第41話 ペロペロペロ
四十一
ボクの手の上にある、グラデーションが美しい深紅の宝石が百合の花の台座に嵌った、ペンダントタイプのネックレス。ネックレス自体は完璧に出来ましたが、まだ完成では無いです。
「物は出来たですが、これに真贋見極めの効果を付与しないと、ですね。ですが、それだけだとやはり物足りない感じです……。ネックレスが完璧過ぎる程完璧に出来たのに、アイテム効果が品物の真贋が分かるだけって言うのは納得出来ないですね」
ネックレス自体が完成し、後はその効果を付与するだけなのに、ボクは再び悩んでしまったです。
だって……ボクからミサトちゃんにする、初めてのプレゼントですよ? しかも、サプライズ的な。
だったら、トコトン拘りたいじゃないですか……!
悩んだ末、ボクは一つの答えを導き出しました。
「そうです! 仮にもボクだって神様の端くれ、このネックレスにボクの加護的なのを付与するです!」
そうです。この世界でボクが経験した事を順を追って思い出した結果、ボクがシヴァちゃんと完全に融合を果たした事に行き着いたのです。それはつまり、ボクは神様の端くれだと自覚した事にもなりますね。
はい。人間を辞めて、この度神様の端くれとなったユーリです、よろしく。
「さて。加護を付与する事は決めたですが、どんな加護を付ければ良いんですかね? ……そもそも、加護が良く分かってないですが。まぁ、いいです。たぶん、ボクがミサトちゃんを護る的な気持ちを込めればオッケーですね! それでは始めるとするです!
『創造神としてユーリが与える。我の神威を以ちて、この物を持つ者へと祝福を贈ろう。いついかなる時も我の神威をその身に受け、我と共に生きよ……!【
はぁ、ふぅ……何だか、すっごく疲れたです……。後は真贋見極めの付与ですね。『
ボクの手には、全体的に淡い光を放つ、深紅のグラデーションが美しい宝石が輝く、白銀のネックレスがあります。完成しました。これをミサトちゃんにサプライズなプレゼントをすれば、間違いなくとっても仲良くなれるはずです!
ミサトちゃんがどの様な反応を示すか、今から笑いが込み上げて来るです……!
「ぐふっ♪ ぐふふふふふっ♡ 待ってて、ミサトちゃ〜ん!!」
扉を蹴破る勢いでトイレを出て、出来るだけゆっくりとミサトちゃんの元へと歩きます。今のボクが店内を走ると、確実に色んな物を破壊する自信があるです。
こんな時こそ、急がば回れ。焦っては事を仕損じるとも言いますし、落ち着いて行動するです。危険予知というやつですね!
トイレからミサトちゃんが居る辺りまで、およそ20m。たったそれだけの距離なのに、今のボクにはとてつもなく長い距離に感じるです。
それでも一歩、また一歩と近付くにつれ、ボクの心臓は早鐘の様に脈打ち、徐々に興奮が増して行きます。興奮し過ぎて、鼻血が出てしまうかもしれないです。……思春期の男の子の様に。
「はぁ、はぁ、はぁ……お、お待たせです、ミサトちゃん♡」
「ゆ、ユーリちゃん!? 何でそんなに血走った目で興奮してるニャ!?」
「こ、こ、こ……」
「コケコッコー……かニャ……? ゴクリ……っ!」
「こ、こ、これを受け取って欲しいです!! ぼ、ボクからミサトちゃんへのプレゼントです! ……う、受け取ってくれるですよね……?」
サプライズも何もありませんでした。
ドキドキし過ぎて、色々考えてた計画の全てが頭の中から吹っ飛んでしまったです……!
