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「ただのアイスの棒のくせに、なんて硬さだよ!?」
「硬いだけではないぞ?」
タルサの言葉を受けて魔剣を見れば、その根元の水晶から虹色の輝きが失われていた。
「魔力切れ――だと!?」
「異世界が生まれる前に創り出されたアイスの棒は、高純度の魔力の結晶体じゃ」
俺の驚きに、タルサは改めて笑う。
「そんなアイスの棒を消そうとした魔剣の魔力など、一瞬で底をつくじゃろうなぁ?」
……やられた!
タルサは最初から俺が〝魔法を斬れる剣〟を持っていることを承知で、その対抗策としてアイスの棒を手に入れていたのだろう。
全てを知っているタルサは、俺の持つ力を知るだけでなく、最善の方法で対策してきたというわけだ。DDランクの俺なんかを相手にしているにも関わらず、タルサの対策は完璧だった。タルサの強さは、その力だけでなく、その頭の良さも含まれていやがった。
……魔力の尽きた魔剣では、タルサの魔法を斬ることはできない。
ただの剣になりさがった魔剣を、俺は鞘へと戻す。
「お主様よ、もう降参か?」
「降参したくなるぐらい、タルサは強いぜ」
「じゃろう?」
俺はうなずいて続ける。
「やっぱり、俺がタルサに正面から勝つことなんてできなかった。でも、それなら、背後から不意打ちで勝つだけだ」
「……なんじゃと?」
俺の意図が読めないのだろう。
眉を寄せるタルサの前で、俺はポケットに入れていたペンを握る。
俺はアリシアにもらった国籍登録書を取り出し、自分の名前を書きこんだ。
「お、お主様っ!?」
驚くタルサを尻目に、俺は自分の名の書かれた登録書を見せつける。
「これで、どうだ?」
そんな俺に、タルサが悔しそうに呻く。
「……お、お主様は、何をしておるのか分かっておるのか?」
「わかってるさ」
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