第186話・ヤシャ王国での捜索、終わり

 ストライガーとの戦いから十日。

 ライトたちは、ヤシャ王国の冒険者ギルドで依頼を受けたりして小金を稼ぎつつ、大罪神器【傲慢】の捜索を行っていた。

 ギルドなら情報屋がいる。情報収集に特化した『ギフト』を持つギルド職員に依頼をして情報を集めてもらったり、町で聞き込みをしたりしたが、成果はなかった。

 ライトたちが受ける依頼は危険な依頼ばかりで、金だけが貯まっていく。

 手分けして情報収集をするのが、ライトたちの基本となりつつあった。


「今日は、俺とシンクで情報収集。リンとマリアとメリーは冒険者ギルドで依頼、そして情報屋の依頼確認だ」


 すっかりチーム分けに慣れたライトは、マリアの別荘で指示を出す。

 時間は早朝。ヤシャ王国の捜索も終わりが近い。


「わかった。依頼はどうする?」

「マリアに任せる。危険度の高いやつでも、楽なのでもいい。メリーもそれでいいか?」

「んー……マリアに任せる」

「わかりましたわ。では、魔獣退治でもしましょうか」


 魔獣退治の依頼は山ほどある。危険な魔獣はマリアたちからすれば危険ではない。

 ストライガーの一件以来、メリーがとんでもなく強いことはわかったが、最近はすっかり怠け者モードに戻ってしまった。


「じゃ、行くぞ」


 ライトたちは、今日を最後にヤシャ王国の捜索を打ち切る。

 最後に向かうのはファーレン王国と決めている。

 次に向かうのはワイファ王国。そこにもマリアの別荘があるので、そこを拠点に重点的に調査をする予定だ。

 大罪神器【傲慢】を見つけ、可能なら仲間にする。

 そして……その次はファーレン王国へ向かうのだ。


 旅はまだ続く。だが、終わりも近い。


 ◇◇◇◇◇◇


 ライトとシンクは、町をぶらついていた。

 シンクが団子を食べたがったので茶屋で休憩したり、薄皮に包んだあんこ餅をお土産に買ったりと、情報収集というか観光を楽しんでいた。


「みんなで食べる」

「そうだな……ま、いいか」


 にこにこしながら歩くシンクの隣で、ライトは苦笑した。

 シンクだけではない。リンやマリア、メリーからは、気を張りすぎてはいけないということを習ったライト。きっと一人だったら、精神的にも参ってただろう。

 ライトは、シンクに聞いてみた。


「シンク。この戦いが終わったらどうする?」

「え? 一緒にいるよ?」

「……あ、ああ。そうか」


 あまりにも自然に帰ってきた応えに、ライトは困惑した。

 一緒にいる。

 ライトは、女神やレイジ、リリカとの戦いで死ぬかも知れない。でも……それじゃ駄目だという気持ちもある。

 

「ライト、リン、マリア、メリー……ずっと一緒に暮らしたい」

「…………」


 そんな未来、考えた事も無かった。

 女神を滅ぼし、復讐を終わらせる。

 その後は、予定がない。死を覚悟していたから、何も考えていない。

 でも、考えるべきなのかもしれない。


「ライト、ボクたちと一緒……いや?」

「嫌じゃない。嫌じゃなきゃ、お前たちを取り戻すために戦ったりしないさ」

「……ん!」


 シンクは、にっこり笑った。

 その笑顔に癒やされるライトは、ついシンクの頭を撫でてしまった。


「……えへへ。気持ちいい」

「…………」


 守りたい。この笑顔。

 やはり、ライトは死ぬワケにはいかない。


 ◇◇◇◇◇◇


 夜。

 仕事から戻ったリンたちと食事を終え、シンクが買ったお土産をデザートにお茶を飲み、今後のことを話す。


「予定通り、明日出発しよう。ヤシャ王国に有力な情報はないみたいだしな」

「そうね。ワイファ王国なら何かあるかも……私とライト、マリアの三人だけだったし、今度は情報収集で行くからね……何か見つかるかも」

「そうですわね……なんだか懐かしいですわ」

「ボク、知らない」

「あたしもー」


 ワイファ王国は常夏の国。

 海沿いにマリアの別荘があり、三人で過ごしたのがずいぶん昔に感じる。

 あの頃は、ライトとマリアは険悪すぎた。


「とりあえず、今日は早く休むか……」

「ライト、お風呂一緒に入ろう」

「……リンと入れ」


 シンクの誘いを躱し、ライトはソファに横になる。

 リンはメリーとシンクを連れて風呂へ。マリアは本を開き、ライトの正面に座った。


「お前は?」

「……言わないとわからない?」

「…………」


 この日、ライトとマリアは朝方まで愛し合った。

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