第380話 新天地へ⑥ 第3の存在【ジャネット&ローザSide】
あけましておめでとうございます!!(遅)
本年もよろしくお願いいたします!!
地下古代迷宮で発生した白い光に包まれ、気がついたら謎の遺跡の中にいたジャネットとローザ。
「ここは……どこなんでしょうか」
「皆目見当もつかんのぅ」
要塞村にある地下古代迷宮でないことは確かだが、ここがどこでなんの遺跡であるのか、そういった情報を知れる手掛かりは見つかりそうになかった。
「ともかく、一旦外へ出るか」
「そうですね」
遺跡の出口を探して歩き回るふたり。
三十分ほどしたところで、ジャネットが何かを発見する。
「ロ、ローザさん! あそこから外へ出られそうです!」
「でかしたぞ、ジャネット」
外から光が差し込んでいる場所を発見したジャネット。ふたりはそこ目がけ、先ほどよりも足早に向かう――そこで見た物は、
「「なっ!?」」
外の光景を見たふたりは言葉を失う。
目の前に広がっていたのは――「空」だった。
最初は何かを見間違えたのかと思ったふたりだが、紛れもなく空だ。
「ど、どういうことなんですか?」
「もしや……ここは……」
混乱するジャネットだったが、ローザはこの場所に心当たりがあるらしい。
その時、ふたりの頭上から声がした。
「うえっ!? マジ!? ここにも人間がいるじゃん! あ、ひとりはドワーフ族か」
若い女性の声だった。
ふたりがそれに反応して見上げると、そこには確かに女性がいた。
年齢は二十代前半くらい。
緑色の長い髪に、
――が、その女性は明らかに宙に浮いている。
「えっ!? えぇっ!?」
空を飛ぶ人間という意味ならば、要塞村には冥鳥族がいる。
アシュリーやメイデンは見た目こそ普通の人間だが、その背中に大きな翼がある。ジャネットたちの頭上に浮遊する女性にも翼があった。なので、最初は冥鳥族か、或いはその他の鳥系獣人族なのだと思っていた。
しかし、違う。
宙に浮かぶ女性には、純白の翼の他にもうひとつ大きな特徴があった。
それは――頭の上に浮かぶリング。
「あ、あれって……」
「まさか……天使族がおるとはのぅ」
「!? や、やっぱり!?」
天使族。
神に仕える存在とされ、天界と呼ばれる世界に住むとされる種族。
「ではここは……天界か!?」
「残念だけど違いま~す」
ローザの推測は天使族に軽い調子で否定された。
「期待を裏切って悪いんだけどさ、ここは人間界よ。今は確かフリカ大陸北部を通過中だったはず」
「なるほど……つまり、ここは差し詰め天界と人間界のはざまというわけか」
「へぇ、勘の鋭いお嬢ちゃんね」
天使族の女性は、ローザとジャネットの三メートルほど前方に着地。
「あたしは天使リラエル。あなたたちは」
「わ、私はジャネットです」
「ワシはローザじゃ。ローザ・バンテンシュタイン」
「ふーん……ジャネットにローザね。――ローザ?」
天使リラエルはローザの名前を聞いて眉をひそめた。
「あんた……地上で枯れ泉の魔女って呼ばれている《大魔導士》ね」
「ほう、ワシの名前は天界にも知れ渡っておったか。悪い気分じゃないのぅ」
「まあね。過去に何人も《大魔導士》は出してきたけど、あんたの力はピカイチだったのをよく覚えているわ」
ジョブは神によって与えられるもの。
つまり、彼女たち天使をまとめている存在。
「そうか……神か……」
ローザは顎に手を添えて考え込む。
神には以前から尋ねたいことがあった。
三百年以上生きてきて、さまざまな疑問が浮かんでは消えた。
その中で、特に最近ローザが疑問に感じていたことが――トアのジョブである《要塞職人》について。
恐らく、世界で唯一であろう《要塞職人》のジョブを、なぜトアに与えたのか。
世界には希少度の高いジョブというものが存在している。
バルコガノフの《錬金術師》。
ヴィクトールの《勇者》。
それらが該当する。
もし、この先、目の前にいるリラエルを介して神なる存在に会えるならば――ローザふとそんなことを考えた。
「ていうか、本来、こんなところに人間がいること自体がおかしいのに……あなたたち、どうやって来たのよ」
「それはむしろこちらが聞きたいのじゃがな」
「わ、私たちは光に包まれた瞬間、ここにいたんです」
「光? それを浴びた場所は?」
「要塞村です」
「要塞村? 何それ?」
「そのままの意味じゃ。ディーフォルという要塞を村に改装して住んでおる」
「! ディーフォルって……神樹ヴェキラのあるところ……?」
「「!?」」
ローザとジャネットは驚きに目を丸くする。
まさか、天使リラエルの口から神樹ヴェキラの名が出てくるとは思ってもみなかったからだ。
どうやら、リラエルは神樹の秘密を知っているようだ。
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