一部将太朗
あれからまた順調に勝ち、準決勝まで勝ち残る事が出来た。
それにしても
だが顔が整い過ぎているから女の子にはモテるんだよなぁ。現にファンクラブがあるくらいだし、一年では一枠しかない生徒会幹部だしな。
「次、
因みに他者推薦によって入る通常枠は二枠あって、その一人が雫玲だ。
玲以外のもう一人はジェシー・コリンズだったんだが、そのお役所的な生徒会のやり方とジェシーの奔放的な生き方が合わなかったのかすぐに辞めてしまった。
少し問題にはなったんだが、ジェシーの親、というか祖父が世界的に有名な特等召喚士なので事なきを得た。
だから今は生徒会が代わりの人間を探しているそうだ。
それにしても
的確な
俺が
それ以上に豊富なイメージ力。あれは銃か? 拳銃という緻密な造りをイメージ力で補うってのは相当な修練が必要なはずだ。流石幹部組ってところだな。
撃った瞬間に相手が昏睡状態に陥ったって事は麻酔銃?
実戦ならば実銃だろうけど、この選考会なら麻酔銃だよな、確かに。そしてそれを考える余裕も頭もあるってところが、この前まで中学生だったとは思えないな。
「それまでっ!」
準々決勝だっていうのに危なげなく倒したな。これで俺の準決勝の相手は
だけど相手に銃がある以上、俺のこの後の試合……ナイアを召喚しなくちゃいけないかもしれないな。
いや、けど出したら出したで翔に怒られそうな気がしないでもない。
どうしよう…………おや? 一部君が。
「勝つのは僕だ……!」
静かに、だけど強い声でぼそりと言った一部。
……こりゃ俺もちゃんと戦わないとダメだろうな。ナイアのあの言葉を尊重するためにも。
「次! 雫! そしてジェシー! 前へ!」
これは面白そうな対決だ。
純太が準決勝に駒を進めた今、玲とジェシーがその相手候補という事になる。
「始めぃっ!!」
審判の塚本講師も気合いが入っている。
中々見られそうにない試合だからな。可愛い教え子中の可愛い教え子同士の戦いだ。
興奮するのもわかる。特に男として。
「いっくよー! はい!」
召喚したのは人頭程の岩。って!? その後ろから更に同じサイズの岩が出て来たっ!?
ジェシーのヤツ、一年生の段階で二つの召喚が出来るとかとんでもないな!
やはり通常枠でも生徒会に選ばれる人間は違うな。
加速させた岩で玲の正面に出した岩を弾き壊し、散弾のようにしたのか。
始めからこれをやるとなると無数の石つぶてを召喚しなくてはいけない。
それだけの技術を持っているのはそれこそ生徒会幹部の人間たちだろう。
だからジェシーはこういった工夫で魔法のような攻撃を作り出したんだ。
玲はこれをどう防ぐ?
「えいっ!」
何と!?
腕で顔を防ぎながらこれをブロック。
「凄いな、アレ、
隣の純太が呟く。
そうだ、
魔法に近いものだが、原理自体は一緒なんだ。魔法士は魔法で防壁を作るが、召喚士はそれを召喚する。
順序が違うようなものだけど、その近い特性と士族間の仲の悪さから、名称は全く違ったはずだ。
それにしても玲も凄いな。急所は避けつつ、ほとんどダメージを負っていない。
「いいよ玲! ならこうよ!」
何か特殊な形状の武器を召喚したジェシー。
あれは木製の……剣?
刃の部分に黒い石みたいなのが無数に付いている。
何だったっけ? 武器の講義で習ったような気がするな。
「マカナだっけかアレ?」
「あー、そうそう。確かメキシコかどっかの武器だよな?」
「そういやジェシーはテキサス州出身だったから、メキシコの武器に親近感を持ったのかもな」
玲は
ジェシーのヤツ凄いな。玲を攻撃しつつ
「二本目のマカナ。これで二刀流だな」
「きゃっ……!」
呻くような悲鳴をあげた玲の
首元に置いたジェシーのマカナ。
「それまでっ!」
ライフバーがあったとしても、これ以上の攻撃は危険。塚本講師もそう判断したようだな。
ジェシーの召喚技術と玲を圧倒したあの体術は厄介だな。純太がどう戦うか見ものだ。
「うぅ……負けてしまいました……」
「上等上等。あのジェシーを前にあれだけ戦える人間は一年じゃ少ないよ」
純太はにかりと笑って玲に言った。
「頑張ったな、玲」
俺が玲に送った言葉はこれだけ。
しかし玲は鼻息をふんふんと鳴らして「次は負けませんっ」と力強く言った。負けん気は強いみたいだな。
さて、
やっぱりアレだよな。アレを使うしかないよなぁ……。
「準決勝!
周囲の喧噪がこれだけ間近で耳に入るというのも嫌なものだ。
小さな溜め息を吐き、肩を落としながら歩いていると、正面の生徒会席に座る全原会長の眼鏡が光ったように見えた。
恐ろしい視線だ。まるで全てを見透かすような圧力を感じる。
「風土ぉ! 頑張れよっ!」
「火水さーん! ファイトーッ!」
という声援も、
「きゃぁあああああああ!!
「レッツゴー
「
という黄色い声援と、ごつい声援で塗りつぶされてしまう。
同性からも人気があるんだな、
しかし、そんな声援も
「お前、最近調子にのってるみたいだが、そんなのが僕に通じると思ったら大間違いだぞ……」
「…………」
なるほど、
確かにそう見えてしまうかもしれない。
一年になりたての頃は生徒会幹部入りの
ふむ、可哀想な事をしたかもしれない。
「必ず潰してやる。覚悟しておけ」
「
塚本講師の注意。
この音量じゃ、おそらくここにいる人間にしか聞こえていないだろう。
塚本講師はそんな事言いふらさないだろうから、ファンを減らさないという面ではしっかりしているな。
注意によって黙りはしたものの、不遜な態度は変わりはしない。
相変わらず俺を見下すような目だ。童顔なのが非常に残念だ。
「準備はいいか?」
塚本講師が珍しくそんな事を聞いてきた。
あぁなるほど、
本当にいい講師だ。俺が他の講師に何を言われても、塚本講師だけは偏見しなかった。
全てにおいて中立。それだけ自分にも
「大丈夫です」
俺の返答に無言で頷いた塚本講師は、再び沈黙を場に作った。
そして、静かに目が開き、開始の発声に備える息を吸った。
瞬間――――、
「……っ! 始めぃっ!!」
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