ボクからのプレゼント……受け取ってくれますよね? 受け取ってくれないと……あぁ、ダメです。それを意識してしまったら切なくなって来たです。目頭が熱くなって来たです……。
「い、いきなり言われても、そんニャに高そうなネックレスは受け取れないニャ! な、何で泣いてるニャ!?」
「だぁってぇ……ミサトちゃんがぁ受け取ってぐれないどぉボク一人で舞い上がっでぇ……悲じぐなっでぐるでずぅぅ……うわぁぁぁ〜ん、うえぇぇぇ〜ん」
受け取ってくれないというまさかの出来事に、ボクは大泣きしてしまいました。身体は人間を辞めたとしても、心は人間のまま……いや、幼い少女でした。元おっさんなのに。
ダメですね、ボクは。泣き虫を直さなければ、せっかく仲良くなったミサトちゃんに嫌われてしまうです……
――ペロ。
だらしなく大きな口を開けて泣いてしまったですが、そんなボクの頬に何かが触れた感触がありました。
「少し……しょっぱいニャ。何で泣いたかは分からニャいけど、分かったニャ。受け取るニャ、ユーリちゃんからのプレゼント。大事にするニャ」
「ひぐっ……ぐすっ……ありがどでずぅ、ミザドぢゃん……うえぇぇぇ〜ん」
頬に触れた感触は、どうやらボクの涙をミサトちゃんが舐めてくれたものだった様です。
こういう時、指でそっと涙を拭ってくれるのが普通だと思うですが、獣人は舐めるんですかね?
でも、プレゼントも何とか受け取ってくれたみたいですし、結果良ければ全て良し、ですね!
「な、泣き止んだかニャ……? それでニャんだけど、このネックレス……どこで買ったニャ? それと、どうやって首に付ければ良いニャ? 棒の様な金属のチェーンだけど、どこも外れそうにないニャ」
「あ、それは、手で広げれば伸びるです。でも、絶対に壊れない筈です! どこで買ったのかは……内緒です」
プレゼントする事に浮かれて、『ハタヤ屋』さんで買った事にするのを忘れてたです。
考え事をしたり、一つの事に集中したりすると、それ以外の事が頭から抜ける癖は直そうとしてるけど中々直らないです。ボクは学ぶ子と言った前言を謹んで撤回させていただきます。
「わっ……! ホントだニャ! 凄く良く伸びるニャ! ……似合うかニャ?」
「とっても良く似合うです! あ、一応真贋見極めの効果が付与されてるです」
「ホントに、どこで買ったニャ? でも、凄く嬉しいニャ。ありがとニャ、ユーリちゃん……♪」
何だかんだで、ミサトちゃんの喜ぶ顔が見られて、ボクとしても凄く嬉しく感じたです。プレゼントした甲斐があったというものですね!
「カミーサは何を慌てていたのかね? お嬢ちゃん達、何か知ってるかい?」
「いえ、何も知らないです」
「クラウスさんに怒られるとか言ってたニャ。ハタヤさんもカミーサの事は放っておけば良いニャ」
「そ、そうか。カミーサはまたサボってたんだな……。それで、お嬢ちゃん達は当店で何か気に入った物はあったかな? もしも気に入った物があったならば、お父さんやお母さんにお願いするか、自分で稼ぐ様になったらまたおいで」
「「分かったです(ニャ)」」
ミサトちゃんへのプレゼントが成功し、『ハタヤ屋』さんから帰ろうと店を出た時に、店主のハタヤさんに再び会ったです。ハタヤさんもカミーサさんが慌てて出て行くのを見てたのか、仲良く話してたボク達へと聞いて来ました。
それはともかく、やはりボク達の事をハタヤさんは知らないみたいですね。知っていたら、お父さん云々の話はしない筈です。
今度来た時、その辺りの事をハタヤさんに伝え、何かしらの商品の値引きを迫ってみますかね。
ともあれ、ボク達は『ハタヤ屋』さんを離れ、トキオ南区にある飲食店街へと向かいました。プレゼントの次は定番の食事です。デートって、そういうものですよね? あれ? 食事が先でプレゼントが後でしたっけ?
「あれ? あそこに居るのって、ノルド君じゃないですか?」
「ホントだニャ。知らない女の人と一緒みたいニャけど、どうしたのかニャ? 何だかノルドが落ち込んだ様に見えるニャ」
孤児院へと帰る前に、飲食店街でお昼を食べようと美味しそうな店を探している時、通りのど真ん中で知らない女の人と居るノルド君を発見しました。
ドワーフのノルド君と一緒に居る女の人は、いったい誰ですかね? もしかして、ノルド君の彼女さんだったりするんですかね。でも、彼女さんだとしたら、ノルド君の暗い表情に説明が付かないです。
それにしてもあの女の人……どことなくノルド君に雰囲気が似てるです。ドワーフの女の人なのかもしれないですね。
「キャロラインさんは、冒険者ですか……。僕の夢は……儚く散りました」
「……ん。一応……Aランク。……ドワーフの冒険者は……結構居る。だから……頑張れ……!」
何となく気になり、ノルド君達が居る所へと近付いたら、その様な会話が聞こえました。
話から察するに、どうもキャロラインさんはドワーフの冒険者みたいです。
しかし、キャロラインさんが冒険者だと、何でノルド君の夢が叶わないんですかね?
