第27話 プロポーズ??
公園から20分ほど歩いて、俺と望結は、高層マンションの入り口に到着していた。
「はぇ~凄い…」
望結は顔を上に向けて、目の前にそびえたつタワーマンションの高さに圧倒されている。
「こっち」
俺が望結に声を掛けると、恐る恐る後をついてきた。
エントランスからエレベーターホールに行く間も、望結はキョロキョロと辺りを見渡し、落ち着かない様子であった。
夜も更けて、エントランスにも人は俺たち以外居ない。だが、そのだだっ広いエンントランスにポツンと二人エレベーターを待っていると、どこか落ち着かない。
エレベーターに乗り込み、カードキーを通してから自分が住んでいる最上階のボタンをタップする。
「はぇぇ~」
あまりの生活感の違いからか、望結は終始俺の動きを観察して感心したような声を上げている。
そんなことをしていると、あっという間にエレベーターが速度を上げてみるみるうちに上昇していく。
1分も立たないうちにあっという間に最上階へとエレベーターが到着する。
ドアが開かれると、目の前には大きな玄関の扉とTENBAと書かれた表札が高々と掛かっている。
カードキーをかざして、玄関の扉を開けて、望結を家に招き入れた。
「お・・・お邪魔します・・・」
望結は恐縮しながら玄関をくぐって、家の中をキョロキョロと見渡す。
「そんなに賢らなくていいよ」
「いや・・・そんなこと言われても!!」
まあ無理ないわな。住んでいる俺だって、ようやく慣れてきたんだ。
初めて他人の家に入る時、誰もがおっかなびっくりになるだろう。しかも、それが彼氏の家で、こんな高層マンションの最上階というVIPルームのような場所じゃ余計にだ。
靴を脱いで、長ーい廊下をトコトコと進んで、リビングの扉を開けた。
「ただいま・・・」
「おかえりなさい、青谷くん。随分と遅かったではありませんか」
リビングで出迎えてくれたのは、スーツ姿で赤縁眼鏡を光らせた岩城さんだった。
「いや、ちょっとこれには訳がありまして…」
そう言いながら、望結を手招きしてリビングへと招く。
「お、お邪魔してます・・・」
苦笑しながら申し訳なさそうに半身だけリビングに入れて、望結が岩城さんに挨拶を交わす。
「ほう、なるほど…」
岩城さんは眼鏡をクィっと上げて、望結を一瞥する。まるで、望結を精査するようにくまなくチェックしている。
「あの…岩城さん?」
すると、岩城さんは視線を外したかと思うと、椅子に置いてあった荷物をまとめて、帰り支度を始めた。
「それでは、私はこの辺で失礼いたします。今日の分は明日行いますので、よろしくお願いします」
「は、はい・・・」
「それでは」
そう言って、岩城さんは俺と望結に一礼して、何も見なかったと言わんばかりの勢いで玄関の方へと歩いて行ってしまった。
そういえば広瀬さんが、女の子とデートするって言ったら、勉強免除になるとか言ってたっけか。あれって本当だったんだな…
「青谷くん、あの人って…」
状況が理解できてない望結は、自分が何かやってしまったのかと思ったのか、悲壮感に駆られていた。
「あぁ、あの人は岩城さんって言って、俺の専属の家庭教師だよ」
「家庭教師?」
「そうそう、スペシャルヒューマンには一人ずつ家庭教師が付くんだ。それで、勉強とか身の回りのお世話とか色々としてもらってるわけ。だから、別に気を悪くしたわけじゃないから気にしないで」
「そんだったんだ。にしても、専属の家庭教師なんて、凄いね!」
「色々とうるさいけどね~」
まあ、そんなことはさておき、リビングに望結を通したんだから、せっかくの景色を見せてあげないと。
「ほら、向こうに行って景色を見てごらん?」
俺が指さす方向へ望結が視線を向けると、パァっと表情を輝かせてトコトコと窓側へと向かっていく。
「うわぁぁ~凄い!!」
そこに広がっているのは、港町の綺麗な夜景だ。窓からは有名な観光名所やオフィス街、海にかかっている大きな橋、さらには港のコンテナの明かりが照らされて、幻想的な景色を映し出していた。
「青谷くんは、毎日こんなところに暮らして、この景色を眺めてるんだね…やっぱりすごいや」
「そんなことないって、俺だって今までごく普通の生活を送っていたのに、急に今年に入ってから驚きの連続だよ。自分でもついていけてない」
「あはは・・・そうなんだ」
望結は、クスクスと笑って見せたが、すぐに表情を戻して少し俯いた。
「ちょっと…青谷君が遠くに行っちゃったみたい…」
「ふっ、そんなことねぇよ」
俺は何気なく、望結の頭にポンっと手を置いた。
驚いたように望結がこちらを見つめてくる。
「俺は何処に行ったって、望結のそばにいるつもりだし、話すつもりも甚だない。だから、これからも一緒にこうやってついてきてくれるか?」
その言葉を聞いて、ふふっ・・・っと望結が笑みをこぼした。
「なんか、青谷君、今プロポーズしてるみたいだったね」
「なっ///」
そんなつもりはなかったのだが、顔がどんどんと熱くなってくるのが分かった。
「まあ、私も青谷君から離れる気はないけど」
そう言って、上目づかいで俺を覗き込んでくる。
俺は、そんな望結の視線に耐えられなくなり、手を放して踵を返す。
「とりあえず、俺飯くってないから食べていいか?あ、望結は食べた?」
俺が慌ててキッチンへと向かおうとすると、後ろからスタスタと望結が近づいてきて、そのまま俺の背中にギュッと抱き付いてきた。
「青谷くん、大好き!」
「…お、おう」
「えへへ…///」
可愛すぎかよ…
「お、俺も・・・」
「ん?なぁに?」
「!いや、なんでもねぇ///」
「えぇ~」
「荷物自分の部屋に置いてくる」
望結から離れて、逃げるように机に置いてあった鞄を部屋に置きに行く。
「青谷くんの部屋もみたい!」
そう言って、俺の許可なしに望結は俺の後を追ってついてきた。
まあ、この後上げる予定だったし、なんも問題はないんだけどね。
「何にもないけど…どうぞ」
「やったぁ~」
そう言って、ドアをガチャリを開けて部屋に入った時だった。ここで俺は最大の過ちを犯していたことに気が付くのであった。部屋の中にはとんでもない光景が広がっていた。
スヤスヤと寝息を立てて、グレーのタンクトップにショートパンツ姿で、綺麗な足を見せつけているかのように伸ばして、男の人なら誰もが目で追ってしまう、タンクトップ越しからっでも分かるその豊満な胸を持った
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