第19話 ソードの魔法の検証です!
十九
お昼を挟んで午後の授業。午前に引き続きの魔法の授業です。
ですが内容は午前中と同じで、フレイムボールとマジックシールドの魔法をひたすら練習するという物。……ボクは
「ふざけるニャ! ちゃんとフレイムボールを放つニャ、ネコーノ!」
「ミサト殿! 僕は炎属性の魔法はこれしか放てないのですぞ! 『キャットフレイム!』」
ニャアアアーーー!!
午後の授業開始早々の、ミサトちゃんとネコーノ君とのやり取り。
マジックシールドを教えられた通りに唱えたミサトちゃんに対して、ネコーノ君はクラス分け試験の時の炎の猫の魔法を唱えてます。
威力はフレイムボールと同等に抑えてるみたいですが、マイア先生の指示に従わないというのはアホです。
しかし、どうして爆発と同時に猫の顔が浮かび、そして猫の鳴き声も聞こえるのか。
ボクもこっそりと猫をイメージして
ともあれ、ボクも午前に引き続き
ちなみにですが、マイア先生は他の生徒の所を順番に巡って指導してます。
「では……。改めて属性付与の練習です……! 『マナよ。熱き炎となれ。鋭き刃となって剣を成せ!
無詠唱でも当然使えますが、わざわざ呪文を詠唱したのはまだ属性付与に慣れてないからです。ですが、今ので完全に感覚は掴めたので、次の属性からは無詠唱で魔法名だけで放つです。
「やっぱり術者自身は熱さを感じないですね……」
一本だけの炎の魔法剣を右手に持ち、炎の刀身を左手で触れてみたですが、物体としての硬さは感じましたが炎の熱は感じません。
「試しに人形を斬ってみるです」
人形とは、クラス分け試験の時に使った再生するマジックドールの事です。魔法の塔の入口とは反対の壁付近には20体のマジックドールが設置されてました。
ちなみにですが、マジックドールは魔法の塔と剣技の塔にそれぞれ20体ずつ設置されてるそうです。
その一体を炎の魔法剣で斬ってみました。
すると、スパッと切れた箇所が燃え上がり、10秒程で消化しました。跡を見ると、黒く炭化してるのが確認出来ました。
その事から、炎の魔法剣はしっかりと熱が有り、燃えている事がハッキリと分かります。
「次は一本に込めるマナの量を増やしてみるです!」
右手に持った炎の魔法剣に、更にマナを込めてみました。
すると、オレンジ色だった刀身の炎は次第に変色し始め、オレンジから赤、そして赤から紫を経て青に変わり、やがて白色の炎へと変わりました。
ですが、やはりボク自身は熱を感じません。
知識として、炎の色が変わると熱の温度が変わる事は知ってますが、自分でそれを感じられないと、どれだけの熱量なのかが分からないです。
「そんな時こそのマジックドールです! それ! ……おや!?」
先程と同様、マジックドールを袈裟懸けに斬ろうとしたですが、斬る直前に炎の熱でマジックドールが完全に炭化してしまったです……!
という事は、白色炎の魔法剣の刀身の温度は少なく見積っても1000度以上。もしかしたら、数千度に達してるかもしれないですね。
「こ、これはボク一人だけの時に使うです……」
今ボクは魔法の塔の壁際に一人で居るから良いですが、近くに誰かが居たら、確実にその人を焼き殺してしまうです。
それが盗賊……野盗などの悪人ならば構わないですが、仲間だとしたら目も当てられない程に悲惨な結果になるです……!