少し気まずい雰囲気ですが、話を聞いてみるです。
「ノルド、こんな所で何をしてるニャ? それに、その人は誰だニャ? 恋人かニャ? それにしては背中に大きな盾を背負ってるみたいニャけど」
ボクが気になってる事を、ミサトちゃんが単刀直入に聞きました!
……と言うか、ミサトちゃん。もう少しオブラートに包んだ聞き方って物があると思うです。でも、たぶんボクも同じ様な聞き方をしてましたね。グッジョブです、ミサトちゃん!
「ミサトさんにユーリさん。この人はキャロラインさんといって、Aランクの冒険者ですよ。それでなんですが、僕の夢はドワーフでも立派な冒険者になれるという事を証明する事だったんですが、既にキャロラインさんという立派な冒険者が居たので、僕の夢が儚く散ったのですよ」
「……私は……別に立派じゃ無い。……夢、諦めるな……! 何かあったら……訪ねて来い。じゃあ……また」
キャロラインさんは無口なのか、カタコトの日本語みたいな喋り方でその様な事を言うと、雑踏の中に消えて行きました。
何かあったら訪ねて来いって言ってましたが、どこに訪ねれば良いのか言わずに行くとは……確かに立派な冒険者とは言い難いですね。
キャロラインさんの事は良いとして、今はノルド君の事です。キャロラインさんが立派な冒険者だと、何故にノルド君の夢が叶わないのかが気になるです。聞いてみますかね……!
「そう言えば、ノルドの夢はドワーフでも立派な冒険者になるって事だったニャ。でも、ドワーフの冒険者なんて当たり前に居るニャ。ノルドの中で立派の基準は分からニャいけど、それが何で夢が散るニャ?」
またしても、ボクの代わりにミサトちゃんが聞いたです。ボクの心を読んでるんですかね、ミサトちゃんは。だけど、グッジョブです!
「僕の中での立派の基準は『正式に認められた』という意味です。立派の基準はともかく、二人も知っての通り、僕は孤児としてトキオの街へと流れて来ました。僕の故郷はトキオの南の端にある『悪魔の通路』近くの地下にあるドワーフの集落ですが、その集落ではドワーフの冒険者は居ないと聞いていました。トキオに着いてからも、今までドワーフの冒険者を僕は見た事が無かったんです。だからこその夢だったんですが、そうですよね。ミサトさんの言う通り、この広い世界の中でドワーフの冒険者なんてたくさん居ますよね。……新しい夢を探してみます」
「が、頑張って、ノルド君……!」
「……適当に頑張れニャ」
ボク達の言葉を背に、ガックリと肩を落としながら歩き去って行くノルド君。応援してるので、是非とも新しい夢を見つけ、そして頑張って欲しいです!
……ミサトちゃんのクールな言葉は聞かなかった事にするです。猫の獣人だけに、猫の習性が出てるんですかね? ミサトちゃんは。
興味が無い事には無関心だし、興味が向けば凄く熱心になるです。今はボクに興味を向けてるから積極的にボクに関わろうとしてますが、興味が失せた途端に離れて行かれたら、ボクは一週間は泣ける自信があるです。
そんな事は嫌なので、ミサトちゃんの興味が失せない様に、ボクも精進が必要ですね……!
