第30話 ブラッドドラゴン
三十
「お待たせしたです、シュテン。アクアも塩の精製お疲れです」
『2』の扉の先の広間、シュテンを倒してその魂を吸収した広間はモンスター部屋となっていたです。モンスター部屋とは、以前にも説明したですが、ある一定の期間で魔物が大量に湧くダンジョン特有の現象が起こる広間の事ですね。
その広間でオーガのお肉を一体分、およそ70kg程を確保してきました。身長が3m程もあるオーガの重さは約300kgですが、食べられる部分は四分の一程度なのです。……骨はかなり重いし筋肉の部分も硬くて噛み切れないしで、その分食べられる所が少ない訳です。まぁ、その重さが凶悪な打撃力の源となってるみたいですが。
それはともかく、湧いたオーガの数はおよそ百体。ゴブリンロードだったシュテンを倒した時はゴブリンが一万体程出て来たので、それから比べれば圧倒的に楽でした。
まぁ、『
「ユーリ様に
『ご苦労さま、ユーリちゃん! ところで、今更なんだけどー、ユーリちゃんって魔力切れってならないの? シュテンの召喚の事はよく分からないけどー、普通だとワタシ達精霊の召喚ってー、召喚してる最中はずーっと魔力を消費し続けるんだよ?』
今更……ですか?
本当に今更、アクアがボクの魔力について心配そうに聞いてきたです。
ですが、およそ三ヶ月の間、ずっとアクアを召喚し続けた事でボクの魔力が無限である事の証明が出来たと思うです。しかもその状態で神級魔法も連発してたので、より確かですね。魔力切れという物を一度は味わってみたいものです。……その辺の魔法使いのジョブの人に言ったら怒られそうですが。
「魔力は自信があるです! それよりも、いよいよ次で最後です。何かアドバイス的なのはあるですか?」
魔力には自信があると言うボクの言葉に納得顔のアクアとシュテン。二人ともうんうんと頷いて、何やらボクよりも自信満々といった表情をしてるです。何故にボクよりもそんな顔が出来るですかね? 不思議です。
……それよりもアドバイスは?
「拙者からは何もござらんな。あの水晶の魔物を難なく討伐なされたユーリ様に、もはや敵は居る筈も無い」
『あぁ、あれはユーリちゃんのファインプレーだったよね! 敵の攻撃を跳ね返すだけじゃなくって、更に倍の力に増幅させるんだもん。ワタシがユーリちゃんの敵じゃなくて本当に良かったって思うよ!』
シュテンとアクアが言ってるのは、『4』の扉……『4』の試練の事ですね。出て来る魔物がクリスタルゴーレムばかりの。しかも、ボスでもあるキーモンスターがダンジョンそのものなどと言うふざけた大きさだった試練。あまりのスケールに、討伐した後は言葉も無かったです。
「アクア。ボクを褒めても出るのは御褒美じゃなくてお小水だけですよ? たまに大きい方も出るですが」
「……」
『……』
「……じょ、冗談はともかく、あれはその現象を知っていたから応用出来たです」
ボクの冗談に無表情になるシュテンとアクア。そこは是非ともツッコミが欲しかったです。
しかし、ツッコミが無いと切ないですね。かつての世界でのピン芸人の頑張りが凄かった事に、今更気付いたボクでした。
ツッコミ云々から話を戻すですが、『4』の試練の道中を簡単に攻略する事が出来た応用とは、結界魔法に『ゴム』のイメージを付与した事です。
ゴムと言えば輪ゴムなどを想像すると思うですが……って、誰です!? 明るい家族計画の薄いゴムを想像したのは!?
……コホン。ボクがイメージしたのは衝撃を吸収する方のゴムでした。建築現場にて、地震などから家を守る耐震設備として有名ですね。しかしそれだと、敵の攻撃を吸収するだけで、とても跳ね返す事なんて出来ないです。
ならば、どうしたのか。
次にイメージしたのは『スーパーボール』です。子供の頃地面に投げては、どこまで高く跳ね返るかを競って遊んだものです。懐かしいですね。
懐かしさはともかく、衝撃吸収とスーパーボールの弾力。その二つを結界魔法の障壁の中で組み合わせたのです。
初めは上手くいかなかったです。クリスタルゴーレムの攻撃の威力を吸収する所までは上手くいったですが、跳ね返す所までは行かなかったのです。
何度試行錯誤しても上手く行かないので、そこでボクはイメージを少しだけ変える事にしました。
それまでイメージしてたのは、硬いゴムです。実際、耐震ゴム……を知ってる人は少ないですね。耐震ゴムはともかく、スーパーボールは硬いですよね?
