1話 プロローグ:英雄アスレィ伝説

 昔、あるところに旅の英雄、アスレィがいました。

 アスレィは訪れた村の問題事を、幾度となく解決してきました。


 ある日、アスレィは麦の豊かな村に立ち寄りました。

 その村は平和に見えましたが、ある問題を抱えていました。

 村人たちは、名の知れた英雄アスレィにその相談にやってきました。そして、村の問題をアスレィに語りました。


 村の近くの洞窟に、強大な竜が住み着いていました。

 その竜は不幸を司る特別な魔力を持っていました。竜はその魔力で村に寄る者を不幸に陥れ、いつしか呪われた村と言われるようになっていました。

 その噂のせいで村に寄る者はほとんどおらず、このままでは村は徐々に衰退する一方でした。

 なので、その竜を討伐してきてほしい。そう、村人たちはアスレィに願いました。


 その話を聞いたアスレィは、邪竜討伐の為に洞窟に向かいました。

 アスレィの戦いは長く続きました。日が暮れてもアスレィは帰ってこず、寝ずに待つ村人も少なくありませんでした。

 そして翌日、日が顔を出した頃。アスレィは村に帰ってきました。片手に邪竜討伐の証として、角を握りしめ。


 村人たちはアスレィと共に、洞窟へ向かいました。そして、その奥に静かに横たわる邪竜の骸を確認しました。


 その晩、盛大な宴が行われました。

 村自慢の酒を大いに振舞い、長き脅威からの解放を祝しました。

 宴は夜遅くまで続きました。村人たちが皆、寄い潰れて寝静まるまで。


 そして翌朝。

 村人たちが起きてきた時、そこにアスレィの姿はありませんでした。

 きっとその村での役目を終え、次の村へと向かったのでしょう。



   ・・・


 読み終えた本を閉じ、鞄にしまう。


 旅に出てから3回目の朝日、簡易キャンプの片付けにも流石に慣れてきた。

 手早く済ませ、荷物を背負い、愛用の片手剣を括りつけ。


 さて、行くか。

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