第3話 勧誘勧誘また勧誘
黒竜苔を手にして、夕方にはギルドに戻ってきた。
現地まで迷うこともなかったし、そこでもたいして探し回ることもなく目的のモノを見つけることができた。
黒竜苔の生えていたのは、崖みたいな所でもなく、マグマが湧き出しているような所でもなかった。
確かに火山性のガスが吹き出だしていたが、地形的な危険もなかったので、私にとっては野の花を摘みに行ったのと何ら変わりなかった。
依頼品を依頼受け付けカウンターのイザベラに渡した。
やはり非常に驚いた様子だった。
私の自己申告では信じられなかったようだが、もう疑いようはない。
達成の報酬をもらい、冒険者証も更新される。
冒険者クラスはFからEに上がった。
「……えらいこっちゃ!期待の超新星あらわるやでぇ!!」
イザベラは何か叫びながら慌てて事務所の方に走っていった。
……よく分からん。
他にどんな依頼があるか、チェックして帰るか。
冒険者でお金が稼げることが分かった。
次は継続的に私が受けられる依頼が出てくるものかを確かめなければいけない。
掲示板を見ると、火山性ガス噴出地帯での採取依頼がまだいくつかあった。
これを受けていけば、しばらくは食べていけそうだな。
依頼の掲示板がある場所には、たくさんの冒険者がスタンバっている。
受け付け人数制限ある新しい依頼が貼り出されたら、すぐに登録するためのようだ。
そこにいた若い男が私に声をかけていた。
「冒険者になった初日に、高難易度の依頼を一人で達成したんだって?すごいね」
「……はぁ」
「でも、一人だと何かとこれから大変だと思うよ。もし、よかったらうちのパーティに入らない?君みたいな高い能力を持ってる人だったら大歓迎なんだけど」
「……遠慮しておきます」
「おいおい、お前は!女の子の声のかけ方も知らねえのか」
ちょっとゴツイおっさんがやってきた。
「俺はダンっていうんだ。冒険者クラスはC。この男はEで弱っちいからこんなやつのパーティに入らない方がいいぞ!」
「……はあ」
「俺のメンバーもみんなCクラスだから、ここのギルドに出入りしている中ではかなり上位のパーティになる。仲間になったらいい勉強になると思うぞ。どうだ?」
どうでもいいけど顔もヒゲも濃いおっさんだな……と思っていたら、
「君たち!待ちたまえ」
また、別の男の声が響いた。
周囲がざわざわしている。
声の方を見ると、午前中に見かけた小太りの男が立っていた。
今は、謎のコスチュームや杖などは持っていない。
最初は黒いエプロンに、頭にはち巻をした格好だったが、今は貴族みたいな服装をしている。
「この子はうちのメンバーになって、黄色を担当をすることになっているんだから。さ、これから打ち合わせに行こうか」
「行かねーよ」
「……ええっ!!?」
ものすごく意外そうな顔で驚いてやがる。
いったい何なんだ、こいつは。
しかし、断っても断っても、他の連中が迫ってきた。
「だったら、うちのパーティに入らない?3食付きだよ」
「いいや、うちに入ってください!」
「いや、うちに!」
「うちに来てください!」
午前中とはまた違った圧力で逃げられない……。
商売人の連中はまだ新米冒険者全般がターゲットだった。
こいつらは私を仲間にしたいというピンポイントなターゲットなものでどうにも面倒くさい。
―――ダダダッ!
「みなさん!彼女を困らせてはいけません!!」
その時、一人の女性が駆けつけてきた。
さっきどこかに行っていたイザベラだ。
「上の者と相談した結果、キンブリーさんの臨時専任担当になりました!イザベッラです」
勢いよく走ってきたせいか自分の名前を言うのに巻き舌になっている。
「ギルドは有能な冒険者を全力でサポートさせていただきます!」
一回転してから両手を広げてビシッとポーズを決めた!
「これ以上、キンバリーさんに迷惑をかけるなら、これから彼女へのパーティへの勧誘は、ギルドの受け付けを通してもらうことにしますよ!彼女が承諾するかは別の話ですが」
「今はどこのパーティに入るつもりもないんですけど」
「聞きましたか?彼女は今はどこのパーティに入るつもりはないそうでっす!これにて解散!さあ、みなさんこんな所に固まってたら邪魔ですよ」
イザベラは冒険者たちの人ごみをかき分け、出口まで道を作ってくれた。
「ありがとう」
「いいんですよ、何か困ったことがあったら言ってくださいね」
「……分かった」
イザベラは私に向かってウインクした。
今日はギルドに来てからというもの
押し売りだの勧誘だのでうんざりだったけど
最後に親切な人と出会えたのはよかった。
私が外に出て扉を閉める間際、
イザベラは冒険者にこのように言い放っていた。
「というわけで、彼女とコンタクトがとりたければ、ギルドに手数料をお支払いいただきますので!」
全然親切心じゃねぇ!?
結局は商売か!
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