だから、その硬いイメージを柔らかくしてみたのです。すると、それまでと比べて多少跳ね返す事が出来ました。
そこまで出来たら後は簡単。色々と調整を加える事で見事に跳ね返す事に成功したです。
……それじゃ、倍の力で跳ね返した事にはならないだろうって?
そこはボクの無限の魔力で補ったです。
絶えず結界へとマナを流し続け、結界に当たった攻撃を跳ね返す時に、その跳ね返す力へとボクのマナを上乗せしたです。その結果、クリスタルゴーレムは自らの攻撃によってものの見事に自滅しました。
新たに出来たボクオリジナルの結界魔法。名付けるならば『
しかしそのリベリオンバリア、やはり初めは失敗しました。殴る事しかして来ないクリスタルゴーレムからの攻撃でさえもタイミングを取るのが難しかったのです。
ですが、そこは昔取った杵柄。……若い頃にパチスロをこよなく愛したボクだからこそ、しっかりとマスター出来ました。何でも経験しておくものですね!
その様に結界魔法を改良し、次々と出現するクリスタルゴーレムを文字通り跳ね除け、果てしなく続くと思われた水晶の通路の最奥。そこで出会ったのが巨大過ぎる程巨大だったキーモンスター……『神龍』の核とも呼べる真紅のブラッドドラゴンでした。
今は『11』の試練までを攻略してますが、何だかんだでその神龍が一番厄介でしたね。何せ、名前に『神』の文字が入ってますから。そこら辺の魔王を相手にするよりもよっぽど大変でした。
☆☆☆
――オオ……ォォ……オォ…………ォ……ォン…………
「リベリオンバリアのお陰でクリスタルゴーレム達はもはや楽勝ですが、この水晶の回廊はどこまで続くですかね……」
ボクの計算が間違ってなければ、今、リベリオンバリアの反射で倒したクリスタルゴーレムで596体目です。いい加減、クリスタルゴーレムばかりで飽きたです。リベリオンバリアを維持してるだけなので、楽と言えば楽ですが。
それでも同じ敵ばかりというのは心が折れそうになるです。……既に折れてるかもですね。
「拙者の本来の力が発揮出来ず、申し訳ありませぬ……」
『でも、さすがユーリちゃんよね! あの方の試練なのにこんなに簡単に行くなんて。……まぁ、ユーリちゃんこそがあの方の本来の姿だから当たり前か』
「え? 最後は何て言ったです、アクア?」
『ん〜ん。何でもないよ!』
心が折れそうになる中、言葉通りに肩を落とすシュテンに、ボクを褒めるアクア。アクアの言葉の最後はゴニョゴニョと小声で聴き取り辛かったですが、あの方というフレーズは聞こえたです。
まぁ、アクアはその『あの方』とやらに命じられてボクを手助けしてくれてるし、そもそもこのダンジョン自体が『あの方』とやらがボクへの試練として用意した物です。そうなれば、ボクとしては素直に試練を攻略するべきですね。
実際、この試練でボクの力はこの世界で目覚めた時とは比べ物にならない程に強くなったです。今ならあのゴリライガーでさえ軽く殴っただけで倒せる自信があるです。ゴワゴワに荒れた毛並みなので殴りたくもないですが。
「見て下され、ユーリ様! 水晶の通路に入りし時より今日で七日目。遂に終点が見えましたぞ!」
自分の力についてや『あの方』について、そしてゴリライガー云々について考えていたら、シュテンからその言葉が聞こえました。声が弾んでる所を見ると、ボクよりもシュテンの方が嬉しそうです。
この試練に挑んでからシュテンの活躍の場が無かっただけに、早くここを抜けたかったみたいですね。心が折れそうだったのは、実はシュテンだったのかも、です。
『だけど、シュテン? 終点と言っても突き当たってるだけで何も無いよ?』
確かに終点には辿り着いたです。ですがアクアの言う通り、キーモンスターへの扉はおろか、転移する為の魔法陣さえも見当たらないです。途中で何かを見落としたんですかね。
「いや、しかし! 拙者、確かにこの奥から強大な気配を感じもうした!」
「シュテンはかつての鬼神の王。そのシュテンが気配を感じたと言うですから、きっとこの奥にキーモンスターは居そうですが……。しかし、どうすれば行けるですかね?」
ボク達はその場で悩み、あーでもないこーでもないなどの相談をしましたが、結局答えは浮かんで来ず……そのまま途方に暮れたです。
「ぬぅぅぅっ!! 苛立ちばかりが募りまする! ガアアアアアアッ!!!」
「ひぃっ!? ど、どうしたです、シュテン!?」
途方に暮れたまま何をするでもなく数時間をその場で過ごし、見落としが無いかを確認する為に一旦戻ろうとした時。シュテンが突然叫び、そして突き当たりの水晶壁を力いっぱい殴りつけました。
――グアオオオォォォオオオオオォォォッ!!!
