いところとかない?」
「特に問題ないけど。何で?」
「昨日の時点では大丈夫でも、次の日になって何か症状が出てないか気になったの。でも何ともなさそうでよかった」
俺の返事を聞いて、三浦がほっとした様子を見せる。
そうか、最初は何ともなくても後で身体に影響が出る可能性を見落としていた。
「俺は身体が頑丈になってるからいいけど、三浦の方こそ何ともない?」
「私は大丈夫。でも吉村君の場合は、怪物の攻撃を受けただけじゃなくって、召喚や怪物を倒すのに結構魔力を消費したでしょ。だからその反動があるんじゃないかと思って」
「いやー、そんな反動も特にないから大丈夫。というか俺に魔力なんてあるかも分からないな。今までそれらしいものを感じたこともないし」
「えー、絶対あるでしょ。そうじゃないとあんな人知を超えた現象なんて起こせないよ」
「どうなんだろうなあ。自分じゃ分からないから何とも言えないけど」
そういえば能力を得ても魔力みたいなものを自覚したことってなかったな。普段の感覚は死ぬ前と何も変わってないし。
それなのに放つ力だけはもの凄くて加減ができないから、よりタチが悪いよな……。
そんなことを考えていると、突然後ろから俺の肩に誰かの腕が回される。
「よっ、
「うわっ!! ああ、
驚いて振り返ると、いつの間にか
「なあ、聞いてくれよ。昨日ゲームをやってた時なんだけどさ……」
「ちょっ、お、おい!!」
力を入れて抵抗するわけにもいかず、俺は
しばらく歩いて、三浦との距離が大分空いた所で
「
「どうしたも何も、お前また三浦に絡まれてただろ。だから助け船を出したんだよ。今度は昨日のでかい光と円形の焼け跡の原因がお前だって言われでもしたか?」
そうか、
「あー……そういう訳でもないんだけどさ……」
三浦はむしろ俺の体調を気遣って話しかけたんだし、ここまでする必要は無かったんだけどな。
とはいえ
「何にしても三浦にはあまり関わらない方がいいぜ。見た目は良いけど、オカルト入っててヤバイし、自分の趣味で人のことを好き勝手に振り回すだけだろ」
俺だって三浦に露骨に観察されていた時はゲンナリしていたし、三浦に対するイメージが変わったのはここ数日の話だ。
だから
「三浦はそんな自分勝手な性格じゃねえよ」
つい反論の言葉が出てしまった。しかもムッとした感じの声で。
俺の反応に、
「どうしたよ? お前がそこまで三浦の肩を持つなんて」
やってしまった。
反論すれば
「えー……っと、三浦は結構気を配るタイプなのを知ったというか……」
「どうしてそんなことを知ったんだ?」
「あ、いやそれは……」
上手くごまかそうにも、その方法が全く思いつかない。
切羽詰まった状況になり、額から冷や汗が流れるのを感じる。
「そのー……2人で話す機会が結構あったというか……」
「話す機会って、お前三浦に付きまとわれてウンザリしてたんじゃなかったのか?」
「あー……色々あってな……」
「色々? っていうか何でそんなに歯切れが悪いんだよ」
ダメだ。話せば話すほどボロが出てくる。
このままだと、俺の能力まで話してしまいそうだ。
能力――。
……ずっと先延ばしにしていたけど、
今までの騒動の元凶が俺だと知られたら、化け物扱いされるんじゃないかと思うと正直怖い。
それでもこのままズルズルと話してしまうぐらいなら、キチンと真相を打ち明けよう。
そう意を決して、口を開く。
「あのさ……
「どうしたよ」
「今日お前の家に行っていいか? 今の件も含めてどうしても話したいことがあってさ」
「何だよ改まって。話をするなら別に教室でもいいだろ。それにしばらく用事があるんじゃなかったのか?」
「悪い、用事はもういいんだ。それに教室じゃ話しにくい内容だから……頼むよ」
少しの間
「まあ構わねえけどよ。じゃあその話は家でな」
「ありがとうな、
それだけなのに、不安になった心が落ち着く気がしたのは何故だろう。
学校にいる間、
……何だかんだ言って
後は俺が一歩を踏み出すだけだ。
結果はどうなるか分からないけど、今まで言えなかった俺の能力について必ず話そう。
昼休みになったところで、三浦にRAINを送る。
俺の能力を知っていても黙ってくれている三浦には、
『報告なんだけど、学校が終わったら
『そうなんだ、分かったよ』
『それで、ちょっと三浦に頼みたいことがあるんだけど』
『頼みたいこと?』
少しためらったが、
『それは構わないけど、本当にいいの?』
『いいよ。そうするって決めたから』
『分かった。じゃあすぐに送るね』
よし、これで準備ができた。後は放課後を待つばかりだ。
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