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「この文章は、わらわをシュウ様が呼び出した時に書いたものじゃ。この文章の〝俺のことが大好きな〟という一文をコロナ殿の力で〝解放〟してほしい」


 コロナは俺の方を見つめる。


「本当にこの一文ですか?」


「よろしく頼む」


 タルサと変わらぬ俺の答えに、コロナは眉を寄せた。


「なぜこの一文を消す必要があるのです? この一文を消したところで――」


「コロナ殿!」


 タルサが、コロナをにらんでいた。


「すでにシュウ様とは話を終えてある。どうか何も聞かず、妾の願いを聞き入れてくれぬか?」


「……何も聞かず、ですか。どちらにしろ、この生活を手放したくない私には拒否権などありはしません。わかりました」


 コロナはパソコンの画面に指を触れ、なぞっていく。


 そして、その手が離れた頃には、画面に映る文章が変化していた。

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