すると、耳を劈く巨大な咆哮が発生したです。
その咆哮と同時、辺りは立っていられない程に揺れ、そして水晶の通路がウネウネと動き出したのでした。
『うわわわわわわわ!?』
「せ、拙者のせいで……! 申し訳ありませぬ!」
「ひええええっ!? で、ですが、あそこを見るです! 突き当たりだった所に人が通れる程の穴が空いたです!」
あまりの揺れに水の身体が波打ち慌てるアクアに、大地震とも呼べる程の揺れの原因を作ったシュテンの謝罪。それよりも、行き止まりだった水晶壁に穴が空いた事の方が重要です。
つまり……シュテンが感じたという巨大な気配の下へと繋がる道が開けたという事です。
しかし――
「くっ!? この大きさでは拙者には通れませぬ!」
『ワタシならユーリちゃんと一緒に入れるけど、ダメ! どうやらワタシ達は許可されてないみたい!』
より揺れが激しくなる中その穴へと入ろうとしましたが、二人の言う通り……どうやら試練を受けているボクしか入れない様でした。ケチですね……!
「仕方ないです! ボクが中でキーモンスターを倒してくるから、二人はどこか安全な所で揺れがおさまるまで待ってて欲しいです!」
「分かり申した! ご武運を!」
『頑張ってね、ユーリちゃん! うわっ!』
ボクの言葉に素直に従う二人。シュテンはさすがの身体能力で激しい揺れの中を安全な場所を探して走り去り、アクアはその後を、それこそチャプチャプと水の身体を波立たせておっかなビックリ追って行ったです。
「さて、と! ボクも頑張るです!」
二人を見送った後、穴が空いた水晶壁の中へと足を踏み入れました。するとその中は今までの縦横4m程の通路とは違い、どこか異空間を思わせる30m四方の広間となっていたです。それと言うのも、その広間は今までの水晶ダンジョンとは違い……赤黒く、どくどくと脈打つ壁や床に囲まれた場所だったからです。しかも不思議な事に、それまでの激しい揺れも収まっていました。
その広間を強いて言うならば、巨大な心臓の中ですかね。心臓の中になんて入った事は無いし、当然見た事も無いです。ですが、壁や床が脈打つリズムがドクンドクンと、まるで心音を思わせる事からそう思ったまでです。
「何か……気持ち悪いですぅ……」
『……汝がそうか。ならば、我が胎内に訪れるのも頷けるというもの。本体では無いが、見事、我を打ち倒してみよ!』
広間の気持ち悪さに気色悪がっていると、どこからともなくその声が聞こえて来たです。それと同時、どくどくと脈打つ広間の床から血の様な液体が噴き出し、次第にある形へと姿を形成していきました。
その形とは、全長が10m以上もあるドラゴン。ファンタジーやゲームの定番と言うべきドラゴンが威圧感たっぷりに目の前に出現したのです。……と言っても、外皮などが無く、見るからに恐ろしい、まるで血液で出来た様なドラゴンでしたが。
『【
「そっちから!? くぅっ!!」
見事打ち倒してみよ、と
あれだけ啖呵をきったならば、先ずはボクの攻撃を待つものと相場は決まってるです。完全に不意を突かれました。
血のドラゴン……ブラッドドラゴンの攻撃は、正に血が湧くものでした。
どくどくと脈打つ壁や床からは次から次へと赤黒い生々しい騎士槍が生え、あらゆる方向からボクへと殺到してきたです。しかも、タイミングを取れない様に不規則に。
これには正直参ったです。せっかく開発した結界魔法……リベリオンバリアでの反射が全く出来ませんでした。
「きゃああああああっっ!!! くっ……『ヒール』!」
リベリオンバリアを突破されて、血の騎士槍の餌食となるボク。女神の羽衣で覆われてない部分、手首や足首、それに頬などにいく筋もの切り傷が刻まれました。
幸いな事に傷は深く無かったので、直ぐ様唱えた『ヒール』で事なきを得たです。
しかし、クリスタルゴーレムの攻撃を容易く反射したリベリオンバリアを簡単に貫くとは、相当に強力な攻撃です……! さすがはキーモンスター。一筋縄では行かないですね!
