番外編 結歌の突撃インタビュー
私は桜子結歌。友達の家に遊びに行って、その帰り、商店街を抜けようとしてるとこ。
今日も商店街はにぎわってる。おつかい頼まれたらよく来る商店街。お店の人としゃべってるおばちゃんいっぱい。
(あれっ)
あの男の人は……
「こんにちはー」
「ん? あれ、結歌ちゃん? こんちゃ。こんなとこで会うなんてな!」
流都くんを見つけてしまいました。
「結歌ちゃんも買い物かい?」
「ううん、友達のとこから帰ってきたとこ」
「そうなんだ。俺は買い物」
袋には野菜がいくつか。
「もう終わったところだったんだけどさー……よかったらちょっとしゃべってかないかい?」
「うんー」
お誘いされたのでついていった。
公園にやってきた私たち。まだ遊んでる子がいる。友達はいないかなぁ。
「結歌ちゃんは普段お姉ちゃんとどういうふうに過ごしてるんだい?」
うーんとー
「手伝ってくれる。工作とか」
「工作? あー宿題?」
「うん。お父さんとお母さんも手伝ってくれるけど、お姉ちゃんがいちばん丁寧」
「へー、さすが雪乃だな」
流都くんは笑ってる。
「音楽のこと教えてくれる。テレビで音楽のことやってたら説明してくれる」
「音楽のこと? まぁ専門分野って感じだろうしな」
「親戚で集まったとき、たまに一緒に遊ぶ」
「アナログゲーム詳しいのは親戚と遊ぶからって聞いたことあったな」
あ、そういえば。
「流都くん」
「ん? なんだ?」
「昨日お姉ちゃん、変だった」
「昨日? き、昨日っ?」
「うん。私帰ってきてからお姉ちゃん、変だった」
あれ、座ってるだけなのになんで流都くんこけたの。
「ぐ、具体的にどう変だったのかな?」
「なんか、なんにもないとこでこけたり、ドア開けずにぶつかったり、夜ごはんで豆腐なかなかつかめなかったり、ごはんつかんだのに落としたり」
「ぶっ! 想像したら……くくっ。でもこれ雪乃に言ったら怒られそうだっ。ああでも言いたい……!」
すごく笑ってる流都くん。
「今朝も階段降りたと思ったら最後踏み外してこけてた」
「危ねぇ」
「だから、昨日私お出かけしてからなにかあったのかなって」
「ぅえ!? あ、あー、ははーっ……」
怪しい反応。
「教えてー」
「い、いやぁ~、教えるほどのことはー」
「いいから教えてー」
「ゆ、結歌ちゃんは別に知らなくてもいいようなー?」
「教えてくれないの……?」
「うっ。ゆ、結歌ちゃんそんな目で見ないでくれっ」
私仲間外れされちゃう?
「秘密にする。約束。大丈夫。お願い、教えてー」
「う、んーうぅ……妹に教えるって、果たしていいんだろうかー……」
「お願いお願いーっ」
流都くんの左手を持ってぶんぶんする。
「わああっ、わかったわかった、教えるから手を放せぃっ」
私は流都くんの手を放した。
「よろしくお願いします」
「わかったよ……でも本当にだれにも言っちゃだめだぞ?」
「うん」
「と、特に雪乃や結歌ちゃんの父さん母さんには絶対ばれないようにするんだぞ?」
「うんうん」
私は近づいてひそひそモード。流都くんは辺りを見回してる。見回し終わったのか、深呼吸してる。
「じゃあ、い、言うぞっ」
「はい」
流都くんも顔を近づけてきた。
「……実はさ。野々原と結歌ちゃんが出てった後、雪乃の部屋に移動したんだけど……」
また流都くんは辺りを確認してる。
「…………ち、ちゅー、しちゃったんだよ」
「ちゅー?」
流都くんはうなずいてる。
(ちゅーって……)
中・宙・注・虫……
「ちゅ、ちゅぅ~!?」
「しぃぃ~っ!」
私は口を押さえたっ。
「い、妹にこんなこと言うのもあれだけど……そうなんだ」
お、お姉ちゃんが、流都くんと……この目の前にいる人と……ちゅぅ……。
「ほ、本当にお姉ちゃんと?」
うなずいてる。
「本当に本当にお姉ちゃんと?」
またまたうなずいてる。
(お姉ちゃんが……お姉ちゃんそんなことする人に見えない……想像もできない……)
あのお口と……くっつけちゃった……の……?
「なんでそんなことしたの?」
「なんでって……好き、だから……?」
「お姉ちゃんのこと好きなの?」
「ああっ」
わあ、真剣な顔。
「お姉ちゃんの彼氏さんなの?」
「い、いや、それはまだ」
「彼氏さんじゃないのにちゅぅしたの?」
「う。そ、それはまぁ……でもっ。いつか……こ、告白は、しようと……思ってる」
わあわあ、彼氏さんになっちゃうの?
「お姉ちゃん、彼氏さんできちゃうの?」
「それは雪乃の返事次第だけど……あ、雪乃ってだれとも付き合ってないよな?」
「うん、聞いたことない。男の人も家に来ない」
「そうか」
お姉ちゃんがーお姉ちゃんがー。
「ゆ、結歌ちゃんから見てさ。俺……雪乃の、か、かか、彼氏になっても、いいと……思う?」
お姉ちゃんの彼氏さんが流都くん……。
「お姉ちゃんがいいのなら、いいと思います」
「そっか」
この人がお姉ちゃんの彼氏さん。
「結歌ちゃんのお許しももらったし……告白、してみようかな」
「ほんとにほんとに告白しちゃう?」
「あ、ああ……すごく緊張するし、断られたら嫌だけど、でもだれか他のやつに取られるのはもっと嫌だ。俺は雪乃と一緒にいたい」
うう、なんか今どきっとしたー。
「結婚するの?」
「ぶは! それはさすがに早すぎっ。で、でも、いいかもな、お嫁さんが雪乃って」
えっとつまりー。
「流都お兄ちゃんになるの?」
「だから早い早いっ」
「でもお付き合いしたら結婚するんでしょー?」
「必ずそういうわけじゃあ……もしかしたら雪乃が俺のこと嫌いになっちゃって別れるっなんて言われたら、俺どうしようもできないし……もちろんそんなことにならないように頑張るけどさっ。てかまだ告白すらしてないってばっ」
旦那様だー。
「お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」
「あ、こちらこそ、よろしくお願いします」
お互いに頭を下げました。
「お姉ちゃんのどんなとこ好きー?」
「そうだなー。優しいし、賢いし、常に相手のことを考えて立ち振る舞ってるのが尊敬できるし、か、かわいいし。結歌ちゃんから見てお姉ちゃん美人って思わない?」
「えー、よくわかんない」
お姉ちゃんは……お姉ちゃん?
「そかそか。一緒にいて楽しいから、もっと一緒にいたくなるんだ。お互い空気感が合うっていう感じかな。たくさん雪乃と思い出作れていけたらいいと思ってるよ」
「昔よく遊んでくれた」
バックギャモンと将棋とチェスのやり方教えてくれた。お父さんよりわかりやすかった。
「やっぱ家でもそうだったのか。今は結歌ちゃんは友達と遊んでるんだって?」
「うん」
「俺が言うことじゃないかもしれないけどさ。お姉ちゃんのこと、大切にしてあげてくれよ。雪乃みたいに他人のことを思いやれる人こそ、みんなから思いやってもらうべきだと思うんだ。だから俺も雪乃のことを大切にしていきたい。は、半分くらいは自分が雪乃と遊ぶの楽しいから誘ってるだけだけど」
流都くんが手を頭の後ろで組んだ。
「わかった」
「よしよし」
結婚しちゃうのかなぁ。
「結歌ちゃんは好きな男子とか……いるかい?」
「うーん。気になる人ならいるー」
「いるのか! どんなやつなんだ?」
「えっとね。優しくておもしろい。人笑わせるのが得意だけど思いやりもある。いつもみんなのこと考えてる。テストよく100点取ってる」
「そりゃすごいやつだな」
私も100点取ることはあるけど、もっと取ってると思う。
「私もいつか好きになるのかな?」
「もしかしたらな。俺は気になったのも好きになったのも雪乃だけだけどな」
「他の人好きにならなかったの?」
「ならなかったなー。雪乃のこと気になってからはずっと雪乃のことばっか考えてたから、他のやつのことを気にするひまもなかったって感じかな」
「ふぅーん」
お姉ちゃんそんなに好きって思われてたなんてー。
「そうだ、もし結歌ちゃんが好きな人できたら教えてくれよ。男のことで知りたいことあったら、俺相談に乗れるかもしれないぞ?」
相談……せっかくのお誘いだから、
「うん、わかった、言うー」
「うし」
流都くんとつながりができた。
「じゃ、そろそろ帰るか」
「うん」
私たちは立ち上がって、一緒に歩き出した。
流都くんの背中をちょっと見る。
女の子を好きになった男の子。
「流都くん」
「ん?」
「お姉ちゃんって、流都くんのこと、好きなの?」
「え!? あー、どうだろう。嫌いじゃないとは思うけどな。恋愛って意味で好きかどうかは……わからないなー」
「もし好きじゃなかったらー……?」
「……告白、失敗しちゃうかもなっ」
流都くんはそれでも笑ってた。
「失敗したら、どうするの?」
「どうするって……近づくのも嫌になるかも。だって俺だけ好きってことだし、雪乃も気遣うと思うし」
「そっかぁ」
「ま、そんなの考えてても仕方ないさ。たぶん雪乃なら、俺からの告白、受けてくれると信じるしか……なっ」
さっきとは違った優しい感じに笑ってた。
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