第5話 朝ご飯

 しかし、人間は直ぐに忘れる。本来、人とはそういうめものだ。もちろん、例外はいくつかあるけど大抵は皆同じだ。

 蛍もその人なのだが、心に決めた『邪魔する者は殺す』という原則は周りの環境が、常に命を狙ったくる数多の魔物が、蛍の心をすり減らし壊していく中で繰り返され忘れるどころか染み込んでしまった。


「……今日で4日目か」


 失禁……いや、例の魔物に出会って逃げてから4日経った。さらに奥に進むと2mぐらいの大きな段差があり、そこの側面に小さな洞窟を発見した。洞窟といっても縦に1m、奥に2、3mぐらいの小さな穴だ。そこを拠点に蛍は活動している。

 ……と、言っても引きこもってばっかりで、外に出るのは薪を取りに行くことだけだった。


「今日も泥水だけか……腹が減ったな」


 持たされた食料は例の魔獣に置いてきてしまい何も持っていない。多少はゲームや漫画で火を起こした程度しか出来ていない。

 あたりが湿っているせいで、時間はかかる。おまけに泥水のせいで腹を降し、数時間に1度は藻掻き苦しんだリもしている。


「そろそろ何か食べないと……本気でやばいな」



 朝日が昇り始めたせいか周りが徐々に明るくなっていき、温度が上昇して行く。冷えた空気が一気に上昇するので葉っぱや花の花弁に水滴が溜まる。これが蛍のまともな食事。朝ご飯だ。


「……さて、殺るか」


 今日が初めて魔物を狩るので気合を入れる。少しぶらぶら歩くと1匹の角の生えた兎に出くわした。

 緊張のせいか手足が震えるがどうにか1歩ずつつ気配を隠して進む。近くに手頃な石があったので掴んで投げようとした。その時、兎が方向をクルッ変えた。そして、蛍が見つかった。


「うっ、うわぁぁぁあ!! よ、寄るな!」


 思わず叫んでしまった。見た目が気持ち悪かったのだ。口の周りには赤い血、ドリルのような角が生えているのは遠くから見ても分かった。

 が、実は前には枝状に分散しており、目は禍々しいまでの目が赤色で、何より恐ろしいのは、同族であろう他の兎を食べていたことだった。

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