ノルド君と別れた後、ボク達は美味しそうな食べ物屋さんを探して飲食店街を転々としたですが、美味しそうな香りが漂うお店には長蛇の列が出来ていたので諦め、それを数回繰り返した所で、結局探すのは止めて『マレさん家』に行く事にしました。
何度か列に並ぼうかとも思ったですが、その香りを嗅ぎながら並ぶのは拷問的だと感じたので諦めたです。まぁ、いくら美味しそうな香りがしていても美味しいとは限らないし、味で言うならばマレさんの料理に敵う人は居ないと思うので、マレさんのお店で食べるのが正解ですね。
「という訳で、マレさん、来たです!」
「マレさん、来たニャ!」
相変わらずのカランカランという小気味良いドアベルの音と共に店内へと入り、ボク達は大きな声でマレさんに来店した事を告げました。
「何が『という訳』なの? まぁいっか! いらっしゃい、二人とも! 丁度良く来てくれたわね……!」
白地のコックコートを着て、厨房から顔を覗かせたマレさんはそう言いました。腕まくりをしている姿に萌えたのはミサトちゃんには内緒です。せっかくプレゼントが成功して二人の仲が近くなったのに、マレさんにそう思った事がバレたら、また二人の距離が離れてしまうです。そんなアホな事はしませんよ、ボクは。
「何が丁度良いニャ?」
「ふふーん♪ 当然、試食よ! たった今、新作が出来た所なのよ! 二人には実験台になってもらうわよ?」
「新作ですと!? それは是非とも食べたいです!」
「さっすが、ユーリちゃん! そう言ってくれると思ったわ♪ 直ぐに出すから、二人ともカウンター席に座って待ってて!」
新作とは楽しみです! 前回、『カレー』が新作として出て来た時は驚いたですが、今回の新作とは? 期待してますよ、マレさん!
「新作って、まて辛いやつかニャ……? ユーリちゃんは『カレー』の時に美味しそうに食べてたから良いけど、あたしは辛いのは苦手ニャ。それと、熱いのも苦手だニャ。あたしの舌に合わせた料理が出てくれば良いんニャけど」
カウンター席に座り、マレさんの新作を待っている時にミサトちゃんは心配そうにそう言いました。
「香りからして、きっと辛くないから大丈夫だと思うです、ミサトちゃん。マレさんの事だから、何度も辛い新作料理は作らない筈です」
ボクはミサトちゃんにそう返したですが、ボクにはマレさんの作る新作が何なのかの予想は出来てるです。香りから察するに、それは恐らくシチュー系の新作です。
シチューと言えば、このトキオを含むハポネ王国でもポピュラーな定番料理ですが、マレさんの事だから驚く料理へと変貌を遂げてると思うです。早く食べたいですね……!
「お待たせーっ! 題して、『シチューで食べるパスタ』よ! 熱々だから、ちゃんとフーフーしてから食べるのよ?」
「「分かったです(ニャ)! いただきます!」」
ボク達の前に出された『シチューで食べるパスタ』ですが、見た目は普通のクリームパスタです。何が新作なんですかね?
「ふー、ふー……チュルチュルチュル。モグモグ……ゴクン……。う、美味いニャ! 熱々なのがあたしにはちょっと辛いけど、それでも次から次に食べたくなる味ニャ!」
ボクが見た目を気にしていたら、ミサトちゃんがさっそく食べてそう言いました。本当に次から次へとフーフーしながら食べるミサトちゃんに驚きです。余程、美味しかったみたいですね。
それではボクもいただくとするです!
底の深い平皿に盛られたクリームパスタを、用意されていたフォークで絡め取り、スプーンの上でクルクルと巻いてから軽く冷まして口へと入れました。
「こ、これは……! 美味しーですぅーっ!!」
普通のクリームパスタと思っていたさっきのボクを、力一杯殴り飛ばしたいです!
一見すると普通のクリームパスタの味は……濃厚な『とんこつラーメン』その物でした。
ですが、とんこつラーメン特有の臭みは無く、しかもシチューと言うだけあって、甘さもしっかりとあります。オーク肉やじゃがいもなどの具材もゴロゴロと入ってますね。
そしてパスタについてですが、正直に言って、ラーメンの麺その物です。恐らくはマレさんが自分でコネて作ったとは思うですが、自作だからこその絶妙なちぢれ具合がシチューを絡め取り、口の中で渾然一体の美味さへと変わって行きます。天才ですね、マレさんは。
ミサトちゃんが夢中で食べるのも頷けますね。ボクも食べる事に集中します。……と思ったら、既に食べ終えてました……!
「ごちそうさまです! 最高のラーメンでした!」
「本当に美味しかったニャ!」
「カレーに続く自信作だったからね。……所でユーリちゃん。その『ラーメン』って何なの? この料理の事……知ってたの? 私が初めて作ったと思ってたんだけど……?」
何ですと!?
……あ! しまったです! 夢中で食べてたものだから、昔の癖で思わずラーメンと言ってしまったです!
何と誤魔化せば良いか。カレーの時は華麗な味というダジャレで切り抜けたですが、今回のラーメンでは上手いダジャレが思い浮かばないです……!
