● 第18話 オレの『ギフト』がピーキー過ぎて、制御不能ですがナニか?

 それにしても、昨日はビックリしたよなぁ~……。

 あの『ブラックボックス』って言う単語を思い浮かべた途端、激流の様に情報が一気に頭の中に流れ込んで来た時の感じ。


 オレの好きな昔の映画を思い出しちゃったよ。もうずいぶん古い作品でさ。『記憶の運び屋』ジョニーって男の話で、自分の頭の中にチップ埋め込んで他人や、企業が持ってる技術データや記憶をダウンロードして目的地まで運ぶのがそのジョニーの仕事なんだ。ある時、彼は自分の頭の中に容量以上のデータを詰め込んでしまい、おまけにそのデータが欲しい敵に狙われながら逃げるっていう、ウィリアム・ギブスンて人の小説が原作のサイバー・パンク映画……タイトルは、主人公の名前の頭文字から『JM』と言ったっけ。キャストも主演キアヌ・リーヴス、共演がビートたけしで、ドルフ・ラングレンやアイス・Tなんかも出てて豪華だったから、公開当時話題になったのを憶えてる。


 昨日のオレには、正にその映画でジョニーがやってた事が起きたんだよねタブン……。まさか、アンナ事になるなんて思わないもんね、普通。

 驚いて当然だよね。しかもオレの場合は、あの映画みたいにデータ(情報)を運ぶんじゃなくて流れ込んできた情報を基に、その力を実際に使いこなさなきゃいけないわけなんだよな……。


 どーなるかわかんないけど、やってみるしかないなー……自信ないけどね。

 頭では理解していても、初めて行うソレを果たして成功させられるんだろうか? やっぱり、不安だなー。どうなるんだろーなぁ……。


 なんて事を、寝返りを繰り返しながら考え込んでいたら、控えめにドアがノックされた。

 「ユウよ、起きておるかの? 大丈夫か? 入るでの……」

 扉が開いて、ゼット爺さんと爺ちゃん二人が入って来た。

 「あ、おはよう。部屋に呼びに来るなんてどうしたの? 何かあったの?」

 「いや、そうではない。昼まで待ってみたが起きてこんのでな。大丈夫かとチト心配になっての……」

 「え? もう昼過ぎなの? 全然気が付かなかった。

 寝坊しちゃったみたいだ。ごめん」

 「謝る事などない。昨日のアレのせいで、まだ回復しておらんのだろう。

 慌てんでもよいから、しっかり休むとええ。元気が戻ったら次の段階に進めばよいのじゃ」

 「ありがとう。でも、大丈夫だよ多分。昨日はホントだいぶヘロヘロだったけどね。ゆっくり寝られたし、お腹も減ったからもう起きるよ」

 「大丈夫ならいいが、無理だけはするなよ。お前の力は、まだ未知数なんじゃからな」

 「うん、分かってるよ爺ちゃん。ありがとね」


 もう昼過ぎてるのか……やっぱり、すごく疲れてたんだなぁ。

 ムリないよね、アレじゃ。

 ダイニングに行くと、食事が用意されている途中だった。余計に、腹が減ってきた……。メニューは、中華風あんかけチャーハンとでも言えばいいのかな? この世界でどう呼ばれてるかは知らないけど、そんな感じの食事だった。

うん、美味しい! さすが爺ちゃん! 

 オレは、よっぽど腹が減っていたのか三杯オカワリをし、やっと落ち着いた。

 そして、いつものカフィールタイムである。至福の時じゃー。最高だね!


 「ユウよ、どうやら大丈夫の様じゃな。食事の前より顔色が良うなっておる。まぁ、あれだけ食べれば元気にもなるかの……。

 さて、それでどうする? 今日は、休みにするかの?」

 「いや。オレ、やっぱりこの後、もう少し休んだら試してみようと思う。

 知識として知っているのと、実際にやってみるのって全然別の事だから……。

 何事も、まずは始めてみないとどうなるか分からないし」

 「お主がやってみたいのならソレでええ。じゃが、くれぐれも無理はするでないぞ。何と言っても、昨日の今日じゃしな」

 「うん。わかったよ」




 この会話が交わされてから、ちょうど一時間が経った今、はっきり言ってオレは困惑していた。爺ちゃんとゼット爺さんも唖然としていた……。結果がコレじゃ致し方ないんだけどね。


 「これは、……タマゲたのぉ……どうしたもんかのぉ、エルネストよ?」

 「はぁ……。この力は非常にキケンと考えます。下手をすれば、国を救うどころかコノ世界ごと消してしまうかもしれません」

 「確かに、そうじゃな。まずは、この力を制御する所から始めねば、危ないの……」


 確かにオレは、始めてみなきゃどうなるかわかんないって言ったけど……一発でコレとはね……こりゃ、危険だなー。どうやったら能力の強弱を加減できるんだろーか? それをマスターしないと世界を救うどころじゃないぞ、この能力。


 前を見ると、。オレは、その山のずっと手前にあるちょっと大きめの岩を目標にして、『箱』のギフト能力を使い、まずはその岩を『箱』の中に入れ徐々に『箱』を小さくしていき、最終的にその岩を『箱』ごと消してしまう予定だった。予定は未定……ってよく言うけど、コレって未定どころの話じゃないよねぇ……。


 岩を『箱』に入れたつもりが、どうやら遥か後ろの山まで一緒に入れてしまったらしかった。そして、それに気付かないままユックリと『箱』を縮めるつもりが、一瞬にして後の山ごとその岩も消えてしまったのだった……。

 頭の中に描いたイメージ通りに能力を使ったつもりだったが、どうやらこの『箱』の能力は、その威力のデフォルト値がかなり高く、ピーキーなのだという事が、使ってみて初めて分かったのだ。


 そうだ。今更だがオレのギフト能力は『箱』だった。

 さっきも言った様に、自分がイメージして作った『箱』の中に物を入れて、その『箱』縮めれば『箱』の大きさに合わせて中の物も小さくなるといった様な使い方を基本に、実に色々と応用の効く、便利な能力だった。


 例えば『箱を結界の様に使い、外部からの攻撃や侵入を防ぐ』

 『箱の中身も自分の思い通りになるので、例えば中身を温泉のお湯にして家の中で風呂に入る』

 『形も大きさも好きなタイミングで自由に思った通りに変えられるので、橋や階段の様に使う』

 『形を変える応用として、例えば剣の様な形にして材質を変化させ武器として使用する』


 等々……、考え出したらキリがないぐらいの使い方が出来る能力なのだ。

 一つだけ付与されている条件があるとすれば、『箱』の能力は、使う者――つまり、オレの事ね――が見えている物に対してのみ有効である……と、言った所だろうか。まぁ、大した制約とは思えないけどね。


 それよりも難しいのは、今日のテスト運用で判明した、力加減ってやつだ。

 コレには苦労しそうだな……。いくら考えても上手い加減の方法が分からなかった。やはり、この能力を実際に使って慣れていくっていうのが、一番の近道なのかな……。


 コレは、あれだな……『言うは易し、行うは難し』ってヤツだ。

 上手く使いこなせるんだろーか? まぁ、使いこなせる様になるしかないんだけどね。よし、明日からコツコツやってみますか!

 こうして、特訓の日々が始まった。



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