その後、風、土、水、氷、雷、光、闇と順に検証したですが、やはりそれぞれ特性があって面白かったですね。
風は無色透明な剣で、斬った瞬間に切り離した部位を吹き飛ばしました。
マナを込めて強化すると、竜巻の様な現象が起こり、切り離した部位が更に細切れになってました。どうやら竜巻の中は真空状態となり、
土属性はいくらマナを込めようが、土の魔法剣のままでした。
ですがマジックドールを斬ると振動していたので、もしやと思い床に剣先を軽く触れてみたら、ハッキリと床が揺れているのが分かりました。
その事から、マナを込めた土の魔法剣は地震を発生させる事が出来るみたいです。……みたいと言ったのは、思いっきり床を斬り付けて大地震が発生してしまったら大変だからです。
水属性は、大量の水がマジックドールの切断面から流れてましたね。やはり、マナの量で水量が変わる事が分かりましたが、それ以外は屋外じゃないと検証出来ないので、水の魔法剣はそんな所です。
雷、光、共に電撃の威力が増えたり、眩しくなったりと、在り来りな感じでした。闇もそうでしたね。まぁ、マジックドール相手の検証なので、実際の魔物などを相手にした場合は分からないですが。
しかし、氷の魔法剣は凄く面白いなと感じました。
「おぉ!? 綺麗に凍ったです! マナを増やすとどうなるですかね?」
通常の氷の魔法剣は、マジックドールの全身を完全に凍らせました。
その事から、マナを込める量を増やしたら絶対に溶けない氷像が出来ると思い、マナを込め始めました。
すると、氷で出来た刀身から白い
「ダイヤモンドダスト……ですか。綺麗ですが、これだけみたいですね。……少し、ガッカリです」
ボクの呟きでも分かる通り、空気中の水分も凍結して、キラキラと輝くダイヤモンドダストが発生しました。ですが、異変に気付いたのはその時です。
「しまったです! 早く解除しないとみんなが凍死してしまうです! …………おや?」
あまりの冷気にみんなが凍ってしまったと思ったボクは、咄嗟に氷の魔法剣を解除しようとしました。
しかし、改めてみんなを見てみると、凍ってはいません。生徒の一人に近付き肌に触れてみても、冷たくはなく、むしろ人肌の温もりさえも感じられました。
変だなと思い、その生徒が放ったフレイムボールを見ると、空中で炎の玉が静止してます。
もしやと思い氷の魔法剣を解除すると、炎の玉は何事も無かったかの様に再び動き出し、対する生徒のマジックシールドへと着弾しました。
「うわっ!? ユーリちゃん、いつからそこに居たの!? ビックリするし危ないから離れててよ!」
「ご、ごめんです!」
……怒られてしまったですが、これでハッキリと分かりました。
氷の行き着く先。いわゆる”絶対零度”ですが、それよりも低温……極低温になるとあらゆる物質は動きを止めると聞いた事を思い出しました。
つまり、ボクが膨大なマナを……とは言っても、膨大かどうかは分からないですが。……とにかくマナを込めると、氷の魔法剣から白い靄が発生し、その靄の範囲の物質は動きを止める……”時が凍る”という事みたいです。
「昔読んだ漫画のスタ〇ドの能力みたいです……!」
星の白金、ザ・世界! って叫びたくなったです♪
ともあれ、属性を付与した魔法剣の検証は終わりました。
「ユーリちゃ〜ん! 天才なユーリちゃんに〜もう一つ魔法を教えておくね〜!」
魔法剣の検証に満足していたら、マイア先生がタイミング良く戻って来て、更に魔法を教えてくれると言いました。
「魔法剣だけでもカッコ良くて満足してたのに、もう一つです!?」
「そうよ〜。剣だけでも充分かなって思ったけど〜、それだとどうしても遠くに居る敵に気付かれちゃうでしょ〜? だから〜、次に教える魔法は〜『
呪文は〜『貫け! マジックアロー!』って簡単な呪文〜。魔法剣をすぐに使えたユーリちゃんなら後はイメージだって分かるわよね〜」
さすが、マイア先生です。戦闘における戦略についてもフォローしてくれました。
魔法剣は確かに自分の意思で自由自在に操れるとは言え、大きさがやはり1m程も有れば不意打ちには適さないです。属性を与えたら尚更ですね。
炎の魔法剣ならば、メラメラと燃える音がしますし、風の魔法剣でもヒュオォォォという音がします。他の属性にしたって、何かしらの音がしたり眩しかったり、寒かったり。
とにかく、離れた敵に対しての不意打ちは苦手だと思うです。
ですが、マジックアロー……つまり、魔法の矢ならば離れた敵に対しても不意打ちが出来ます。攻撃速度も、当然剣よりも矢の方が圧倒的に速いです。
それを踏まえた上で例えれば、遠くに居る敵に魔法の矢で不意打ちして数を減らし、その間にある程度近付き、そこで魔法剣でとどめを刺す。
もっと言えば、魔法の矢で不意打ちして敵が混乱状態に陥れば、更に安全に魔法剣で敵を討つ事が出来ます。
戦略の幅が広がりますね!
