冬
「冬が憎い」と呟いた僕を前に、君は「冬を愛する」と笑った。
それを聞いた僕は、失望するどころか、あまつさえ感心してしまった。
ずっと冬を嫌ってきた。寒くて気が沈むあの季節を、それでも受け入れる心なんて持てなかった。
何なら近所の秋ですら憂鬱に感じるほどだった。
しかし君は冬が好きだと笑う。
真っ白な世界で両手を広げて、走るように舞い踊る。
少し遠くから見ている僕は、君が転ばないか心配でならなかった。
それなら近くで支えればいい、って気づいたのはつい最近のこと。
寒くたって構わない。
君と暖かい家に帰るためなら、霜焼けの一つは安い代償だ。
車にもたれかかってコーヒーを啜っていたら雪玉が飛んできた。
べしゃり、と鈍い音が聞こえた。
想像していたより痛かったが、不思議と冷たさは感じない。
少しは僕も成長しているということだろう。
ずっと冬が続けばいい、なんて到底思えそうもないが、たまにはいいのかもしれない。
光の粒たちを眺める君を見て、少しだけそう思えた。
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