『どうした? 戦闘とはルールに沿って行われる物では無いぞ? 【
「言われなくても分かって――!? ゴボ……ッ! うげぇぇええっ!!」
血の騎士槍を多少のダメージを負いながらも耐え抜いた所で、ブラッドドラゴンの次の攻撃がボクを襲いました。その攻撃とは、ボクの体内から夥しい量の出血を起こさせる魔法です。
その効果が現れた瞬間、ボクは口から大量の血を吐き出していたです。しかもそれは口からだけじゃなく、身体中の穴という穴から噴き出てました。
急激な大量出血に、ボクは地へと膝をつき、そのまま這いつくばってしまったです。
「ゴホッ……ゴボッ! ゲボォッ! ハァハァ……ゲェェェッ!!」
『何とだらしない……。これしきの攻撃で地に伏せるとは。汝、本当にあの方の力を継ぎし者なのか?』
身体中が自らの血で染ったボクに対して、だらしないと吐き捨てるブラッドドラゴン。その様子は、これしきの攻撃でへこたれるとは情けないといった感じです。
そうは言われましてもですね? 魔法のはずなのに、物理攻撃や魔法を防ぐ結界魔法であるリベリオンバリアが効果を発揮しないですし、そもそもあの方って誰です!?
――って、それよりも、今は何とか回復しないとダメです。さすがにこのままだと出血多量で死んでしまうです。現に、既にブラックアウトしそうな程に視界は
自らの血に
「ヌヴァー! 主の窮地はこの私めが救ってみせましょう。……【
『ぬぅ? 汝の様なスライム如きが何を言う。我の本体はおろか、今の我の足元にも及ばぬ下郎の分際で。と言うか、何故この空間に居るのだ? この場は、我と試練を受ける者のみが存在を許された空間であるのに。
――っ!? 馬鹿なっ! 我のみならず、我の本体からも我が力が抜けていくだとっ!!?』
ボクの股間より離れ、ブラッドドラゴンの前に颯爽と姿を見せたスラさんは、灰色の半透明な結界をボクとスラさんを中心とした半径3mの範囲で展開しました。まるで、美少女の危機に現れる王子様の様な雰囲気です。スライムですが。
そのスラさんを、たかがスライムと小馬鹿にしていたブラッドドラゴンでしたが、途中で明らかに動揺し始めたです。
『何故だ! あの方の試練にて、我にダメージを与えられる存在とは汝だけの筈! そのスライムはいったい何なのだ!!』
「ヌヴァー! 私の結界にて、主を苦しめている奴の力を吸収致しました。今の内に回復を」
「りょ、了解ですっ! 『ヒール!』……あれ? 『キュア!』……き、効いたです」
スラさんに促されて外傷を治すヒールを唱えたですが効かず、慌てて状態異常を回復するキュアを唱えたら効きました。どうやらあの出血は状態異常だったみたいです。キュアは体力も回復するから、出血で落ちた体力も回復しました。
今度はボクのターンですね……!