「ありがとうです、マイア先生! さっそく試してみるです!」
「喜んで貰えて何よりよ〜♪ でも〜、今日の授業はもう終わりだから〜、また来週の魔法の授業の時ね〜」
「何ですと!?」
……いつの間にか、午後の授業も終わりを迎えてました。
しかし、仕方ないと言えば仕方ないですね。午前中の授業の時間は四時間程有りますが、午後の授業は二時間程です。
夕方までみっちり授業をしてしまうと、当然次の日の授業に影響が出てしまうです。疲れ、とか。
どのみち、今日は魔法剣を教えて貰って大満足なので、魔法の矢は来週のお楽しみに取っておく事にするです。
「それじゃ〜今日の授業はこれで終わりね〜! 明日の授業は〜、レイド先生の剣技の授業だから〜遅刻しないで剣技の塔に集まる様にね〜!」
『『『はいっ!!!』』』
そんなこんなで魔法の授業が終わり、ボク達Sクラスの生徒五人は、一緒に孤児院へと帰りました。
帰る途中ネコーノ君が相も変わらずミサトちゃんに「今日の僕の華麗な魔法をミサト殿に教えるですぞ! そして僕と付き合って欲しいですぞ!」などとアタックしてましたが、「うるさいニャ! 近くに寄るニャ! 鬱陶しいニャ!」と断られてました。……アホです。
とまぁ、騒がしくも楽しかった冒険者学園の初日が終わり、お風呂で疲れを癒してマレさんの美味しい夕飯を食べ、そのまま就寝の為に部屋に戻りました。
ちなみに、ミーナさんが相も変わらずボクの部屋に侵入しようとしてましたが、スラさんに頼んで追い返しました。
「ゆ、ユーリちゃん? 私が疲れの取れるマッサージをしてあげる!」
「結構です!」
「そ、そんな事言わずに! ハァハァ♡」
「スラさん! ミーナさんを優しくマッサージしてあげて、追い返して欲しいです! ……んぅ!」
……股間に張り付いているスラさんが移動する時に、変な声が出てしまったです。少し、気持ち良かったです。
「ヌヴァー。お任せ下さい」
「えっ!? 何これ!? ちっちゃいスライム? えっ!? あ……ひゃああああああ〜〜♪♡♪♡♪」
ミーナさんの体にまとわりついたスラさんは、それこそ色々とマッサージしてました。……色々と。
ミーナさんの尊厳の為に、これ以上ボクの口からは言えないですが、スラさんによるマッサージが終わった後のミーナさんは、とても幸せそうな顔で昇天してました。時おり、身体がビクンビクンと痙攣してましたが。
ともあれ、その後は安心して眠りに就きました。
☆☆☆
冒険者学園、剣技の塔。
「剣技の担当講師は、Sクラスの担任講師でもあるこの俺『レイド=クルーゼ』だ! よろしくな! それで今日の授業は知っての通り剣技の授業だ! 全員、木剣は受け取ったか? それでは素振り開始!」
初日の魔法に続き、二日目の授業は昨日のマイア先生が言っていた通りの剣技の授業でした。
講師は、先程の説明通りのボク達の担任であるレイドさんです。
そして剣技の授業内容はと言うと……今日一日、ずっと素振りです。素振りと言っても、剣道の素振りと同じ……いわゆる唐竹割りの型です。木剣を両手で持ち、それを頭上に振りかぶり、そのまま真っ直ぐ振り下ろすというアレです。
それは良いのですが、剣技の授業なのに素振りだけとは。しかも、一日中。……鬼ですか、レイドさん!?
ともあれ、基礎も大事です。きっとレイドさんも基礎体力作りの為に素振りを指示したですね。黙って従うです。
「レイド先生!」
「ん? 何だ、クリス?」
「剣技の授業なんだから素振りなんてしないで、剣技を教えてくれよ!」
孤児院の仲間でもあり、Sクラスのクラスメイト、そして年齢が十五歳のクリス君がレイドさんに意見しました。
年齢からすれば、確かにボク達よりも上ですし、体力も恐らく上です。つまり、基礎体力はボク達の誰よりも上ですね。
だからこその意見ですが、レイドさんはクリス君の言葉に笑って応えました。
「はっはっはっはっ! たかが素振りと侮ってる様だな、クリス! だがな、クリス? 素振りだって極めればこんな事も出来る様になるんだぞ?」
そう言って、壁際に設置してあるマジックドールに向かって木剣を正眼に構えるレイドさん。レイドさんの位置からマジックドールまでの距離は凡そ20m程離れてます。
その位置からマジックドールに向かって何をするですかね?
……などと思っていると……
「見てろよ? はぁぁぁぁぁっ!! 『飛斬!』」
その言葉と同時、レイドさんは目に見えない速度で木剣を唐竹割りで素振りしました。
「うおっ!? すっげぇぇぇぇぇ!!」
「こういう事だって出来る様になるんだぞ?」
驚くクリス君に、自慢気なレイドさん。
20mは離れているマジックドールは、レイドさんの素振りと同時に頭から縦に真っ二つに両断されてました……!
「という事で、みんなも頑張れば出来る様になるかもな! だから、素振りと言えど頑張れ!」
『『『はいっ!!!』』』
それからは一年生全員、真面目に、そしてワクワクした表情で素振りを始めました。
……ボクですか? ボクも当然ワクワクしてるです!
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