第5話 聖也覚醒!?
俺の嫌な予感は的中した。
授業中でも、休み時間でも、三浦が露骨に俺の方へ視線を送ってきている。
しかも俺を見る目は鋭く、俺が持っている力の決定的な証拠をつかもうとしている監視者を連想させた。
三浦が整った顔立ちをしているだけに、なおさら怖い。
「なあ、三浦の奴ずっと吉村を見てないか?」
「だな。でもあの目つきは、どう考えても恋愛目的じゃないよな」
「さっき闇の力とか言ってたし、三浦の厨二病に巻き込まれたんだろ」
「うわー……。吉村も災難だな……」
外見だけ見れば、三浦は学年でもトップレベルに入る。
しかし普段の三浦の奇行が知れ渡っているのに加え、俺に向けられる視線は明らかに好意とはかけ離れている。そのため、三浦の注目を一身に浴びても、周りの男達からは嫉妬どころか、むしろ俺に同情する声が聞こえてきた。
当の俺も嬉しさは全くなく、うっかり能力を発動させたらアウト、というプレッシャーがのしかかるだけで、三浦の視線にゲンナリしながら1日が終わった。
「
ため息をつきながら家に帰ろうとしていた俺に、
「お、いいねえ! じゃあ……」
早速
誘いに反射的に喜んだけど、この能力のせいで、勝手にゲームがチート状態になって、まともにプレイができないんだった……。
「……悪い。今日用事があって行けないんだ」
「そっか、じゃあ明日ならどうだ?」
「それが、しばらくは厳しいんだよ……」
「そんなに長い用事があるなんて珍しいな。まあ遊びに来れそうになったら言ってくれ」
この余計な能力を制御できないと、どこまでも足を引っ張られる。
能力を制御するために、色々試してみようと思い立った俺は、真っすぐ家に帰らずに寄り道をすることにした。
× × ×
「くそっ、やっぱり全然加減が効かねえ……」
人目につかないで練習をするために、俺は学校からしばらく歩いた所にある森に来ていた。
手近にある石を拾っては握りしめ、力を入れても能力が発動しない条件を探ってみる。
しかし、「能力発動するな!!」と言いながら石を握ろうが、能力が発動しないように念じようが、石を持っていない手に思いっきり力を入れながら、もう片方の手で石を握ろうが、強めに力を加えるたびに石が粉々に砕けていく。
それを何度となく繰り返し、気づいたら俺の周りに砕けた石が
それでも能力が抑えられる
……ああ、だんだんイライラしてきた。
こうなったら力を抑えるんじゃなくて、うさ晴らしに一度全力を出してやる。
手頃な石を拾い、力を入れようとしたところで、俺はふと思い立った。
待てよ。このまま石を全力で握りしめても、さっきと同じように石が砕けるだけだよな。
どうせなら、何か違うことをやってみるか。
……そうだな、本気で上空に石を投げると、どのくらいの時間で戻ってくるのか試してみよう。これなら周りに迷惑もかからないだろうし。
「せーの、とりゃあ!!」
俺が石を全力で真上にぶん投げすると、もの凄い勢いで上空へ飛んでいき、あっという間に見えなくなった。
さて、石が落ちてくるまでどれくらい時間がかかるかな。
そう思いながら空を見上げる。
ところが、その数秒後。
投げた石がメチャクチャな速さで急降下してきた!?
石が地面に当たると、ドゴォンと大きな音を立てて派手に土煙が上がり、土が飛び散った。とっさに手で顔をかばい、目をつぶる。
少ししてから恐る恐る目を開けてみると、石が落下したとは到底思えないような、直径数メートルのクレーターが出来上がっていた。
「何で全力で石を投げたら、ゲームの必殺技みたいな動きと威力になるんだああぁぁ!!!!」
能力を抑える方法を見つける前に、また知りたくもない能力を発見してしまった。
全力を出したら勝手に必殺技が出るなんて、悪い意味でお手軽過ぎる。
……そういえば、必殺技もいろんな種類があるけれど、流石に身体から光線とか出たりはしないよな?
あり得ないよなーと思いながらも、ちょっと不安になってくる。
俺は不安を消すために、某有名漫画の必殺技のマネをやってみることにした。
バレーボールを両手で持つ感じで手と指を広げた後、両手首をくっつけて、さらに足を広げて腰を落とす。
「か~め~か~め~波~!!」
技名を叫びながら気合を入れて両手を空に突き出した。
いくらなんでも、こんなので光線が出たりなんてしないだろ……。
と思っていたら、両手から極太のエネルギー光線が空に向かって勢いよく放たれた。
はあっ!? マジで出た!?
俺が
……まさかと思ったが、本当にあの必殺技が撃てちまいやがった。
凄まじい爆風を身体に受けながら、俺は放心状態になっていた。
爆発が収まったところで我に返り、事の重大さに気がつく。
誰かがやって来て、何かを聞かれる前に逃げなければ。
俺は大慌てで、この場から逃げ去った。
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