第八章 魔人同士の対決・その5
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「あれ? ヒロキ、どこへ行くんだろう?」
こちらはお隣の小学校。閻魔姫がスマホを見ながら首をひねっていた。太野裕樹と入力して、ヒロキくんがどこにいるのか確認していたらしい。
「隣の高校をでて、これ、走ってるのかな。高校は授業が多いって言ってたのに」
休憩中、不思議そうにスマホをいじる閻魔姫に、以前、からんだ小学生ズが近づいてきた。
「太野、学校じゃ、スマホは禁止なんだぞ」
「うるさいわね。またヒロキにポカってやられたいの?」
面倒そうに閻魔姫が言うと同時に、小学生ズが青い顔で後ずさった。自分より図体のでかい相手に喧嘩を売れる根性が、こんな小学生ズにあるはずもない。糞餓鬼どもが舌打ちして閻魔姫に背をむけた。その代わりに捨て台詞である。
「ふん。兄貴がいるからって、偉そうにしやがってよォ」
「あれは兄貴じゃなくて家来よ。私が魂を狩ったんだから。いまは旦那様にしてあげてもいいかなって思ってるけど」
「え?」
「なんだそりゃ。あのおっさん、ロリコンだったのか?」
「そんなんじゃないわよ。私も、結婚するのは一〇年待てって命令してるし。いいから行きなさいよ」
と、偉そうに命令してから、閻魔姫が何もない空間に目をやった。実はボタンが立っていたのだが、普通の人間には見えてないから、そのへんの事はわからない。そのボタンが閻魔姫の前でひざまずく。
「なんでしょうか?」
小声で質問してきた。
「ヒロキのこと、気になるから、見に行ってきて」
「いえ、それはできません」
「あら、どうして?」
「私がこの学校をでれば、ここで閻魔姫を守るものがいなくなります」
「いいから行きなさい。私の命令よ?」
「申し訳ありませんが、こればかりは、閻魔姫様の命令でも聞くわけにはまいりません」
と、このへんは、さすがに分別のつくボタンの返事だった。問題は分別のつかない閻魔姫である。
「そう。わかったわ。じゃ、今日、私、早退するから」
と言って立ちあがった。驚いたのはボタンだけではない。それを聞いていた周囲の級友である。
「え、太野さん、早退するって、それ、先生に言わないと」
「面倒だから明日にする。なんか言われたら適当に誤魔化しておいて」
糞餓鬼どもではなく、仲のいい女子の忠告も風と流し、閻魔姫が赤いランドセルを背負って教室をでて行った。
それで、どこへ行くのか? ヒロキくんを尾けるに決まっている。
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