――ペロッ。
誤魔化す事で頭を悩ますボクの頬に、再び何かの感触がありました。いや、頬よりも口元に近い位置です。その感触を既に知っているだけに、ボクの胸はドキドキとしてしまいました。
「マレさん。ユーリちゃんが何でラーメンと言ったのかは分からニャいけど、きっとそんな名前が浮かんで来たんじゃニャいかな? カレーの時もユーリちゃんが名付けたから大ヒットしたニャ。だから、今回もユーリちゃんの言う『ラーメン』って名前にすれば良いと思うニャ」
「そう言えば……そうだったわね。で、やっぱり突然浮かんだの? その『ラーメン』って名前」
「そ、そうです! ボク、記憶喪失なので、たぶんですけど、突然口から出たです! 自分でビックリしてるです!」
口元をペロッと舐められてドキドキしてるボクを、ミサトちゃんが見事に救ってくれました。これもプレゼント効果ですかね?
ともあれ、ボクはその言葉を切っ掛けにしてピンチを切り抜ける事に成功したです。ありがとです、ミサトちゃん!
しかし、どうしてボクの口元を舐めたですかね、ミサトちゃんは。
「そう言えば、ミサトちゃんは何故にボクの口元をペロッとしたですかね?」
「い、いや、あの、その……ら、ラーメンの汁が付いてて、お、思わずだニャ……!」
「ふーん。そういう事かぁ。あ、気にしないで? 私の独り言だから」
ボクの質問に何故かどもりながら答えるミサトちゃんを見て、何故か納得顔のマレさん。ボクの知らない理由があるという事ですかね、獣人の掟的な物が。その内、調べておくとするです。
「今度、もっとバリエーションを増やしてみるから、その時を楽しみにしててね!」
「「ご馳走様でした!!」」
ドキドキした試食デート(?)を終え、後は孤児院へと帰るだけです。
何だかんだで、『ハタヤ屋』さんでカミーサさんに捕まってた事で時間が押し、その後のノルド君との会話を挟み、『マレさん家』で試食を終えたのは午後三時過ぎです。
プレゼントを創ったり、大泣きしたり、ペロッとされたりで、中々に疲れた一日となりました。時刻的には少し早いですが、孤児院に帰ってお風呂に入り、明日からの学園の授業に備えて早めに休むとするです。
――などと思っていたボクが間違いでした。
その後のお風呂では……
「うひゃう!? と、突然背中を擽らないで欲しいです、ミサトちゃん!」
「やっぱり、少し塩分を摂り過ぎだニャ……。あ、ごめんニャ! そ、その、ユーリちゃんの背筋が真っ直ぐで綺麗だから触りたくなったニャ……! あたしは猫の獣人だから少し猫背ニャ。気にしてるニャ」
「塩分……?」
「な、何でもないニャ!」
……とミサトちゃんに背中を擽られた後ミーナさんを撃退し、夜寝る前にもミーナさんの襲撃に遭いました。
今日は何故かミサトちゃんがボクの部屋まで着いて来てくれたので、ミーナさんはミサトちゃんを見た瞬間に逃げました。これもプレゼント効果ですかね? ミサトちゃんがボクを守る様にしてくれるのは。
「それではおやすみです、ミサトちゃん」
「うん……おやすみニャ、ユーリちゃん……」
扉の前で挨拶をした後に扉を閉め、ボクはベッドへと入り、そのまま寝ようとしました。
「ゆ、ユーリちゃん……! あ、あの、その……い、一緒に寝ちゃダメかニャ……?」
しかし寝ようとした所で再び扉が開き、ミサトちゃんがモジモジしながらボクにそう聞いて来たです。これもプレゼント効果だとしたら、効果てきめん過ぎだと思うです。すっごく嬉しいですが。
「ミサトちゃんならオッケーです。ミーナさんは色々と怖いから嫌ですけど」
「ひ、酷いわ、ユーリちゃん……! あ!」
「ミーナは改めて追っ払ったニャ! ……あ、ありがとニャ、ユーリちゃん……!」
追い払った筈のミーナさんがボクの部屋にいた事には驚きましたが、とにかくこうして、ボクとミサトちゃんのデートは一緒のベッドで寝る事で終わりを迎えました。
――ペロッ♡
「み、ミサトちゃん!? あ、そ、そこは……!」
「もう、我慢の限界だニャ……!」
プレゼント効果は抜群でした。ボクは……ペロペロ天国を味わったです♡
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