第3話 椅子のない夜は

わたしの椅子に

誰かが座っていたから

夜の浜辺に座っている


冬の日本海が

風邪をひいたように

ぐずっているから


ハーモニカを吹いてやる

いつまでも吹いてやる


なぜなぜ泣くのか

浜辺に埋まる硝子片

その手に包めば鳴いている

海のさざ波閉じ込めて


涙のように散り光り


夜の浜辺を椅子にして

波をあやしてあやされて

迎えの船はあてもない

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