初ラノベ主人公のオレが、『ギフト』で異世界救ってイイですか?

月光狼 @ MoonLightWolf

プロローグ

夢に呼ばれて……

● 第1話 同じ夢見過ぎて、飽きちゃったヨ!

 いつの頃からだろう …… この夢を繰り返し見る様になったのは。

少なくとも、高校二年になった時にはもう何回も見ていた気がする。


 何も無い真っ白な空間に、たった一人で立っている自分 …… 。

立っている …… という事は、少なくとも地面ないし床に類する物は存在している

らしい。でも、壁はおろか天井と思しき物は全く見て取る事が出来ない。

まるで、空間の全てが『白』という色に支配されている様にどこまでもただ白く

此処が広いのか狭いのかという空間認識すらも不可能な状態である。


 『白』以外の色として目に映るのは、紺色のジョガーパンツとグレーのTシャツという部屋着姿の自分 ……。

そして、ただ立ち尽くしている自分の周りにフワフワと浮かんでいる、様々な形をした正体不明の 【真っ黒】な物体達 ……。

ほぼ正面しか見る事ができないにも関わらず、ナゼか「周り」に【真っ黒】な物体

が浮遊している事――実際には見えていなのに、ソコにそれらが存在しているという事実――を認識している自分が居る。


 『真っ白』な空間に、ポツンと一人で立っている自分と、周りに浮かぶ謎の【真っ黒】な物体達 …… 。

随分とシュールな光景なので、見る様になった当初は正直怖いと思った記憶があ

る。しかし、慣れなのか性格による物なのかは分からないが、次第に好奇心の方

が勝る様になり夢が始まったら「あぁ、またか …… 。しょうがないなー」と思い

ながらも、自分なりの考察 …… と言う程の物ではないけれど、分析まがいの事を

するのを勝手に義務化した。


 だって、何で自分がこんな夢を何度も見るのか?

なぜ、夢の内容をこんなにリアルに覚えているのか?

この夢は一体ナニを意味しているのか? 等、とにかく知りたい事がテンコ盛り

だったからだ。

三年も四年もの間、三日に一回とか毎晩続けてとか全く同じ夢を見続けてたら、

誰だってそう考えるんじゃないかな? 

少なくとも自分はそうだったから、この夢を見る事自体に慣れてからは可能な限り、この夢に関する情報収集と分析及び考察(そこまで大袈裟なモンでもないか…… )を、する様になったんだ。


 夢のシチュエーションは前に書いた通りだが、『音』に関してはまだ触れてい

なかったので説明しておきたいと思う。てか、ココかなり重要! 

(テストには出ないけどね……)


 『音』は、 …… はじめは何も聴こえない。全くの無音空間に、ただ立っている

だけの自分と周りを漂う様に浮かんでいる様々な形の【真っ黒】な複数の物体。

その静寂が続く中、身動きの取れない自分は決まって次第にパニック状態になっていき、脂汗とも冷や汗ともつかない物がジットリと身体を湿らせる頃、大体いつもそのタイミングで、最初は音とも声とも判別できない何かが聴こえてくるんだ。この夢を見る様になった頃は、ただ本当に怖かったせいでソレが聴こえてきても『聴きたくない!』という気持ちから、一秒でも早く夢から覚める事だけを

考え全く聴こうとしなかったっけ……。


 でも慣れってヤツは面白い物で、今ではその音――実際には声だったのだが

――を全て覚えてしまい、今は暗唱できる程だ。そんなに長くもなかったしね。

夢の中で聴こえた声の内容は、



『選ばれし者よ、「ギフト」を使う時が迫っている。「ギフト」を使い、我らの

世界の悪を滅ぼせ。汝の「ギフト」こそが、我らの世界を救う唯一の光であると

心得よ……』


 という物だった。

ちなみにだが、声の主は女性の様でもあり男性の様でもあり男女の声がユニゾンで語り掛けている様にも聴こえた。そして、その声というかお告げ? が終わると空間その物とも言える色の白い光に体中が包まれ、強烈なLED照明の様な白さが眩しくて思わず目を閉じると夢は終わり、逆に目が覚める …… というのがこれまで見てきた夢のお決まりのパターンだった。


 「」と過去形になっているのは、昨夜の夢はいつもの様に終わらなかったからだ。もちろん、いつもの声が聞こえてきてその内容も途中までは全く同じだったが、昨夜は最後にこのフレーズが加わったんだ。



『時は満ちた……。心せよ! 汝は、間もなく我らの世界に呼ばれる事となろ

う。我らの世界の未来を、汝の「ギフト」に託す。我は、汝の力を信じる者なり……。』


 そしてその声が消えた後、自分の周りに浮かんでいた【真っ黒】な物体の全てが金色(こんじき)の輝きを放ちながら一瞬で体内に吸い込まれ、視界の全てを

金色の光が満たしたのだ。コレは予想外の展開だったから、本気でビビッたよ。

ビビッて夢から目覚めた時、夢の中と同様に全身がジットリ汗で濡れていた。


 そして、この時を境に以後その夢を見る事は無くなった……。







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