「ヌヴァー! 私が奴を抑えてる間に、主は奴に攻撃を」
「分かったです! しかし、何で攻撃すれば……。見るからに”血”ですし。普通に考えれば、燃やせば良いですかね? ならば! 『
ボクのターンと意気込んだ矢先、再びスラさんに促されました。結構せっかちですね。
スラさんに急かされるままに、術者の任意の指定範囲を1000度を超える炎で焼き尽くす魔法を唱えました。……何だか、スラさんの方がボクの主人みたいな気がしてきたです。
『我の本体は神の一柱でもある”神竜”。炎は、ダメージはおろか我を回復せしめるものなり』
「何ですと!?」
白色にもなろうかという高温の炎の中で、そう言いながら不敵に笑うブラッドドラゴン。心做しかその身体が大きくなった様に感じられるです。血で形成されてる以上、体積が増えたと言った方が適切ですかね。
それよりも、スラさんが力を吸収してくれてるのに、ボクがブラッドドラゴンに力を与えたんじゃ意味が無いです。
ならば――!
「炎でダメなら、氷です! 『
唱えた魔法は、先の尖った巨大な
ブラッドドラゴンの身体を貫いた氷柱の周りから血で出来た身体を凍結させ始め、その後、血の身体を凝結させたです。
「これでどうだ、です!」
『先程は侮っていたが、さすがはあの方を継ぎし者なり。我も些かダメージを負った様だ。だが、それがどうした? 我は、未だ健在なり』
完全に凝固した血の身体でそう豪語するブラッドドラゴン。本人(?)がそう言ってる以上、与えたダメージは本当に微々たるものかもしれないです。
ですがそうなってくると、ボクの攻撃はほとんど効かないという事にもなるです。そもそも、
どうしたものか。
「ヌヴァー! 主よ。私めを産み出された時を思い出すのです。そして奴にトドメを。私が主より得た糧により蓄えた魔力もそろそろ限界。お急ぎを!」
ブラッドドラゴンへの攻撃を悩んでいると、スラさんからそう言われたです。
言われてみれば、スラさんの張った結界の範囲がかなり小さくなり、力を吸われているはずのブラッドドラゴンの様子は余裕を取り戻しつつある様です。急がなければ、本当に不味い事になるです……!
しかし、スラさんを産み出した時……?
あの時は確か……冒険者学園のクラス分け試験で凄い魔法を唱えてやろうと躍起になり、それなら全属性を与えたスライムみたいな形の魔法にしようと思い、結果、生きてるスラさんが誕生したです。……スラさん? もう一体のスラさんを産み出してそれに攻撃させろ、と?
いやいやいやいや。いくらブラッドドラゴンの力を吸収してくれるとは言え、スラさんじゃブラッドドラゴンに決定的なダメージを与える事が出来ないです。現に、今がその状況ですし。このまま行けば、ボク共々あっさりと殺されて終了です。
スライムじゃないとすれば……あっ! 全属性ですか!
炎は回復で、氷は微妙。恐らく他の属性の魔法でもブラッドドラゴンにはほとんど効かなそうです。ならば全属性では? やってみる価値はあるです!
『その特殊なスライムもそろそろ限界の様だな。その力を吸う厄介な結界が失われた瞬間、あの方には申し訳ないが汝の命を終わらせよう。その方が
「ボクを倒した気になるな、です! はぁぁぁぁあああああっ!!」
ブラッドドラゴンの戯言を否定し、ボクは集中し始めました。
無限の魔力をブラッドドラゴンを消滅させる程の膨大なマナへと変換。それと同時に、炎、水、風、土、雷、氷、光、闇の属性を与え、全てを一つに。出来たです……!
次いで、全属性を融合させた膨大なマナをブラッドドラゴンへと放つ為、両手の平をそちらへと向けて構えました。すると、その両手の平の先に直径が10cm程の
「喰らえっ! 『破壊の神たる我が与えよう。我が権能を
極限まで集中していたボクは、自らが口にした呪文に気付きませんでした。
その際、自らの髪の色が漆黒へと変化をしていた事も。
そして……額に第三の目が開いていた事にも――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます