第32話 ケイの起こし方と『再構築』の使い方

 お互いの称号や技能の確認が終わった次の日、大木がそこらじゅうに生えている大樹林に朝の光が入ってきた。もう、何度も迎えるに朝にいつしかユイがケイを起こすことになっていた。


「……んん! ふぁ〜ぁ……ん、よく寝た……ケイは……寝てる」


 今日も始まる一日、まずはケイのぐっすりと寝る寝顔を堪能してから、少し頬っぺに軽いキスをする。

 だが、ケイはそんな事をされても当然、起きない。理由は、ケイは昨日もユイが寝静まってから、起こさないようにそっと移動させ、夜の訓練へと出かけているため、寝不足なのでそっとやちょっとじゃ起きないのだ。


「……ん、ケイ、朝だよ。起きて」

「んー。もうちょい……」


 ケイが寝相が悪いせいで、起こしていたユイにガバッと抱きしめるような体勢になった。ケイの顔は、ユイの肩に乗っかている状態になる。おかげでユイの頭は大混乱。頭に”?”が大量に浮かび、嬉しさと恥ずかしさで顔が真っ赤になり、体温が急激に上昇していく。


「……ぅん!? ケ、ケ、ケ、ケイ!?」


 横ですぅーすぅーと寝息が聞こえて、ようやく冷静になり、


「あ、寝てるだけなのか……。……むぅ。ケイ、抱きついてくるのは嬉しいけど、意識ある時じゃないと、や!」


 むにぃ〜と頬っぺと抓ってケイを起こす。それでも、ケイの意識は朦朧としているのか、半目状態までなったが、再び寝ようとしている。


「……むぅ……こうなったら起きないケイが悪い……よね?♡」


 真横にあるケイの顔を、無理やり掴んで離し、今度は強引に近づけて、自身の唇とケイの唇を重ねた。そして、徐々にねっとりと絡んでいくこと3秒。そこでようやくケイの意識が覚醒した。


「……ん?……ぅ……ん、んん!!??」


 目を覚ましたケイに待っていたのは息が詰まるほど、いや、口が呼吸出来ないほど激しいキス。ケイは知らぬ間にユイの舌の接近を許してしまっていたため、口の中がぐちゃぐちゃになっていた。

 一方、ユイはケイが逃げないように手を首に回しており、離さないようにしている。


「んんん!!! ぷはぁ……はぁ、はぁ、ユイ、離れろ……はぁ、はぁ」


 ユイの舌が入っていたおかげで、お互いの口から細い唾液のあとで繋がっていた。


「……ダメ。起きないケイが悪い♡」


 朝からトロンとした顔でユイがもう一度、迫ってきている。しかし、何度もやられっぱなしのケイではなかった。


「じゃあ、朝ごはんはユイだけ抜きな」


 あともう少しで、キスが成立する。そんな所でピクッとユイの止まった。そして、ユイの表情がだんだんと険しくなってきた。


「……それは、ダメ」

「だったら、この腕をどけろ」

「…………むぅ、仕方ない。でも、キスは起きなかったケイが悪い」

「……。それは確かにそうだな。仕方ない。俺が悪かった……だからどけなさい」


 首から腕が離されて、ようやく自由を取り戻した。そして、2人で焼いただけの朝食の用意をした。

 本日の朝食は、昨日、ケイが食べ残した物を2等分して、2人で食べたい。


「……そう言えば、ケイの『再構築』って何?」

「なんだろな? 試してみるか」


 ケイはずっと持っているホーンラビットの角を持って『再構築』を発動した。すると何をしても変形しなかった、折れなかったホーンラビットの角が1度溶け、次の瞬間、形が細い棒に変わった。


「「…………」」


 2人の目線は形状が変わったホーンラビットに向けられていた。それも当然であった。ユイの『空爪』でも、ケイが『怪力(中)』を使ってもビクとも変形しなかった角が、意図も容易く変形したのだ。


「……これは……」

「…………これが、『再構築』の力……」


 ユイは棒状になっているホーンラビットの角に見とれている。この時だけ、ケイは「見とれてよかった」と思ってしまった。なぜなら、ケイの表情は今、ニヤニヤとしているのだから。欲しいと思っていた力を手にしたのだから。


「……この力があればようやく追いつける」

「……? どうしたの?」

「あ、いや、なんでもない」

「???」


 少し首を傾げて、あまり気にせず支度の準備に取り掛かるユイに向かって、ケイは思った。


(これの力でお前と対等になるまで強くなってやる)──と。


「……ケイも手伝う!」

「ん? あぁ、そうだな」


 今日のケイはいつもより生き生きとして、いつもよりかっこよかったとユイは思うのだった。

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